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PFIとは?事業プロセスからメリットとデメリットまで簡単解説

投稿日2021.3.11
最終更新日2021.03.11

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PFIとは、公共施設の計画や運営を民間に任せる公共事業の手法です。
PFIが推進されることで、国や地方公共団体の事業コストの削減、より質の高い公共サービスの提供などを実現することができます。

今回は

  • PFIとは
  • PFIのメリットとデメリット
  • PFI以外の公共事業における民間委託手法
  • PFIの事例

などについてわかりやすく解説していきます。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、PFIとは?

PFIとはPrivate Finance Initiative(プライベートファイナンスイニシアチブ)の頭文字を取った官民連携の公共事業の手法です。

ここでは

  • PFIの概要と目的
  • PPPとの違い
  • PFIの成り立ち

について見ていきましょう。

(1)PFIの概要と目的

PFIでは、民間の力を借りて公共事業を行います。
民間の資金力や経営能力を活用し、優れた公共サービスを提供することがPFIの目的です。

(2)PPPとの違い

PFIはPPP(官民連携)の枠組みの中にあります。

PPP・PFI
画像出典:PPPから見るPFIの位置付け 全国地域PFI協会

PFIは手法であり、PPPは概念であると理解しておくとわかりやすいでしょう。
PPPとPFIが混同してしまいそうな時は単語の意味を思い出してみてください。

  • PFI
    Private:民間
    Finance :財務
    Initiative:イニシアチブ(主導)
  • PPP
    Public:国、公営
    Private:民間
    Partnership:協力

PFIは“民間が財務等のイニシアチブを取る手法”であるのに対し、PPPは“国と民間の協力関係の中で実施される事業概念”となります。

PPPについては以下の関連記事で更に詳しく解説しています。

PPP(官民連携)とは?PPPの目的やPFIとの違いも簡単解説

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(3)PFIの成り立ち

PFIの成り立ちは、1990年代前半のイギリスまでさかのぼります。

サッチャー政権は英国病からの脱却を目指し、小さな政府への改革を実施しました。
具体的には国有企業と公共サービスの民営化を始めたのです。

ちなみに英国病とは、社会保障費用の増額や産業国有化による財政ひっ迫状態(過度の大きな政府)を指します。

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サッチャー政権の政策は、その後のメージャー政権に引き継がれ、PFIの概念が生まれました。
そして、我が国では1990年代後半の経済低迷により、PFIへの取り組みがスタートしました。

1999年にPFI法が施行し、PFI推進委員会やPFI事業の実施に関する基本方針などが整備されました。

2012年以降、インフラ(道路、水道、学校、病院など生活の基盤となるサービスのこと)の老朽化による管理費用が増加傾向にあり、1964年東京オリンピック開催時に建設された首都高の劣化も指摘されています。

日本総研の調査によると、2012年度に7兆円だったインフラの維持更新費は、2050年には20兆円に達するとされており、新しいインフラをつくるどころか、インフラの管理と修繕だけで予算がなくなってしまうという予想も立てられています。

PPP・PFI

画像出典:次世代の社会資本整備に向けたPFIの在り方 日本総研

こうした公共事業における財政面での負担が増えていることから、民間と協力するPFIを活用した取り組みが進められているのです。

参考:Ⅰ章 PFIの概要 泉南

参考:PFIとは 内閣府

インフラ老朽化については以下の関連記事で更に詳しくご紹介しています。

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2、PFIのメリットとデメリット

国と民間が連携して公共事業を行うPFIには、両者が手を組むことで生まれるメリットとデメリットがあります。

それぞれ解説していきましょう。

(1)メリット

PFIの最大のメリットは、民間発注による国の財政に優しい公共サービスの実現です。
なぜ民間に発注することで、国の財政に優しい公共事業を実現できるのでしょうか?

通常、公共事業に必要な費用は国の公的資金から支出されますが、PFIでは民間の金融機関からの借り入れを利用します。

この借り入れの主体は国ではなく、公共事業のために作られたSPC(Special Purpose Company )と呼ばれる民間の特別目的会社です。

図で整理していきましょう。
従来の公共事業は国が計画し、設計と建設を民間に外注、その後の運営と管理は国が行っていました。

従来の仕組み
画像出典:PFIとは 民間資金等活用事業推進機構

PFIでは金融機関からの借り入れ(資金調達)から建設、管理、運営までのすべてを民間が担います。

PFI
画像出典:PFIとは 民間資金等活用事業推進機構

PFI

画像出典:PFIとは 民間資金等活用事業推進機構

公共事業に必要な資金を民間事業者が借りることで、財政難である国または地方公共団体の負担を抑え、より効率的に公共事業を行うことができます。

また、公共の業務を民間に振り分けることで新しい事業機会も創出できるため、PFIは国と民間の両者にメリットのある手法といえるでしょう。

(2)デメリット

民間に公共事業を任せることで国の負担は軽くなりますが、国が民間の業務を把握しなければならないというデメリットもあります。

そのため、PFIでは「性能発注方式」という発注方法が取られています。
性能発注方式とは、事業に必要な材料などの仕様を元に発注を行うのではなく、事業を満足させる性能に対して発注を行う方式です。

