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クオータ制とは?メリット・デメリットや世界の取り組みについて解説

投稿日2024.2.8
最終更新日2024.02.08

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近年、多くの国や組織がクオータ制を採用しています。

「クオータ制」は、男女間の格差是正やマイノリティの社会参加など、あるグループの比率を一以上に保つ制度のことです。

そこで、この記事では以下の内容を簡単に解説します。

  • クオータ制とは
  • クオータ制のメリット
  • クオータ制のデメリット
  • クオータ制に関する日本の課題
  • 海外のクオータ制導入事例

1、クオータ制とは

クオータ制とは

クオータ制は、特定のグループの社会参加を促進するための制度で、そのグループの比率を一定以上に保つことが目的です。この制度の背景には、男女間の格差是正やマイノリティの社会参加の促進があります。

「クオータ」という言葉は、ラテン語の「quota pars=等分の大きさ」が語源です。これは「割り当て」「分担」「取り分」を意味しています。

クオータ制は多くの国で導入されており、特に北欧諸国では先駆けとしてこの制度を採用しています。

日本はクオータ制を導入しておらず、OECD加盟国の中でクオータ制を導入していない数少ない国の一つです。

参考:内閣府男女共同参画局「用語解説」

2、クオータ制のメリット

クオータ制とは

多くの組織や国が導入するクオータ制には、明確なメリットが存在します。

(1)女性の社会進出を促進する

クオータ制の導入は、女性の社会進出を促進するための有効な手段として注目されています。

クオータ制の導入で、女性が重要な役職に就く機運が高まり、組織全体の多様性が増すとともに、新しい価値観や視点がもたらされる可能性があります。

また、正規雇用を希望しない女性が一定数存在する中、クオータ制を通じて女性の登用が促進されることで、組織の中での女性の存在感や影響力が増していくことが期待できるでしょう。

このように、クオータ制は女性の社会進出を促進するだけでなく、組織の成長やイノベーションにも寄与する可能性があるのです。

(2)人材が多様化する

クオータ制の導入は、組織内の人材の多様化を促進する大きな手段となります。

クオータ制を導入し、女性の管理職登用に一定の比率を設けることで、組織は多様な視点や意見を取り入れることが可能です。これが組織の競争力を高める要因となります。

また、多様な属性を持った人材が積極的に採用されたり、人手不足の解消や新しいアイディアの創出をする人が増えたりと、多岐にわたるメリットが期待できます。

3、クオータ制のデメリット

クオータ制とは

クオータ制の導入は、女性の社会進出や多様性の促進を推進する一方で、いくつかのデメリットや課題が指摘されています。

(1)逆差別になる可能性がある

クオータ制の導入は、多様性の促進や女性の社会進出を目的としていますが、その取り組みには注意が必要です。

特に、急激な変化は男性に対する逆差別につながる可能性が考えられます。

例えば、男性と女性の能力が同等であった場合でも、クオータ制の導入により、女性が優先的に管理職に昇進するケースが予想できます。さらに、女性の能力が男性よりも低い場合であっても、クオータ制の目標を達成するために、女性を優先的に昇進させる可能性があります。

このような状況は、組織内での不公平感やモチベーションの低下を引き起こす要因の一つです。

そのため、クオータ制を導入する際は、組織の中長期的な計画を考慮し、段階的に実施することが求められます。逆差別を避けるための配慮や、組織全体のバランスを保つための取り組みが不可欠です。

(2)企業によっては運用負荷がかかる

クオータ制の導入は、運用上の課題やコストが発生することも無視できません。

特に、制度の適用対象となる人材が、就業時間や環境に制約を持つ場合、その人材が不在となった際のリスクが増大します。

例えば、女性管理職が出産や育児のために一時的に職場を離れる場合、その期間の代替人員を確保する必要が生じます。

しかし、短期間で適切な代替人員を確保するのは容易ではなく、事前に人材育成を進めておくことが必要です。

このような人材育成には、時間だけでなく、教育やトレーニングのためのコストもかかります。さらに、多様な人材を受け入れるための職場環境の整備や制度の運用にも、組織としての投資が必要となります。

組織の方針として、中長期的な視点で女性や多様な人材の活用を進める場合、計画的な取り組みと予算の確保が不可欠です。経営層の理解と協力を得た状態で始める必要があるでしょう。

4、クオータ制に関する日本の課題

クオータ制は多くの国で導入されています。特にOECDに加盟している北欧諸国は、積極的にクオータ制を取り入れています。

日本はOECDに加盟していますが、クオータ制は導入していません。日本独自の文化や背景を考慮しつつ、クオータ制の導入や運用に関する課題を深く探ることが、今後の方針決定において重要となるでしょう。

