「政治をもっと身近に。」
政治に関する情報をわかりやすくお届けします。

政治ドットコム政治用語OECD(経済協力開発機構)とは?歴史や仕事内容まで簡単解説

OECD(経済協力開発機構)とは?歴史や仕事内容まで簡単解説

投稿日2021.2.25
最終更新日2021.02.25

Warning: Undefined variable $pots_id in /home/learise/stg-ymzk.com/public_html/pxtnuzmy/wp-content/themes/myTheme2/single.php on line 48

OECD(経済協力開発機構)とは、1961年に発足した世界経済の成長を目的とする国際機関です。
日本は1964年に21番目の加盟国として参加しています。

本記事では

  • OECD(経済協力開発機構)とは
  • OECD(経済協力開発機構)の目的
  • OECD(経済協力開発機構)の具体的取り組み
  • OECD(経済協力開発機構)東京センター

についてわかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、OECD(経済協力開発機構)とは

OECD
画像出典:OECD委員会等機構図 外務省

OECD(経済協力開発機構)とは「世界経済発展のために各国が協力する」国際機関です。

OECDは、“Organisation for Economic Co-operation and Development”を略した単語で

  • Organisation(組織)
  • Economic(経済)
  • Co-operation(協力)
  • Development(開発、発展)

を意味しています。

加盟国の代表が話し合い、新しい国際ルールの提案をしたり、各国の歩調を合わせる「クラブ的性格」を持っています。

OECDは各国がせめぎあう「交渉」の場ではなく「議論」の場として存在し、議論を実行に移す「シンク・ドゥー・タンク」の姿勢を重要視しています。

それではOECDはどのような歴史を持ち、どんな加盟国が参加しているのでしょうか?
まずはOECDの歴史について見ていきましょう。

(1)OECD(経済協力開発機構)の歴史

OECDは、1961年にパリで設立されました。
下記はパリにあるOECDの本部です。

OECD
画像出典:Visiting the OECD OECD

OECDの前身団体は「OEEC(欧州経済協力機構)」です。

OEECは第2次世界大戦後の1948年に設立され、ヨーロッパの戦後復興を目的としたマーシャルプランを受け入れるためにつくられました。

マーシャルプランとは、第2次世界大戦後にアメリカの国防長官ジョージ・マーシャルが提案したヨーロッパ復興計画のことです。

その後、OECCは解体され、アメリカとヨーロッパの経済協力関係の証としてOECDが設立されました。

現在はアメリカとヨーロッパ各国以外の国もOECDに参加しています。

参考:国際的ルール作りと政策協調の推進 外務省

(2)OECD(経済協力開発機構)の加盟国

OECD
画像出典:経済協力開発機構 (OECD) について OECD

OECDには、日本を含む37カ国の加盟国が参加しており、先進国が多い傾向にあります。

加盟国一覧
イギリス、アメリカ 、日本、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チリ、コロンビア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、韓国、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ

参考:加盟国及びパートナー (members and partners) OECD

2、OECD(経済協力開発機構)の目的

OECDの目的は

  • 経済成長
  • 開発途上国の援助
  • 自由貿易の拡大

です。

それぞれくわしく見ていきましょう。

(1)経済成長

OECDでは、加盟国の財政を維持しつつ、高度な経済と雇用、国民の生活水準向上を目指し、加盟国だけではなく世界全体の経済発展に貢献することを目的としています。

そのための一環としてOECDは世界経済の見通しをまとめた「エコノミックアウトルック」を発表しており、

2020年度には

  • 新型コロナウィルスが収束した場合の単発シナリオ
  • 第2波が襲来する双発シナリオ

以上2種類の見通しが発表されました。

参考:OECD、2020年の世界経済見通しを上方修正 日本貿易振興機構

OECDは世界経済を見守り、より発展していくためのルールや取り組みについての議論を行うことで、世界標準(通称 世界のスタンダード・セッター)を作り上げています。

(2)開発途上国の援助

OECDでは加盟国にかぎらず、開発途上国も議論の対象です。

OECDには「OECD開発援助委員会」という組織があり、各国の途上国支援(ODA等)をもとに議論が進められています。

ODAとは政府の資金で実施される途上国支援のことです。

参考:開発援助委員会 OECD日本政府代表部

(3)自由貿易の拡大

OECDでは、貿易と投資の自由化を経済成長の原動力と捉えており、世界経済のためにより多くの国の連携と参加を促しています。

自由貿易の拡大を担う組織は、OECD(経済協力開発機構)内の中でも特に「貿易委員会」という組織です。

貿易委員会は以下の4本の柱を軸として活動しています。

  • 貿易自由化(輸出入の制限緩和など)
  • サービス貿易(物以外のサービス産業の貿易)
  • 貿易と国内政策(国内政策と貿易の調整)
  • 輸出信用(輸出の秩序と公平さの維持)

