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政治ドットコム経済グリーントランスフォーメーション(GX)とは?その社会的影響を解説

グリーントランスフォーメーション(GX)とは?その社会的影響を解説

投稿日2024.3.6
最終更新日2024.03.06

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グリーントランスフォーメーション(GX)は、企業が環境問題に対する取り組みを強化し、経済成長と地球環境の保護を両立させるための戦略です。この記事では、GXの基本理念、推進背景、政府による推進策、企業価値、国内外の企業事例、DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性、補助金情報、そしてその影響について解説します。

1、GXの基本理念:カーボンニュートラルと経済成長の調和

(1)カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、人間活動による二酸化炭素の排出量と自然界や人工的な手段による二酸化炭素の吸収量を等しくすることを目指す概念です。これは地球温暖化の主要な原因である二酸化炭素の排出を抑制し、気候変動を食い止めるための重要な戦略となります。

①カーボンニュートラルと地球温暖化の関連性

地球温暖化は、地球の平均気温が上昇する現象で、その主な原因は二酸化炭素などの温室効果ガスの排出です。これらのガスが大気中に増えると、地球から宇宙への熱の放出が阻害され、地球の気温が上昇します。この温暖化は、極地の氷が溶けて海面が上昇し、洪水や熱波などの極端な気候変動を引き起こすなど、地球の生態系に深刻な影響を及ぼします。

②カーボンニュートラルの実現方法

カーボンニュートラルを実現するための主な手段は二つあります。一つ目は、化石燃料の代わりに植物由来の燃料を利用することです。

植物は成長する過程で二酸化炭素を吸収し、それを燃料として利用すると、燃焼により二酸化炭素が放出されますが、これは元々植物が吸収したものであるため、新たに二酸化炭素が増えるわけではありません。

二つ目は、排出された二酸化炭素を森林保護や植林によって吸収することです。これらの手段により、二酸化炭素の排出と吸収のバランスを保つことが可能となります。

カーボンニュートラルについて詳しく知りたい方は下記記事もご覧ください。

2050年カーボンニュートラルとは?目標・取り組み事例を簡単解説

「カーボンニュートラル」とは、温室効果ガスの排出量と吸収量を同じにするという目標です。 そして「2050年カーボンニュートラル」とは、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするということです。 本記事では、以下についてわかりやすく解説します。 2050年カーボンニュートラルとは 2050年カーボンニュートラルを目指す理由 2050年カーボンニュートラ...

(1)脱炭素社会のビジョン

脱炭素社会は、地球温暖化の主要な原因である二酸化炭素の排出を削減し、最終的にはゼロにすることを目指す社会です。

このビジョンは、地球の平均気温上昇を抑制し、気候変動の影響を最小限に抑えるための重要な戦略となっています。

①脱炭素社会の必要性

地球温暖化は、地球の平均気温が上昇する現象であり、これは主に人間活動による温室効果ガスの排出が原因とされています。

特に二酸化炭素は、温室効果ガスの中でも最も大きな影響を持つとされています。脱炭素社会を目指す背景には、この地球温暖化の問題があります。

②脱炭素社会の実現に向けた取り組み

脱炭素社会を実現するためには、さまざまな取り組みが必要となります。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

  1. 危機意識の醸成: 地球温暖化に対する危機意識を高め、個々人が環境に配慮した行動を取るようにする。
  2. 食品ロスの削減: 食品の生産・消費・廃棄による二酸化炭素排出を削減する。
  3. 住居の断熱: 住宅の断熱性能を向上させ、冷暖房によるエネルギー消費を抑制する。
  4. テレワークの推進: 通勤による二酸化炭素排出を削減する。
  5. 脱炭素経営への支援: 企業が環境に配慮した経営を行うように支援する。
  6. 次世代自動車の普及: 二酸化炭素排出量の少ない次世代自動車の普及を促進する。

これらの取り組みは、地球温暖化の抑制だけでなく、持続可能な社会の実現にも寄与します。

脱炭素社会について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。

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2、GXの推進背景|環境問題と経済政策

(1)地球温暖化とその影響

地球温暖化は、温室効果ガスの排出により地球の平均気温が上昇し、気候変動が引き起こされる現象です。これにより、洪水や干ばつなどの自然災害が増加し、生態系や人間の生活に深刻な影響を及ぼしています。この問題を解決するためには、企業のCO2排出削減や再生可能エネルギーの導入など、具体的な対策が求められています。

