知事選挙とは、都道府県の首長である知事を決めるための選挙のことです。
今回の記事では
- 知事選挙の仕組み
- 都道府県知事の概要
- 知事選挙の実例
などについて、2020年の「千葉知事選挙」に触れながらご紹介します。
本記事がお役に立てば幸いです。
比例代表制について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
比例代表制とは?小選挙区制との違いや議席配分の仕組みついて簡単解説
1、知事選挙とは
知事選挙とは、その都道府県の首長である知事を決める選挙です。
知事選挙が行われるタイミングは、
- 任期満了
- 住民の直接請求(リコール)による解職
- 信任決議による失職
- 死亡
- 退職
- 被選挙権の喪失による失職
などが起きた場合に行われます。
選挙中のルールについては、
「この法律は、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長の選挙について、適用する。」(第2条)
引用:公職選挙法
(1)選挙の原則
知事選挙について、日本国憲法では以下のように定められています。
「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」(第93条第2項)
引用:日本国憲法
この条文には「知事選挙」というフレーズは出てきませんが、「地方公共団体の長」に各都道府県の知事が当たります。
国会議員が指名をする「内閣総理大臣指名選挙」と違い、知事選挙では住民が直接、都道府県知事を選ぶよう定めています。
「住民に身近な地方自治は、より住民の声を反映すべきである」という観点から、地域行政では広い範囲・過程で、住民が参加できるのです。
参考:地方自治法について
(2)投票方法
知事選挙の選挙権は、以下の条件を満たす人に与えられます。
- 18歳以上の日本国民
- 3ヵ月以上その都道府県内の同一市区町村に住所がある
また3ヵ月以上住んだ後、同じ都道府県内の他の市区町村に引っ越した場合も含まれます。
知事選挙があれば、上記の条件に当てはまる人のもとに「投票所入場券」が送られます。
投票所入場券を持っていけば、その他の身分証明書を持っていく必要は原則ありません。
また、「どうしても投票当日には予定がある」という場合は
- 期日前投票
- 不在者投票
などの制度を利用しましょう。
選挙人名簿に登録されていれば、手続きを行うことで、事前投票が可能です。
参考:選挙権と被選挙権 総務省
2、都道府県知事とは
都道府県知事とは、知事選挙で選ばれた各都道府県の首長であり、都道府県の行政におけるリーダーのような存在です。
特別な職種で、地方公務員でありながら、地方公務員法が適用されません。
明治時代では、天皇の勅命によって任命されており、1947年から現在のような県民による直接選挙で選ばれるようになりました。
都道府県知事出馬の要件は、「日本国民で満30歳以上」のみです。ただ特定の罪などを犯してしまうと、被選挙権を失う場合があります。
(1)都道府県知事の特徴的な権限
都道府県知事の特徴的な権限は
- 議会の解散権
- 再議請求権(拒否権)
- 予算の調整および提案権
- 規則制定権
- 人事決定権
の5つになります。
それぞれ簡単に説明していきましょう。
①議会の解散権
議会の解散権とは、議会が不信任決議をした場合、通知を受けた日から10日以内に議会を解散できるというものです。
ちなみに、議会を解散しない場合は、不信任決議から10日後に失職します。
②再議権(拒否権)
再議権(拒否権)とは、議会との意見調整方法として、
- 議会で可決済みの条例、予算で意見が分かれた場合
- 違反がある場合
に、都道府県知事が再審議および議決を要求できることです。
再議権(拒否権)には
- 一般的再議請求権
- 特別的再議請求権
の2つがあります。
一般的再議請求権とは、条例の制定・改廃・予算に関連する議会の議決に対して、異議がある時に、任意的に行使できる権利です。
都道府県知事は、議決に関する送付を受けた日から10日以内に、理由をつけて再審議を行うことができます。
ただし、議会は出席議員の2/3以上の同意で再可決すれば、その条例や予算は確定します。
特別的再議請求権とは、法的義務を負う権利です。
議会の議決や選挙が、
- その権限を越えた場合
- 法令会議規則に違反すると認められる場合
は、都道府県知事は理由をつけて、特別的再議請求権を行使し、再議または再選挙を行わなければなりません。
③予算の調整および提案権
都道府県知事には、予算案の提出や調整をする権利があります。
一方、議会には予算の増額修正権は認められていますが、都道府県知事の予算案提出権限を侵すような修正はできません。
④規則制定権
規則制定権とは、法令に反しない限り、その権限に属する事務に関した「規則」を制定できることです。