参考:貿易委員会 OECD日本政府代表部

3、OECD(経済協力開発機構)の具体的取り組み

OECDには加盟国以外にも

  • 経済学者
  • 法律家
  • 科学者

など、さまざまな分野の専門家が約3000名在籍し、各国の分析と提言を行っています。
OECDからの日本に対する分析と提言を見てみましょう。

参考:経済協力開発機構(OECD)世界情報通信事情 総務省

(1)成長戦略について

日本は労働生産性において、OECD上位15カ国の平均を約20%下回っています。

OECDでは、この労働生産性を上げるために

  • 競争を阻害する市場の規制を緩和する
  • 外国企業に対して市場を開く

などの成長選戦略を提言表しました。

自由な市場で競争力が高まり、外国企業も競争に参加することで、市場の活発化が期待されています。

(2)労働市場について

労働生産性と同じく、日本では1人あたりの所得でもOECD加盟国の平均を約20%下回っています。

その原因は非正規労働者の増加であると言われています。
正規社員と比べて非正規労働者は給与が低い傾向にあり、全体の給与水準が引き下がっているようです。

OECD
画像出典:日本の政策課題達成のためにOECDの貢献 OECD

また、企業からの非正規労働者への投資も少ない傾向にあるため、全体の生産性低下にも繋がり、日本の労働市場における正規と非正規の2重構造は課題となっています。

OECDでは、この2重構造の問題に対して

  • 非正規労働者へ社会保険制度を拡大する
  • 正規労働者への保護を減らす
  • 非正規労働者にもキャリアアップのための訓練を実施する
  • 十分なセーフティーネットを敷いておく

などの対策を提言しています。

(3)税制及び年金について

OECD加盟国の内で、日本の税収GDP比率(税の収入)はかなり低い一方で、粗政府債務残高GDP比率(負債)はかなり高くなっています。

政府の負債を返済するために税率を一気に上げれば経済は混乱に陥るため、税収と国民生活のバランスを取ることが重要です。

OECDでは、アンバランスな税収と負債を調整するために

  • 直接税から間接税に税の構成割合をシフトする
  • 成長のために法人税率を下げる
  • 資産課税を見直す(相続税の強化)
  • 個人所得税の課税ベースを拡大する(個人所得税率は引き上げない)

などの提言をしています。

(4)環境や気候変動について

日本は京都議定書をはじめとして、環境や気候変動に対して積極的に取り組んでいます。
しかし、産業部門以外の商業部門や家庭部門でのガスの削減は順調に進んでいない側面もあります。

OECDでは、環境保護を経済成長につなげるために

  • 削減義務を伴う包括的な排出量取引制度への移行
  • 炭素税などの環境関連税制の幅広い活用
  • 排出削減のための技術革新や投資の促進

などの提言を行っています。

(5)教育について

日本の家計に占める教育費の割合はOECD加盟国の中で上位2番目となっています。

OECDでは、子どもたちへの支援と効果的な政策実現のために

  • 現行の奨学金ローン制度を将来の所得を条件とした返済方式に移行する(将来の収入によって返済可能になった時にだけ支払いを求められる方式)
  • 就学前教育と保育への公的支出を増やす
  • 教育、医療、税制、雇用など異なる分野の政策を連携させる
  • 教員の採用方法、研修制度、専門能力開発を改善する

などの提言を行っています。

(6)医療や介護について

日本の平均入院日数はOECD加盟国の平均の3倍以上となっており、年間の受診回数もOECD加盟国の中で最高値を記録しました。

医薬品の消費量はOECD加盟国の平均より約20%上回っています。

OECD
画像出典:日本の政策課題達成のためにOECDの貢献 OECD

これらの背景にあるのは、日本の高齢化問題です。
高齢者が増えることで医療を必要とする人々が増えている傾向にあります。

また、日本では新しい医療機器や医薬品が導入されるまでの期間が他国と比べて長いです。
他国では500日程度で導入される新機器・新薬の導入に4年ほどかかることもあります。

