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政治ドットコムトピックス編集部が厳選! 衆議院議員総選挙「候補者ポスター大賞」(初めての普通選挙編)

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編集部が厳選! 衆議院議員総選挙「候補者ポスター大賞」(初めての普通選挙編)

投稿日2021.3.1
最終更新日2021.03.01

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日本における国政選挙の候補者ポスターの歴史は、1928年(昭和3年)から始まります。
この年の2月20日に行われた第16回衆議院議員総選挙は、日本の憲政史上初めて、市民に選挙権が与えられた国政選挙となりました。
候補者たちはポスターやチラシを駆使して有権者に自身の名前を売り込みます。
熱のこもった力作の数々を、ジャンル別にご紹介します。

「理」よりも「情」に訴えるほうが日本向き?

1928年(昭和3年)2月20日、日本で初めての「普通選挙」が行われました。
それまでは直接国税3円以上を納税することが求められていましたが、納税義務が撤廃され、満25歳以上の男性すべてに選挙権が与えられました。これは日本の憲政史上初めての出来事です。

立候補した候補者たちは、自らの名前を有権者に売り込もうと多種多様な選挙ポスターを制作。街中に掲示していきます。
これらのポスターを見ていくと、自らの政見や政策を伝えるため、工夫を凝らしたものも見受けられますが、知名度向上を目的にした「名前だけ覚えていってください型」や、有権者の情に訴える「どうか投票をお願いします型」が大多数であることが、のちの研究者たちによって指摘されています。

■「私に入れてください〜」お情け頂戴ポスターベスト3

1-1(落選)
上原正成氏ポスター。「厚きご同情御願い奉り候」と頼み込むも無念の落選

1-2(当選)
柴安新九郎氏ポスター。「切ニ御同情ヲ!」と頼まれても現代人は投票しない…が無事当選

1-3(落選)
酒井栄蔵氏ポスター。「どうか勝たして下さい!」とお願いするも落選

投票用紙の書き方を指南する

先述の通り、1928年(昭和3年)に行われた第16回衆議院議員総選挙は、日本国民にとって初めての普通選挙でした。
立候補する側も初めての出来事なら、投票する有権者にとっても初めての経験。選挙とはなんぞや、どうやって投票すればよいのかもよくわからない人たちもたくさんいました。
こんなエピソードがあります。
前年の1927年に、日本で初めて行われた全国規模の選挙である「統一府県議会選挙」がありました。
初めての選挙にあたって、有権者からは「投票は羽織袴で行かないといけないのか?」といった質問が寄せられた、投票入場券と投票用紙の違いがわからず現場で大モメしたなど、政策以前のトラブルが多発しました。
これを受けての国政選挙。候補者たちは、有権者たちに手取り足取り、わかりやすく投票の作法を伝えています。

■「こうやって書いてくださいね」懇切丁寧(本末転倒とも言う)なポスターベスト3

2-1(落選)
山本芳治氏ポスター。名前はもちろん投票日も告知するも落選

2-2(当選)
鳩山一郎氏ポスター。漢字はもちろん、ひらがな・カタカナも教える配慮で無事当選

2-3(落選)
山本芳治氏ポスター。投票箱の入れ方まで教える丁寧ぶり。落選

いまなら炎上間違い無しの比較ポスター

現在ではなかなか見られない様式のポスターも見られます。
いわゆる「比較広告」の手法、これを現在行ったら大炎上間違いなしでしょう。
とはいえ、ライバルと自身との違いを明確に打ち出す際に有効なやり方であることも否めません。客観的かつ公平な視点からの事実の比較であれば、「初めての選挙」に戸惑う有権者にとっても、投票先を選ぶ際の有力な判断材料にもなりえます。
ですが……1928年当時の候補者たちにそこまでの配慮はなかったようで、単に他者を攻撃するだけの結果になっています。

■「○○くんは悪いやつなんだよ〜!」相手を叩いて自分を上げる「ライバル比較ポスター」ベスト3

3-1(落選)
大山郁夫氏ポスター。ディスられている三土とは「三土忠造」のこと。大臣を歴任した戦前の重鎮。大山氏は落選

3-2(ー)
民政党のポスター。当時与党の政友会を「らちのあかない」と非難

3-3(ー)
民政党のポスター。「政友会は見栄を張って借金ばかり」と攻撃

約100年前も現在も、変わらない選挙戦略

1968年、アメリカの心理学者ロバート・ザイオンスが提唱したのが「ザイオンス効果」です。
彼が提唱したのは「接触回数を多くすればするほど、その人は好感を抱くようになる」という法則。
テレビのCMも、かつては雑誌や新聞、現在ではインターネット上で常に接する広告は、主にこの効果を狙って投資していると考えられます。
現在の選挙活動のキモが、街頭演説や片っ端から行う握手、極めつけは選挙カーからの名前連呼である理由もここにあります。
初めての普通選挙を迎えるにあたって、候補者たちはすでにその点を理解していたようです。
政策よりもとにかく目立て! 名前を刷り込め! そんなメッセージが感じられる選挙ポスターも、いきなり多数登場しています。

■現代にも通じる?「名前こそすべて!」な選挙ポスターベスト3

4-1(当選)
西尾末廣氏ポスター。伝えるのは名前のみという潔い作品。当選

4-2(当選)
鳩山一郎氏ポスター。後の重鎮は名前に加えて子どもを使い、イメージ戦略も兼ねる策士ぶり。当選

4-3(落選)
中村愛作氏ポスター。3回名前を出すのなら、ひらがなとカタカナも使えばいいのに。落選

強い印象を与えるポスターも

直接国税3円以上という制限が撤廃されたことによって、満25歳以上の男性すべてに選挙権が与えられました。
貧しい暮らしを強いられていた人々も投票できるようになったことによって、非資産家に向けたメッセージを打ち出したポスターも登場します。
その内容は「景気回復」「庶民の減税」など、経済対策が中心。
今も昔も、庶民の願いは共通ということでしょうか。
ちなみに「安定した生活を送りたい」、国民のささやかな願いも届かなかったのか、翌1929年に起こったアメリカの大不況が原因で、1930年から昭和恐慌が勃発。庶民の暮らしはさらなる絶望に追い込まれることになります。

■インパクト抜群! むしろインパクト一発のポスタートップ3

5-1(ー)
政友会ポスター。描かれている貧乏神は、ライバルである民政党総裁・浜口雄幸を模している手の混みっぷり

5-2(落選)
田万清臣氏ポスター。後の左派アジテーションを想起させるイラストとメッセージ。お願いではなく投票を「要求」したからか、落選

5-3(落選)
老母を背負って道をゆく息子の姿は「楢山節考」の世界。暗すぎる雰囲気が祟ったか、落選

選挙は大激戦に

政策や政見、政治家としての志はイマイチ伝わらなくても、勢いだけは過剰なまでに伝わるポスター群、いかがでしたでしょうか。

与党の立憲政友会と野党第一党の立憲民政党が激突した、この第16回衆議院議員総選挙は、投票の結果、立憲政友会が218議席、立憲民政党が216議席という大激戦に。どちらも過半数を獲得できない事態になる熱戦となりました。
また、政府による積極的な啓蒙活動、候補者や政党による選挙活動の甲斐もあり、80.33%と高い投票率も記録しています。

■参考文献

「第一回普選と選挙ポスター―昭和初頭の選挙運動に関する研究」玉井清著/慶應義塾大学出版会刊

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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