つまり、公共事業をしっかり実現できるのであれば、手段や方法は問わないので、民間の技術力をより活かすことができ、コスト削減やサービスの質向上などが見込めます。

参考:性能発注方式 J-STAGE

ただ性能発注方式では、委託前の審査や手続きで時間がかかってしまうというデメリットもあります。

また、民間にとっても計画書の立案に膨大な時間がかかり、審査に通過できるほどの実績と能力を備えるのが難しいという課題もあります。

参考:Q2 PFI導入による効果 内閣府
PPP/PFI 推進における主体別の課題及び支援方策に関する検討業務 国土交通省

3、PFI以外の公共事業における民間委託手法

公共事業での民間活用方法はPFI以外にも存在することをご存知でしょうか?
これらの手法は民間に委託する業務範囲で名称が変わります。

  • PFI以外の代表的な手法
  • PFIと混同しやすい第3セクター方式

について解説していきます。

(1)PFI以外の代表的な手法

公共事業を民間に委託する手法には

  • 直営方式
  • 部分委託
  • 民設公営
  • 公設民営

などがあります。

民間委託
画像出典:民間の活力を活用した事業方式 内閣府

画像を参照すると上から順に民間に委託する範囲が拡大し、民営化してしまえば公共の関与はとても少なくなります。

主な手法についてご紹介します。

① 直営方式

直営方式とは、資金調達や運営は国が実施し、施設の設計と建設のみを民間に発注する手法です。

別名DB(Design Build)方式、公営公設とも呼ばれます。

国が提示する発注書に基づき、民間で事業の設計と建設が行われるため、民間委託の程度は低い手法です。

② 部分委託

部分委託とは、運営の一部を民間に委託する手法です。
別名DB+M(Design Build Maintenance)方式とも呼ばれます。

民間の役割は、施設整備の補修と機能の維持のみになります。

直営方式と同じく民間委託の度合いは低いです。

③ 民設公営

民設公営とは、運営は公共団体が行いますが、施設の設計から建設、整備までを民間に委託する方式です。

民設公営には

  • 民間が資金調達を担当し、施設完成後は国が施設を所有するBTO(Build Transfer Operate)方式
  • 民間が資金調達を担当し、施設運営期間中の所有権は民間に、期間終了後は国に所有権が移されるBOT(Build Operate Transfer)方式
  • 民間が資金調達を担当し、施設運営期間中と期間終了後のどちらの所有権も民間が持つBOO(Build Own Operate)方式

の3つの種類があります。

④ 公設民営

公設民営は、民間が施設運営を一括して行う手法です。

公設民営には

  • 国が資金調達を担当し、施設所有権は国が持つものの、施設運営のすべてを民間に委託するDB+O(Design Build+Operate)方式
  • 国が資金調達を担当し、民間が施設の設計と建設、施設運営のすべてを担うDBO(Design Build Operate)方式

の2つの種類があります。

(2)第3セクター方式について

PFIと混同しやすい、第3セクター方式について解説していきましょう。
第3セクター方式とは、国と民間の共同出資による事業法人が施設の設計、建設、運営を一括して行う方式です。

第3セクター方式
画像出典:民間の活力を活用した事業方式 内閣府

PFIの特別目的会社(SPC)と似ていますが、第3セクターでは金融機関の信用は行政(地方公共団体等)に依存し、損失があった場合は行政が補填します。

一方、SPCでは行政(地方公共団体等)に依存することはできず、担保は原則事業を通して生まれた事業収益のみです(通称 プロジェクトファイナンス)。

SPCでは事業収益だけで融資を返済していくため、金融機関からの審査と事業のモニタリングが第3セクター方式よりも厳しくなります。

参考:プロジェクト・ファイナンス 島根県
公共事業方式の種類及び概要 京田辺市

4、PFIの事例

国と民間が協力して公共事業を行うPFIですが、全国にはどのような事例があるのでしょうか?

鹿児島県と静岡県の2つの事例についてご紹介します。

(1)鹿児島県:桜ヶ丘子育て支援住宅整備PFI事業

鹿児島県鹿屋市(かのやし)では、子育て世代が暮らしやすい環境整備を目的に、ママカフェなどの民間施設の誘致と運営をPFI事業として実施しました。

このPFI事業の最大の特徴は、交付金や事業施設の収入を活用することで自治体の負担額を実質ゼロにまで削減できたことです。

PFI
画像出典:桜ヶ丘子育て支援住宅整備PFI事業 内閣府

まず、鹿屋市は「地域優良賃貸住宅制度」と「公的賃貸住宅家賃低廉化事業」を利用して、国から交付金と補助金を受け取りました。

その後、PFI事業のパートナーとなる民間事業者を選び、敷地内に放課後学童施設やママカフェを整備するなど、子育て世代が暮らしやすい環境を実現しました。

これらのPFI事業は地元企業の事業機会創出や企業育成にも繋がっています。

参考:桜ヶ丘子育て支援住宅整備PFI事業 内閣府

(2)静岡県:函南「道の駅・川の駅」PFI事業

静岡県函南町(かんなみちょう)では、都市再生整備計画事業を活用し、交付金を受け取りました。
具体的には、道の駅の計画と建設、運営を民間事業に委託するPFI事業が行われました。

このPFI事業の特徴は、道の駅の利用者からの収益を見込んで、低コストの事業計画を民間事業者が自治体に対して提案できたことです。

PFI事例
画像出典:函南「道の駅・川の駅」PFI事業 内閣府

実際に函南町は、都市再生整備計画事業の交付金を活用しつつ、設計から運営、維持管理にかかる費用の削減に成功しました。

初年は、目標の70万人を超えた121万人が来訪しました。防災拠点となる川の駅のオープンや道の駅アイドル「ミミ」のライブ開催など、さらなる集客が目指されています。

参考:函南「道の駅・川の駅」PFI事業 内閣府

まとめ

今回はPFIについて解説しました。

コロナ禍で遠出ができない日々が続き、最寄りの公園や図書館などの公共施設の重要さに気づいた方も多いのではないでしょうか?

自治体の立場で考えれば、国の交付金や補助金を上手に利用することがPFI事業における成功の鍵なのかもしれません。

官民連携の新しい公共事業の姿を模索していきたいですね。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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