(2)GXの位置づけ|重点投資分野としての意義

GX(グリーントランスフォーメーション)は、経済成長と環境保全の両立を目指す新たな経済政策の一環として位置づけられています。

①GXの重要性

GXは、経済成長と環境保全の両立を目指す新たな経済政策の一環として位置づけられています。具体的には、環境に配慮した製品やサービスの開発・普及を通じて、経済の成長を促進するとともに、地球環境の保全にも貢献することを目指しています。

②GXの投資分野

GXの推進には、さまざまな投資が必要となります。具体的には、以下のような分野が重点投資分野とされています。

  1. 再生可能エネルギー: 太陽光発電や風力発電など、再生可能なエネルギー源の開発・普及を進める。
  2. エネルギー効率の改善: エネルギーの使用効率を高める技術や製品の開発・普及を進める。
  3. 炭素吸収・貯蔵: 森林や湿地などの自然環境を保全・増加させることで、大気中の二酸化炭素を吸収・貯蔵する。
  4. 炭素回収・利用: 二酸化炭素の排出源から直接二酸化炭素を回収し、有用な製品の原料として利用する。

これらの投資は、地球温暖化の抑制だけでなく、新たな産業の創出や雇用の創出にも寄与します。

3、政府によるGX推進策

(1)GX実行会議の役割

GX実行会議は、日本の脱炭素社会への移行を推進するための重要な組織です。この会議は、政府が進める「GX実現に向けた基本方針」を策定し、その実現に向けた具体的な行動計画を立案します。

この会議の役割は、脱炭素社会の実現に向けた政策課題の整理と、その解決に向けた対応の方向性を示すことです。

具体的には、環境に配慮した製品やサービスの開発・普及を通じて、経済の成長を促進します。また、公開の場での議論を通じて、国民の意見を反映した政策を策定することも重要な役割となっています。

(2)GXリーグとその活動

GXリーグは、グリーントランスフォーメーション(GX)に取り組む企業群が一体となり、経済社会を変革するための議論や市場創造の場となっています。

具体的には、炭素の排出量削減への取り組みや、目標達成のための排出量取引などを行っています。現在、排出量の多い業種企業のほか、小売や金融機関など440社が賛同しています。

①GXリーグの基本構想

GXリーグは、2050年のあるべき社会・企業像の実現をリードする未来企業の集合体を目標としています。また、GXに自発的に取り組んでいる企業がCO2排出削減に貢献しつつ、外部から正当に評価され、成長できる社会(経済と環境や社会の好循環)を目指しています。

GXのロードマップ

出典:https://www.env.go.jp/council/content/i_05/000106044.pdf

②GXリーグへの参画条件

GXリーグに参画可能な者は以下の点、すべてに該当する必要があります。

  1. 法人格を有する又は外国会社に該当し、日本国内で事業を展開していること。※事業規模は問わない。
  2. 「GXリーグ参画企業に求める取組」に賛同し、必須項目の実施にコミットし、任意項目の実施についても努力すること。
  3. GXリーグ事務局が定める運営規程及び今後GXリーグで実施される取組に関して将来制定される規則のうち、自らが参加する取組に関する事項の遵守に承諾すること。
  4. 以下の項目には該当せず、申告に虚偽があった場合に、事務局が行う一切の措置について異議を申し立てないことに同意すること。
  5. 反社会的勢力又は反社会勢力でなくなった日から5年を超過していない
  6. 法人でその役員のうちに反社会的勢力等がある
  7. 反社会的勢力等がその事業活動を支配する

③GXリーグ参画企業に求める取組

GXリーグへ参画する企業に求められる取り組みは金融機関とそれ以外の属性によって分かれます。

①事業会社、その他
自らの排出削減

  • 2030年までの排出量削減目標と中間目標の策定。
  • 2050年までにカーボンニュートラルを達成するためのトランジション戦略の策定・公表。
  • GX-ETSにおける排出削減目標の進捗状況やカーボンクレジットの取引状況を公表することへのコミットメント。

サプライチェーンでの取組

  • サプライチェーン上流事業者への2050CNに向けた排出削減支援の実施または計画。
  • サプライチェーン下流の需要家・生活者への製品・サービスのCFP表示などを通じた付加価値の提供と意識醸成の実施または計画。

