総理大臣選挙とは、正式名称を内閣総理大臣指名選挙といい、国のトップである総理大臣を決める選挙のことです。
総理大臣選挙は国会議員の中で行われるため、一般の国民は参加できません。
しかし、国会議員は一般の国民によって選ばれるため、間接的に国民が総理大臣を選んでいるといえるかもしれません(間接選挙)。
今回は
- 総理大臣選挙の概要
- 総理大臣に選ばれるまでの流れ
- 総理大臣選挙と自民党総裁選の違い
についてご紹介します。
本記事がお役に立てば幸いです。
比例代表制について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
比例代表制とは?小選挙区制との違いや議席配分の仕組みついて簡単解説
1、総理大臣選挙とは
総理大臣選挙とは、国会にて国会議員の中から総理大臣を指名する選挙のことを指します。
総理大臣選挙は
- 内閣が総辞職する(内閣を構成するメンバー全員が職を辞すること)
- 総理大臣が欠ける(死亡や失格など)
などのことが起きた場合に、行う必要があります。
総理大臣選挙のルールは日本国憲法に、以下のように定められています。
<日本国憲法>
第67条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する
第6条 天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する
引用:日本国憲法
ここには「総理大臣選挙」という文言はありませんが「国会の議決(決定のこと)」がそれに当たります。
国会議員の中から選出され、天皇に任命されることで総理大臣となるのです。
天皇は自由に総理大臣を任命することはできず、国会の指名した人しか任命できません。
参考:首相官邸 内閣制度
2、そもそも総理大臣とは
総理大臣とは、内閣のトップです。
内閣とは、総理大臣とその他の国務大臣で構成される、日本の行政の最高機関になります。
内閣のトップである総理大臣は、日本の政治を牽引するリーダーのような存在といえるかもしれません。
総理大臣は以下のようなことを行います。
- 国務大臣(その他の大臣のこと)を任免する
- 内閣を代表して議案を国会に提出する
- 国務と外交の結果について国会に報告する
- 国の行政機関を指揮監督する
総理大臣や内閣の仕事についてより詳しく知りたい方は以下の関連記事もあわせてご覧下さい。
総理大臣になるには?4つのプロセスを簡単解説
内閣とは?内閣の構成及び業務内容について簡単解説
3、総理大臣に選ばれるまでの流れ
総理大臣になるには主に以下の3つの過程を経なければいけません。
- 国会議員として選ばれる
- 政党の中で総理大臣候補に選ばれる
- 内閣総理大臣指名選挙で選ばれる
それぞれについて見ていきましょう。
(1)国会議員として選ばれる
上記の憲法の条文にも書かれてある通り、総理大臣になるには国会議員にならなければなりません。
国会議員になるには、衆院選もしくは参院選で当選する必要があります。
国会議員であれば総理大臣になる権利はありますが、日本国憲法下で総理大臣になった人物は全員、衆議院議員です。
(2)政党の中で総理大臣候補に選ばれる
総理大臣選挙の候補者となるためには、政党の中で総理大臣候補に選ばれなければなりません。
政党とは同じ意見や志を持った政治家のグループであり、政治活動を行っています。
基本的に、政党内のトップや有力者が候補として選ばれる傾向にあります。
(3)内閣総理大臣指名選挙で選ばれる
総理大臣選挙(内閣総理大臣指名選挙)は、衆議院と参議院のそれぞれで記名投票が行なわれます。
そして各院で、過半数の票を得た1人が指名者となるのです。
該当する議員がいなければ、上位2人による決選投票が行われ、その院の指名者が決まります。
両院の指名者が同じ人であれば、その議員が「内閣総理大臣の指名を受けた者」になるのです。
各院で異なる人物が指名された場合は、両議院協議会が開かれます。
両院協議会とは議決が一致しない際に議案について話し合いを行い、合意を目指すための会議です。
両院協議会では
- 各院の意見が一致する
- 出席協議委員の3分の2以上が特定の議員を指名する
などによって「内閣総理大臣の指名を受けた者」が決定します。
両院協議会でも決まらなかった場合は、衆議院にて指名された人物が「内閣総理大臣の指名を受けた者」となるのです。
また、衆議院が指名してから10日経っても参議院が指名していなければ、衆議院が選んだ議員が「内閣総理大臣の指名を受けた者」になります。
これを衆議院の優越と言います。
衆議院の優越とは、国会においてより民意を反映していると考えられている衆議院に、参議院よりも強い権限が認められていることです。
衆議院の優越について詳しく知りたい方は以下の関連記事もあわせてご覧下さい。
衆議院の優越とは?参議院よりも意思が反映されやすい理由などを解説
参考:首相官邸 内閣制度
4、総理大臣選挙と自民党総裁選の違い
総理大臣選挙と自民党総裁選は混同されることがあります。
自民党総裁選で選ばれた人が、総理大臣選挙でも選ばれ、総理大臣になることが多い傾向にあるからです。
しかしこの2つの選挙は、全く別の選挙であり、以下のような違いがあります。
- 自民党総裁選:自民党という政党のトップを決める選挙。総裁公選規程と総裁公選実施細則によって制度が定められている
- 総理大臣選挙:内閣のトップである総理大臣を決める選挙。憲法によって制度が定められている。
自民党は、最も多くの国会議員が所属することが多い政党なので、自民党総裁選で選ばれた自民党総裁が、総理大臣にも選ばれる傾向にあるのです。
2020年9月には総裁選が行われ、菅義偉(2020年10月時点)が選出されました。
参考:自民党
5、首相公選制について
首相公選制とは、首相を国民が選挙によって直接選ぶ制度のことを指します。
日本における現行の制度では、総理大臣は国会議員の中から国会の議決によって指名されます。
これに対して「首相公選制に変更した方がよいのではないか」という議論があるのです。
実際に首相官邸でも「首相公選制を考える懇談会」という議論の場が開かれたことがあります。
参考:首相公選制を考える懇談会
総理大臣選挙に関するQ&A
Q1.総理大臣選挙とは?
総理大臣選挙とは、国会にて国会議員の中から総理大臣を指名する選挙のことを指します。
Q2.総理大臣選挙はどんなときに行われる?
総理大臣選挙は以下の場合に行われます。
- 内閣が総辞職する(内閣を構成するメンバー全員が職を辞すること)
- 総理大臣が欠ける(死亡や失格など)
Q3.総理大臣になるには?
総理大臣になるには主に以下の3つの過程を経なければいけません。
- 国会議員として選ばれる
- 政党の中で総理大臣候補に選ばれる
- 内閣総理大臣指名選挙で選ばれる
まとめ
総理大臣は国会議員たちが選び、その国会議員は国民が選びます。
そのため「総理大臣は間接的に国民が選んでいる」と考えることができるかもしれません。
国会議員を決める選挙で1票を投じる時には、「総理大臣を選ぶ1票でもあるのだ」と意識してみてはいかがでしょうか。