OECDでは、日本における高齢化に伴う医療需要の増加に対して

  • 高齢者の介護を病院から在宅または介護施設に移行する
  • 臨床試験の費用を低減することで導入期間を短縮する
  • 公的医療保険でカバーされない治療を受けやすくするために混合診療の範囲を拡大する

などの提言を行っています。

少子高齢化とは?人口減少が招く社会問題を簡単解説

「少子高齢化」は、日本社会にとって最も深刻な問題の1つです。 人口減少や労働力不足、年金や介護問題など、社会全体に大きな影響を与えています。 地方の過疎化も進行し、地域格差も広がっています。 これらの課題を解決するためには、働き方改革や子育て支援策など多岐にわたる対策が必要でしょう。 今回は以下の内容についてわかりやすくご紹介します。 少子高齢化の概要 どんな影...

介護問題とは?介護問題に対する政府の対応策を簡単解説

介護問題とは、超高齢社会の日本で今まさに発生している問題です。 具体的には、介護難民や社会保障費増加の問題などがあげられます。 これから両親の介護と向き合う世代の皆さんにとっては、最も関心の高い問題なのではないでしょうか。 今こそ、介護のどのような点が問題になっているのか、政府はどのように対応しているのか、正しく知っておきませんか? 今回は 日本の介護における問題 ...

(7)地方分権の推進について

日本では政府の歳入(収入)と歳出(支出)が中央政府と地方政府でほぼ同額で配分されています。

また、2008年から2009年においては財政出動(国債や税金を公共事業等に投資すること)のほとんどが地方政府を通じて支出されました。

OECDでは、より自立した活気のある地方自治体を実現するために

  • 特定目的の交付金の削減と一般目的の交付金の増強
  • 地域に根ざしたボトムアップ型の地域政策
  • 地元の強みとイノベーションを融合した新技術の開発による地域活性化

などを提言しています。

参考:日本の政策課題達成のためにOECDの貢献 OECD

地方分権とは?地方分権の7つの目的や欠点を簡単解説

「地方分権」とは、政治において統治する権利を地方公共団体に分散させることを言います。 しかしそれだけでは具体的に地方分権が何であるのか理解できていないと言う方も少なくないでしょう。 今回は、以下の内容について解説します。 地方分権の目的 地方分権の具体例 地方分権改革について 地方分権のデメリット この記事を読むことで地方分権に対する疑問が解消されます...

イノベーションとは?課題や企業への必要性、政府の取り組みを簡単紹介

イノベーションとは、従来のやり方にとらわれず、新たな技術や知見、創意工夫などを活かして、新しいやり方や価値を創ろうとする活動のことで、現代社会における企業成長と市場活性化において重要な要素です。 近年、政府は「イノベーション」を重視した政策を数多く打ち出しています。 ニュースなどで耳にする機会もあるのではないでしょうか。 今回の記事では、以下の内容について詳しく解説します。 ...

4、OECD(経済協力開発機構)東京センターについて

OECD東京センターは、1973年に設立されました。

OECDへの理解を深めるために

  • 講演会
  • 政策討論会
  • 記者会見
  • 日本語ウェブサイト
  • 翻訳出版物

などを通して、広報と国内の各層との連携を行っています。
参考:OECD東京センターについて OECD

東京センターには閲覧室も併設されており、OECDの出版物の閲覧が可能です。
(オンライン「OECD iLbrary」でも閲覧可能)

また、センターの訪問や見学も受け付けています。

OECD
画像出典:閲覧室ご利用案内 OECD

まとめ

今回はOECD(経済協力開発機構)について解説しました。
経済と社会問題は切っても切れない関係です。

OECDではそれらの社会問題に経済的なアプローチを提言し、よりよい世界経済の発展を促しています。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
株式会社PoliPoliが運営する「政治をもっと身近に。」を理念とするWebメディアです。 社内編集チーム・ライター、外部のプロの編集者による豊富な知見や取材に基づき、生活に関わる政策テーマ、政治家や企業の独自インタビューを発信しています。