グリーン市場創出

  • 市民社会との気候変動に関する対話の実施または計画。
  • イノベーションや削減貢献を通じた製品・サービスの市場投入によるグリーン市場の拡大の実施または計画。
  • 自社のグリーン製品の調達・購入の実施または計画。

②金融機関
自らの排出削減

  • 2030年までの排出量削減目標と中間目標の策定。
  • 2050年までにカーボンニュートラルを達成するためのトランジション戦略の策定・公表。
  • GX-ETSにおける排出削減目標の進捗状況やカーボンクレジットの取引状況を公表することへのコミットメント。

サプライチェーンでの取組

  • 2050CNに取り組む事業者への投融資や引受けを通じた排出削減支援の実施または計画。
  • 投融資先や引受先事業者へのフォローアップやエンゲージメントを通じた理解の深化の実施または計画。

グリーン市場創出

  • 市民社会との気候変動に関する対話の実施または計画。
  • イノベーションや削減貢献を通じた製品・サービスの市場投入の推進などによるグリーン市場の拡大の実施または計画。
  • 自社のグリーン製品の調達・購入の実施または計画。

参照:https://gx-league.go.jp/howtojoin/

4、GX取り組みの企業価値

(1)公的資金の活用可能性

GXの推進は、公的資金の活用可能性を高めます。政府は、カーボンニュートラルを目指す企業に対して、補助金や税制優遇などの支援を提供しています。これにより、企業は新たなビジネスモデルや技術開発に必要な資金を確保しやすくなります。

(2)企業ブランドの強化

GXの取り組みは、企業ブランドを強化する効果もあります。消費者や投資家は、環境に配慮した企業を高く評価しており、その結果、企業の商品やサービスへの需要が増加する可能性があります。

(3)コスト効率の改善

再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上により、企業はエネルギーコストを削減することができます。また、CO2排出量の削減は、カーボンプライシングの導入によるコスト増を防ぐことにもつながります。

5、GX推進の国内企業事例

(1)トヨタ自動車

トヨタ自動車は、2050年までに全ての新車を電気自動車(EV)にする目標を掲げています。また、自社の製造工程でもCO2排出量を削減するための取り組みを行っており、その一環として太陽光発電や風力発電を活用した自社発電も進めています。

(2)パナソニック

パナソニックは、2030年までに自社の事業活動によるCO2排出量を現在の半分に削減する目標を設定しています。また、再生可能エネルギーの普及を推進するため、太陽光発電システムや蓄電システムの開発にも力を入れています。

(3)NTT

NTTは、2030年までに自社の電力消費の全てを再生可能エネルギーに切り替える目標を掲げています。また、データセンターの省エネ化にも取り組んでおり、エネルギー効率の高い設備を導入するなどしてCO2排出量の削減を進めています。

(4)ENEOS

ENEOSは、石油精製から再生可能エネルギー事業への転換を進めています。具体的には、太陽光発電や風力発電の開発を強化し、2050年までにCO2排出量を大幅に削減する目標を設定しています。

6、GX推進の海外企業事例

(1)Amazon

Amazonは、2040年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。具体的には、再生可能エネルギーの導入や電気自動車の配送車両への切り替えなど、多角的な取り組みを行っています。

(2)ユニリーバ

ユニリーバは、製品のライフサイクル全体にわたるCO2排出量を削減するための取り組みを行っています。また、サプライチェーン全体での再生可能エネルギーの利用を推進し、2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。

(3)Google

Googleは、2030年までに24時間365日、全てのデータセンターやオフィスで再生可能エネルギーを使用する目標を設定しています。また、AIを活用したエネルギー効率の向上など、技術開発によるCO2排出削減にも取り組んでいます。

(4)Microsoft

Microsoftは、2030年までにカーボンニュートラルを達成し、2050年までには創業以来のCO2排出量を全て削減する目標を掲げています。これを達成するために、再生可能エネルギーの導入やカーボンオフセットの購入など、多角的な取り組みを行っています。

7、GX実現のためのDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、企業がデジタル技術を活用してビジネスプロセスを変革することで、GXの実現にも大きな役割を果たします。例えば、AIやIoTを活用することでエネルギー効率を向上させ、CO2排出量を削減することが可能です。

8、GX推進のための補助金情報

(1)ものづくり補助金(グリーン枠)

