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政治ドットコム選挙公職選挙法とは?法律の規制や違反した際の罰則についてわかりやすく解説

公職選挙法とは?法律の規制や違反した際の罰則についてわかりやすく解説

投稿日2023.1.5
最終更新日2023.01.05

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政治家を選ぶ日本のすべての選挙の方法は、公職選挙法に書かれています。

「選挙はこう行いなさい」「選挙ではこういう行為は許されません」といったことが書かれてある公職選挙法は選挙におけるルールブックのようなものです。

選挙に勝利すると大きな権力を得ることができるので、立候補者には「悪い誘惑」がつきまとう可能性があります。そして選挙に出る人(立候補者)や当選した人(政治家)が悪い誘惑に負けると、社会に大きな損失を与えます。

そのため選挙のルールが必要になります。
そこで本記事にて公職選挙法についてご紹介いたします。

比例代表制について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。

比例代表制とは?小選挙区制との違いや議席配分の仕組みついて簡単解説

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1、公職選挙法の概要


日本の選挙には、

  • 国会議員(衆議院議員と参議院議員)を選ぶ国政選挙
  • 地方議員(都道府県議会議員と市区町村議会議員)と首長(知事と市区町村長)を選ぶ地方選挙

があり、そのすべてが公職選挙法の規定に則って行われます。

この法律では政治家を「公職」と呼んでいます(第3条)。

(1)17の章で構成

公職選挙法は、「総則」「選挙権と被選挙権」「区域」「選挙人名簿」「選挙期日」「投票」「開票」など17の章で構成されています。

主な内容は次章の2にて解説するので、ここでは、この法律がいかに「強い規定」なのかをご紹介します。

(2)重い罰則が規定されている

公職選挙法第222条(多数人買収及び多数人利害誘導罪)は、次のことを禁止しています。

  • 財産上の利益を図る目的で、立候補者のために多数の選挙人や選挙運動者に対し、金銭や物品を渡したり、渡す約束をしたりすること
  • 立候補者を当選させるために、もしくは落選させるために、会社などを誘導すること

このような行為をすると、「5年以下の懲役または禁錮」が科されます。候補者本人がこの犯罪に手を染めるとさらに罰が重くなり、6年以下の懲役または禁錮が科されます。

この第222条には、懲役刑か禁固刑のみの記載であり、罰金刑については言及されていません。つまり、公職選挙法をつくった人たち(立法者)は、「罰金では許されない」と考えたわけです。

ですが同法には、罰金刑を科した条文もあります。しかしその額も軽いものではありません。第223条(公職の候補者及び当選人に対する買収及び利害誘導罪)や第225条(選挙の自由妨害罪)で定められた罰金額は100万円以下となっています。

2、公職選挙法で定められていること

公職選挙法の主な内容についてみていきます。

(1)法の目的と適用範囲(第1、2条)

公職選挙法の目的は、

  • 選挙制度の確立
  • 選挙が選挙人(有権者)の自由な意思で公明・適切に行われるようにすること
  • 民主政治を健全に発達させること

の3点です。

この法律の適用範囲は、国政選挙と地方選挙です。つまりすべての選挙に適用されます。

(2)選挙権について(第9条)

選挙権とは、公職を選挙で選ぶ権利です。選挙権があると、投票が可能になります。この選挙権は満18歳以上の日本国民に選挙権が与えられます。18年目の誕生日の前日の午前0時からが「満18歳」です。

国政選挙は、満18歳と日本国民という条件だけで選挙権を得ることができますが、地方選挙ではもう1つの条件があり、次のとおりです。

  • 知事と都道府県議会議員の選挙に投票できる条件(選挙権を得る条件)
  • 満18歳以上、日本国民
  • 引き続き3カ月以上、その都道府県内の同一の市区町村に住所がある

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  • 市区町村長と市区町村議会議員の選挙に投票できる条件(選挙権を得る条件)
  • 満18歳以上、日本国民
  • 引き続き3カ月以上、その市区町村に住所がある

(3)被選挙権について(第10条)

被選挙権とは、公職になる資格を得る権利のことです。選挙権があると、選挙に立候補することができます。被選挙権を得る条件は、日本国民であることと年齢だけです。各種公職の被選挙権の年齢は次のとおりです。

  • 衆議院議員:25歳以上
  • 参議院議員:30歳以上
  • 都道府県知事:30歳以上
  • 都道府県議会議員:25歳以上(その都道府県議会議員の選挙権を持っていること)
  • 市区町村長:25歳以上
  • 市区町村議会議員:25歳以上(その市区町村議会議員の選挙権を持っていること)