ここでは、以下の内容に沿って、日本のクオータ制に関する課題について解説します。

  • 政治におけるクオータ制
  • 企業におけるクオータ制

(1)政治におけるクオータ制

女性は我が国の人口の51.3%、有権者の51.7%を占めています。

その声が政策や方針決定過程に反映されることは、持続可能で暮らしやすい社会を実現する上で不可欠です。

政府は2003年に「2020年までに、指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする」との目標を掲げました。しかし、この目標は社会全体で十分に共有されず、期待される改革も進行していない状況です。

世界各国における2020年の「衆議院の女性議員比率」は、以下の通りです。

国名 割合(%) クオータ制の状況
フランス 39.5 ・法的候補者クオータ制

・政党による自発的なクオータ制

イギリス 33.9 ・政党による自発的なクオータ制
ドイツ 31.2 ・政党による自発的なクオータ制
アメリカ 23.4
韓国 19.0 ・法的候補者クオータ制
日本 9.9

日本の指導的地位への女性の参画は、国際的に見ても遅れています。全体として30%の水準には遠く、その実現に向けた具体的な道筋が求められています。

参照:
内閣府男女共同参画局「第5次男女共同参画基本計画」
内閣府男女共同参画局「あらゆる分野における女性の参画拡大」

(2)企業におけるクオータ制

日本の政治におけるクオータ制の背景として、女性の存在感が増していることが挙げられます。

その一方で、女性の政治参加はまだ十分とは言えません。2003年の政府の目標設定以降、女性の指導的地位への参画を促進するための法的枠組みや取り組みが進められてきましたが、目標達成には至っていません。

国際的な視点で見ると、日本の女性の政治参加は他国に比べて低水準です。特に、指導的地位における女性の割合が30%に達することは、現状の日本では難しいとされています。

世界各国における2020年の「管理的職業従事者に占める女性の割合」は、以下の通りです。

国名 管理的職業従事者に占める女性の割合(%)
アメリカ 40.7
スウェーデン 40.2
イギリス 36.8
フランス 34.6
ドイツ 29.4
日本 14.8

2030年代に向けて、性別による偏見や障壁を取り払い、多様な人材が活躍する社会の実現を目指す動きが強まってきています。

参照:内閣府男女共同参画局「第5次男女共同参画基本計画」

5、海外のクオータ制導入事例

クオータ制とは

世界中で女性の社会参加を促進するための取り組みが進められています。その中でも「クオータ制」は、多くの国々で導入されており、その効果や形態は国ごとに異なります。

他の国々はどのような取り組みを展開し、どのような結果になっているのかが気になるところです。

ここでは、フランス、ノルウェー、ドイツ、イギリス、アメリカでのクオータ制導入事例について解説します。

参照:「共同参画」2022年6月号

(1)フランス

フランスは、ジェンダーギャップ指数のランキングで2006年に115か国中70位でした。しかし、その後の取り組みにより女性の役員比率が大幅に向上しました。

2008年の憲法改正を経て、2011年に「取締役クオータ法」が制定されました。

この法律の対象企業は以下の通りです。

  • 上場企業
  • 従業員数や売上高が一定規模を超える非上場企業

取締役会や監査役会における男女の比率を、2014年1月1日までに20%、そして2017年1月1日までに40%とすることが義務付けられました。目標を達成できない場合は、取締役や監査役の報酬の一部が停止されるペナルティが設けられています。

この法律の導入により、フランスの女性役員の比率は45%以上に上昇しました。

さらに、2021年には新たな法案が可決されています。

具体的な内容は以下の通りです。

  • 従業員1,000人以上の企業に対して、役員より下の幹部社員(上級管理職や管理職など)における女性の割合を、2027年までに30%、2030年までに40%とすること。

新しい法律に関しても、目標を達成できない企業には、罰金が科されるペナルティが設けられています。

(2)ノルウェー

ノルウェーは、企業役員への女性のクオータ制を導入した先駆けとなる国です。

2002年の上場企業の女性役員比率はわずか6%でした。しかし、2003年に新たな法律が制定され、国営企業に対して取締役の女性比率を2005年7月1日までに40%とする目標が設けられました。この初期の取り組みは、企業が自発的に目標を達成することを期待してのものでした。

さらに、2006年には上場企業もこの制度の対象となりました。具体的には、2007年末までに取締役の女性比率を40%にすることが義務づけられました。達成できない場合、企業名の公表や、最終的には企業の解散という厳格なペナルティが設定されました。

この法律の影響は顕著で、国営企業の女性取締役比率は、2005年7月1日の時点で25%でしたが、2008年にはすべての上場企業で女性役員比率の40%の目標が達成されました。2021年には、その比率はさらに41.5%に上昇しています。

ノルウェーの取り組みは、他国におけるクオータ制導入のモデルケースとして注目されています。企業の経営層におけるジェンダーバランスの重要性を認識し、具体的な目標とペナルティを設けることで、実際の変化を促進することができることを示しています。