都道府県知事による規則の制定に対して、法令や条例による許可は必要としません。
また、違反した人に対して「5万円以下の過料」の罰則を設けることも可能です。
⑤人事決定権
人事決定権とは、行政委員会職員などを除いて、知事部局職員の
- 任命
- 移動
- 昇進
などの人事を自由に決定できることです。
知事部局とは、知事のもとに置かれる地方行政に関わる組織です。
全体的な計画や予算を作成する企画財政部、税金や統計情報、職員を管理する総務局があります。
参考:地方自治法
(2)知事の任期
都道府県知事の任期は4年です。
再度選挙に出馬して、当選すれば再任でき、再任は何度でも可能となっています。
都道府県知事に定年退職はありません。
過去には1963年から1994年まで、8期連続30年9ヶ月にわたって知事を務めた、中西陽一石川県知事も存在しました。
一方で、住民から解雇請求である「リコール」をされた場合は、4年未満でも解任となる場合があります。
住民の1/3以上が選挙管理委員会に申し出て、リコールが有効と判断された場合には、60日以内に住民投票にて解雇の有無を決定します。
住民投票にて、住民の過半数が解雇に賛成した場合は、辞職しなければなりません。
また都道府県知事は、国会議員や地方公共団体の議員などと兼職はできません。
仮に都道府県知事在任中に国会議員選挙に出馬した場合は、その時点をもって都道府県知事を解任されます。
参考:地方自治法
(3)都道府県知事の退職金について
都道府県知事の退職金は、「退職時の給与月額×在職月数(上限48月)×支給率」で計算されます。
平均で約3500万円ほどと言われています。
会社員との大きな違いは、退職金が支給されるタイミングです。
基本的に退職金は、定年退職するタイミングで支払われますが、都道府県知事の場合は、任期満了となる4年に1度のタイミングで退職金が支払われます。
また都道府県ごとで、知事によっては、退職金の減額をする場合もあります。過去には退職金を全額カットした事例もあります。
大阪では2011年に橋下徹大阪府知事が在職中、知事の退職金が高すぎるとして、従来の約4200万円を1/3ほどの1260万円までに減額しました。
3、知事選挙の実例|千葉県知事選挙について
2021年2月時点で、大型選挙として注目が集まっているのが、千葉県知事選挙(2021年3月4日告示、21日開票)です。
退任を表明した現職の森田健作氏(71)の後継として、12年ぶりに千葉県の新知事が誕生します。
今回の千葉県知事選挙には、1月23日の時点で出馬を表明しているのは、以下の6人です。
- 千葉市長の熊谷俊人氏(42)
- 自民党県議の関政幸氏(41)
- 元船橋市議の門田正則氏(74)
- 元県立高校校長の皆川真一郎氏(66)
- 共産党職員の金光理恵氏(57)
- 不動産鑑定士の山口節生(71)
なかでもとくに、熊谷氏と関氏の40代政治家について注目が集まっています。
参考:千葉日報
(1)熊谷俊人氏
熊谷氏は旧民主党の出身で、2009年に31歳で千葉市長選に初当選し、現在3期目の政治家です。
県政運営について、
- 市町村と連携した新型コロナウイルス対策
- 交通インフラの充実
- 漁業文化を活かした海洋県の確立
- 医療過疎への対策
- デジタル化などの行政改革の徹底
- 民間投資を引き出す経済産業施策
- 復旧復興
などの計画を提示しました。
「スピード感ある対策を展開し、千葉県全体が明るくなるような一年にしたい」と語っています。
参考:熊谷俊人公式Webサイト
(2)関政幸氏
一方、関氏は2011年に県議に初当選し、現在3期目です。自民党県連で政調会副会長、副幹事長などを務めています。
関氏は、
- 災害に強い県土づくり
- 道路網の整備
- 県産品を活用したインバウンド対策
- 医療・福祉施策の充実
- 地域包括ケアシステムの構築
- SDGsの積極的推進
などを計画として提示しました。
「千葉県の魅力である海や山の幸をトップセールスで海外に売り込んで生きたい」と語っています。
知事選挙に関するQ&A
Q1.知事選挙とは?
知事選挙とは、その都道府県の首長である知事を決める選挙です。
Q2.知事選挙が行われるタイミングは?
知事選挙が行われるタイミングは以下の通りです。
- 任期満了
- 住民の直接請求(リコール)による解職
- 信任決議による失職
- 死亡
- 退職
- 被選挙権の喪失による失職
Q3.都道府県知事にはどんな権利がある?
都道府県知事の特徴的な権限は以下の通りです。
- 議会の解散権
- 再議請求権(拒否権)
- 予算の調整および提案権
- 規則制定権
- 人事決定権
まとめ
今回は、知事選挙についてご紹介しました。
都道府県知事は、住民によって直接選ばれるため、その地域の意思がより強く反映されています。
あなたの声を地方自治に反映させるチャンスを無駄にしないよう、知事選挙の際は忘れずに投票に行くようにしましょう。