ものづくり補助金のグリーン枠は、企業が温室効果ガス排出削減に取り組むための補助金制度です。この制度は、企業が環境に配慮した製品やサービスを開発し、生産プロセスを改善することを目指しています。具体的には、3~5年の事業計画期間内に、事業場単位での炭素生産性を年率平均1%以上増加する事業を対象としています。

①グリーン枠の補助金額と補助率

グリーン枠の補助金額は、申請類型と従業員規模により異なります。例えば、「エントリー」類型の場合、5人以下の企業は最大750万円、6人~20人の企業は最大1,000万円、21人以上の企業は最大1,250万円が補助されます。補助率は2/3以内となっています。

②グリーン枠の申請要件

準備

  1. 電子申請のためのGビズIDプライムアカウントの準備(未取得の場合)
  2. 「ものづくり補助金」の基本要件の確認と事業計画の策定準備

基本要件(すべて満たす必要あり)

  1. 給与支給総額の増加:+1.5%以上/年
  2. 事業場内最低賃金の増加:地域別最低賃金+30円以上
  3. 付加価値額の増加:+3%以上/年

グリーン枠の要件(基本要件に加えて)

  1. 温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発または炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供の改善
  2. 3~5年の事業計画期間内に、事業場単位または会社全体での炭素生産性を年率平均1%以上増加する計画

グリーン枠(エントリー類型)の要件(基本要件とグリーン枠要件に加えて)

  1. エネルギーの種類別に使用量を毎月整理しているか、補助対象事業者または事業所のCO2の年間排出量を把握している
  2. 事業所の電気や燃料の使用量を用途別に把握している
  3. 見積書の取得:
  4. 採択後の交付申請手続きに際して、発注先の選定のために見積書の取得が必要。準備段階で見積書を取得することが推奨される。

参照:https://www.jfc.go.jp/n/finance/keiei/support-plus/detail/materials.html?id=192

(2)事業再構築補助金(グリーン成長枠)

事業再構築補助金の「グリーン成長枠」は、新型コロナウイルスの影響による売上減少などの影響を受けている中堅・中小企業を支援するための制度です。この制度は、新規事業展開や業態の変更などを通じて、事業の再構築を目指す企業を対象としています。

①グリーン成長枠の特徴

グリーン成長枠は、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、グリーン分野での事業再構築を目指す事業者を対象に、条件を満たした場合、最大で1億5千万円の補助金が受けられる新しい類型です。特に注目すべき点は、「売上高10%減少要件」が科せられていないことです。これにより、創業間もない事業者でも申請が可能となります。

②グリーン成長枠の対象となる事業者

グリーン成長枠の対象となる事業者は、「グリーン成長戦略「実行計画」14分野」に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、2年以上の研究開発・技術開発または従業員の一定割合以上に対する人材育成をあわせて行う事業者です。

③グリーン成長枠の補助金額・補助率・補助対象経費

グリーン成長枠の補助金

以下の表は、グリーン成長枠の補助金額、補助率、補助対象経費を示しています。

この表から、中小企業と中堅企業の補助金額や補助率、補助対象経費に違いがあることがわかります。中小企業は補助率が高く、補助金額も1億円までとなっています。

一方、中堅企業は補助率が低いものの、補助金額が最大1.5億円までとなっており、より大規模な事業に対する支援が可能です。また、補助対象経費については、中小企業も中堅企業も同じ項目が対象となっています。

参照:https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/cases/green_seityo_soteijirei.pdf

まとめ

GXは、企業が環境問題に対する取り組みを強化し、経済成長と地球環境の保護を両立させるための戦略です。これにより、企業は社会的な課題解決と経済的な成長を同時に達成することが可能となります。

また、GXの推進は、企業ブランドの強化や公的資金の活用可能性の向上、コスト効率の改善など、企業価値の向上にも寄与します。さらに、政府は、GXを推進する企業を支援するための様々な制度や補助金を提供しています。

しかし、GXの実現には、企業の積極的な取り組みだけでなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展も不可欠です。デジタル技術の活用により、エネルギー効率の向上やCO2排出量の削減が可能となり、これがGXの推進に大きく寄与します。

以上のように、GXは企業にとって多大な機会を提供しますが、その一方で、新たなビジネスモデルの開発や技術開発、組織の変革など、様々な課題も伴います。しかし、これらの課題を乗り越え、GXを推進することで、企業は持続可能な社会の実現に貢献し、同時に新たな成長の機会を掴むことができるでしょう。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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