都道府県議会議員と市区町村議会議員の被選挙権を得るには、「選挙権を持っていること」も必要になります。つまり、その都道府県や市区町村に3カ月以上住んでいなければなりません。

都道府県議会議員と市区町村議会議員は地域の事項を扱う政治家なので、「地元主義」が貫かれています。

(4)議員定数(第4条)

衆議院議員の定数は465人で、そのうち289人を小選挙区選で選び、残りの176人を比例代表選で選びます。

参議院議員の定数は248人で、そのうち100人を比例代表選で選び、148人を選挙区選で選びます。

都道府県議会議員と市区町村議会議員の定数は一律に決めることはできないので、別途、地方自治法で定めることにしています。

(5)選挙権や被選挙権を喪失する場合(第11条)

選挙権も被選挙権も、次の場合、その権利を失うことになります。

  • 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで
  • 禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまで(ただし、刑の執行猶予中の者は権利を失わない)
  • 公職にある間に犯した収賄罪により刑に処せられ、実刑期間経過後5年間(被選挙権は10年間)を経過しない者、または刑の執行猶予中の者
  • 選挙に関する犯罪で禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行猶予中
  • 公職選挙法等に定める選挙に関する犯罪により、選挙権、被選挙権が停止されている
  • 政治資金規正法に定める犯罪により選挙権、被選挙権が停止されている

これらの内容を単純な言葉で表現すると「悪人には選挙の権利を与えない」となるでしょう。ただ選挙権も被選挙権も重要な権利なので、裁判で有罪判決を受けても、原則、執行猶予がつけば権利は奪われません。

しかし例外的に、公職が収賄罪で有罪になったり、選挙に関する犯罪で有罪になったりすれば、執行猶予中でも権利を喪失します。

公職選挙法は、公職にある者の犯罪や、選挙がらみの犯罪を厳しくみているわけです。

(6)選挙の方法(第31~196条など)

公職選挙法は、選挙の方法について細かく定めています。具体的に見ていきましょう。

①選挙の期日

衆議院議員選挙は、任期が終わる日の前30日以内に行なわれます。衆議院が解散したときは、解散の日から40日以内に選挙を行ないます。

参議院議員選挙も、任期が終わる日の前30日以内に行なわれます。参議院には解散はありません。

「前30日以内」ルールは、地方選挙も同じです。

②投票

選挙は投票で行ない、投票は各選挙で1人1票が与えられます。ただし、衆議院議員選挙と参議院議員選挙では、比例と(小)選挙区ごとに1票ずつ与えられます。

投票時間は原則、午前7時から午後8時までです。

(7)特別選挙について

上記で紹介した選挙以外に、例外的な3種類の「特別選挙」があります。

  • 再選挙:選挙を行っても、必要な数の当選人が決まらなかったときなどに行ないます
  • 補欠選挙:選挙の当選人が議員になってから死亡したり退職したりして、繰上げ当選でも議員が足りないときなどに行ないます
  • 増員選挙:議員の任期中に議員定数を増やしたときなどに行ないます

 

(8)選挙運動の費用

選挙ではかつて、多額のお金が動いていました。そこで公職選挙法では、選挙の種類ごとに選挙運動で使う費用の上限額を定めています。

<選挙運動に関する支出金額の上限>

  • 衆議院(小選挙区):名簿登録者数×15円に1910万円を加えた金額
  • 参議院(選挙区):
  • 定数2人の場合:名簿登録者数÷定数×13円に2370万円を加えた金額
  • 定数4人以上:名簿登録者数÷定数×20円に2370万円を加えた金額
  • 参議院(比例代表):5200万円
  • 都道府県知事:名簿登録者数×7円に2420万円を加えた金額
  • 都道府県議会議員:名簿登録者数÷定数×83円に390万円を加えた金額
  • 指定都市の議会議員:名簿登録者数÷定数×149円に370万円を加えた金額
  • 指定都市の長:名簿登録者数×7円に1450万円を加えた金額
  • 指定都市以外の市議会議員:名簿登録者数÷定数×501円に220万円を加えた金額
  • 指定都市以外の市長:名簿登録者数×81円に310万円を加えた金額
  • 町村の議会議員:名簿登録者数÷定数×1120円に90万円を加えた金額
  • 町村長:名簿登録者数×110円に130万円を加えた金額