(3)ドイツ

ドイツは、女性の指導的地位への参画を促進するための取り組みとして、2001年に政府と使用者団体が協定を結び、企業の自主的な取組を進めていました。

しかし、2011年の段階で取締役の女性比率が低水準だったため、2015年に「女性の指導的地位法」が制定されました。この法律により、監査役会にクオータ制が導入されることとなりました。

監査役会はドイツの企業において、取締役の選解任などの権限を持つ重要な組織です。この法律の背景には、監査役会の女性比率を向上させることで、取締役等への女性登用の増加を促進するという考えがありました。

具体的には、上場大手108社が対象となり、2016年以降、新たに監査役を選出する際には、男女の比率をそれぞれ30%以上とすることが義務付けられました。この義務を遵守しない場合、ペナルティとして空席を維持しなければならないという制度が導入されています。

クオータ制の導入により、2020年4月の時点で、監査役会の女性比率は35.2%まで上昇しました。さらに、最近の動向として、2021年1月に「第2次女性の指導的地位法」が施行されました。

この新しい法律では、従業員数が2,000人以上の上場企業や、政府が過半数の株式を保有する企業に対して、取締役が3人以上の場合、少なくとも1人の女性と男性を選任することが求められています。

ドイツの取り組みは、女性の指導的地位への参画を促進するための具体的な制度や施策を導入し、その効果をしっかりと評価し、必要に応じて法律を改正してきたことが特徴的です。

(4)イギリス

イギリスの企業役員に関するクオータ制度は、他の国々とは異なるアプローチを採用しています。

イギリスでは企業役員のクオータを法的に義務化する制度は存在しないものの、政府の委員会が数値目標を設定し、その進捗をフォローするとともに、取締役の性別構成の情報開示を義務化することで、企業の取り組みを促進しています。

2011年に「デーヴィス・レビュー」が発表され、FTSE2100(ロンドン証券取引所における株価指数)の企業を対象に、2015年までに取締役の女性比率を25%以上とする目標が設定されました。

そして、この目標が達成されたため、2016年に「ハンプトン・アレキサンダー・レビュー」が発足しました。このレビューでは、より多くのFTSE350の企業を対象に、2020年までに取締役の女性比率を33%にするという新たな目標が設定されました。2020年9月の時点で、FTSE350の企業の中には目標に達していない企業も約4割存在していましたが、対象企業全体としては、平均で33%の目標が達成されています。

さらに、ロンドン証券取引所では、2021年4月に新しい上場ルールが制定されました。

このルールでは、プレミアム市場に上場する企業を対象に、以下の項目が求められています。

  • 取締役の女性比率を40%以上確保
  • 毎年の情報開示
  • 目標達成に失敗した場合の理由

このように、イギリスは法的な義務化ではなく、目標設定と情報開示を通じて、企業の女性役員の比率向上を促進しているのです。

(5)アメリカ

アメリカでは、国全体での企業役員のクオータ制は存在しないものの、特定の州や証券取引所での取り組みが進められています。

特に注目すべきは、証券取引所であるナスダックの取り組みです。2022年8月から、ナスダック上場企業は、取締役に少なくとも1人の女性を選任すること、その情報の開示、及び達成できない場合の理由の説明が義務付けられました。適切な開示が行われない場合、上場廃止という厳しいペナルティが科される可能性があります。

また、州レベルでの取り組みとして、カリフォルニア州では、2018年に取締役へのクオータ制を導入しました。具体的には、カリフォルニア州に「主たる執行事務所」を持つ企業を対象に、取締役に少なくとも1人の女性を選任することを2019年末までの目標としました。さらに、2021年末までには、取締役の人数に応じた女性の選任が義務付けられました。これに違反すると、罰金が科される制度が取り入れられています。

アメリカの企業界における女性の役員比率の向上のための取り組みは、国レベルではなく、州や証券取引所レベルで進められているのが特徴的です。

これらの取り組みを通じて、女性の役員比率の向上や、ジェンダー平等の実現に向けた動きが広がっていることが伺えます。

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PoliPoli|増やせ!女性企業家・起業家〜日本の切り札〜

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6、まとめ

クオータ制は、男女平等や多様性の向上を目的として、多くの国や組織で導入が進められている制度です。

この制度の導入により、女性やマイノリティの社会進出が促進される一方で、逆差別や運用負荷の問題も指摘されています。

日本においても、政治や企業の領域でのクオータ制の導入が進められていますが、まだまだ課題も多い状況です。一方、海外では、ノルウェー、フランス、ドイツなど、多くの国でクオータ制の導入が進んでおり、成功事例や取り組みを参考にすることができます。

今後もクオータ制に関する議論や取り組みが進められていくので、注目です。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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