支出がこの額を超えると、選挙運動の出納責任者が罰せられます。そして出納責任者の刑が確定すれば、当選した候補者にも連座制が適用されて当選が無効になります。

ただ上記の支出額には「供託金」「選挙運動用の自動車の経費」「国や地方自治体に支払う税や手数料」「選挙期日後の残務整理の費用」は含まれません。

供託金とは、立候補するときに法務局に預けるお金のことで、選挙で一定の得票数を獲得できなかったり、途中で立候補を取りやめたりすると没収されます。一定の得票数を獲得できると、落選しても供託金は返却されます。

3、インターネット選挙運動について

ネット選挙
以前はインターネットを使った選挙運動は禁止されていましたが、2013年に公職選挙法が改正され一部が可能になりました。選挙運動とは、選挙の公示・告示の日から選挙期日の前日までに行う「候補者の当選を目的とした行為」のことです。ネット選挙運動の解禁で、次の行為が可能になりました。

  • ウェブサイトを使った選挙運動。ホームページ、ブログ、SNS、動画共有サービス、動画中継サイトはOKですが、電子メールは例外扱いとなっています。
  • 電子メールを使った選挙運動は、候補者と政党には許されています。それ以外の一般有権者は、電子メールを使った選挙運動は禁止されたままです。LINEは電子メールではないと認定されているので、一般有権者も選挙運動に使うことができます。
  • ネットを使った選挙期日後のあいさつは行なうことができます。
  • 政党は、有料のネット広告を掲載することができます。しかし政党以外は、有料ネット広告は禁止されたままです。

ネット選挙とは?解禁されてからの影響や禁止されていること簡単解説

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4、公職選挙法に違反するケース

公職選挙法は、「してはいけないこと」をたくさん定めています。それらの「してはいけないこと」をすると、政治家に適さない人物でも簡単に当選できてしまうからです。

冒頭で、公職選挙法第222条(多数人買収及び多数人利害誘導罪)を紹介しました。買収と利害誘導は、選挙犯罪のなかで最も罪が重いもののひとつです。

特定の候補者を当選させる目的で、または、落選させる目的で、お金を渡すことなどが買収です。

特定の候補者を当選させる目的で、または、落選させる目的で、「昇格させる」と約束することなどが利害誘導です。

公職選挙法はその他に、次の行為を禁じています。

  • 戸別訪問(第138条):候補者などが投票依頼の目的で家などを訪問すること
  • 飲食物などの提供(第139条):候補者などが有権者などに飲食物を提供すること、また、有権者などが候補者などに飲食物を提供すること
  • あいさつ状を出す(第147条の2):候補者などが選挙区内の人などに年賀状などを出すこと
  • 有料広告(第152条):候補者などがあいさつの目的で有料広告を出すこと
  • 寄付(第199条の2):候補者などが選挙区内の人などに寄付をすること

5、過去の違反事例


公職選挙法違反や選挙絡みの汚職事件についてご紹介します。

例えば、大阪府警は2019年6月、堺市長選に立候補して落選した元堺市議(当時45歳)の関係者2人を、公職選挙法違反(事前運動、法定外文書頒布)の疑いで書類送検しました。

捜査関係者は、2人は、元堺市議への支援を呼びかけるビラを、告示前に約1万人に郵送したとみています。書類送検された2人のうち1人は、実行を認めています。

【参考】産経新聞

また、警視庁は2002年2月、東京都多摩市の市長(当時44歳)を、収賄罪で逮捕し、翌3月に事前収賄罪で再逮捕しました。この市長は、市長選への立候補の決意表明をしたあと、設備会社の社長から、市長に当選したら水道施設工事の指名業者に選定してほしいと持ちかけられ、その謝礼として現金1000万円を受け取りました。この市長はさらに、一般産業廃棄物の収集運搬処理会社の社長からも、現金600万円を受け取りました。

公職選挙法に関するQ&A

Q1.公職選挙法とは?

公職選挙法は選挙におけるルールブックのようなものです。

Q2.公職とは何を指す?

公職選挙法でいう、公職とは政治家のことです。

Q3.公職選挙法に違反するとどんな罰則がある?

公職選挙法第222条(多数人買収及び多数人利害誘導罪)に違反すると、「5年以下の懲役または禁錮」が科されます。

まとめ

例えば国の予算は100兆円を超えます。東京都の予算も7兆円超という規模になります。選挙で選ばれる政治家(公職)は、こうした巨大なお金を日常的に扱います。
もちろんその財源は税金であり、私達の税金を取り扱う政治家を選ぶための仕組みは公職選挙法により守られています。

 

 

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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