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GIGAスクール構想とは?構想内容や問題点について簡単解説

投稿日2021.3.18
最終更新日2021.03.17

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GIGAスクール構想とは、子供たちの個性に合わせた教育を実現すべく、1人1台の学習者用パソコンや高速大容量ネット環境などを整備する計画をまとめたものです。

2019年末に文部科学省が打ち出したことで、教育界を中心に注目が集まっています。 

今回の記事では

  • GIGAスクール構想の概要
  • GIGAスクールが必要とされる背景
  • GIGAスクールの問題点
  • GIGAスクール構想実現のための施策

などについてわかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。 

1、GIGAスクール構想とは

GIGAスクール構想
GIGAスクール構想とは、「1人1台の学習用端末」と「通信ネットワークの整備」によって、子供たち一人ひとりに合わせた持続的なICT教育の計画をまとめたものです。

閣議決定された2019年度補正予算案では、約2,318億円が盛り込まれました。

「GIGA」とは「Global and Innovation Gateway for All」の略称で、「すべての人にグローバルで革新的な入り口を」という意味です。 

Society5.0時代を見据えた教育の実現を図る施策であると言えます。

参考:GIGAスクール構想の実現について|文部科学省

参考:「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」について|文部科学省

(1)三位一体の改革

GIGAスクール構想では、生徒一人ひとりがICTスキルを身に付けられるように、

  • ハード面
  • ソフト面
  • 指導体制

という3点の取り組みを同時に進める、三位一体の改革を目指しています。
それぞれの具体的内容についてみていきましょう。

①ハード面

GIGAスクール構想のハード面の改革は、ICTインフラの整備です。

具体的には

  • 生徒1人につき1台コンピュータの割り当て
  • 高速大容量通信ネットワーク環境の整備
  • 家庭学習のためのLTE通信環境の整備の支援

などがあります。

当初は実現まで2018~2022年の5年にわたって進められる予定でしたが、新型コロナウイルスによる影響を受け、「GIGAスクール構想」の早期実現が必要とされました。

2020年度には2,292億円の補正予算が計上され、1人1台端末という目標を前倒しする措置が取られました。

これにより、小学5・6年生、中学1年生に加えて、2023年度に予定されていた小学1~4年生、中学2・3年生に対しても端末が配布されました。

さらに、LTE通信環境(モバイルルータ)の整備を支援するなど、GIGAスクール構想の実現に向けた動きが見られます。

参考:GIGAスクール構想の加速による学びの保障|文部科学省

②ソフト面

GIGAスクール構想のソフト面の改革は、教育現場におけるICT技術の積極的な活用です。

具体的には

  • デジタル教科書などのデジタルコンテンツでの授業
  • AIドリルなど先端技術を利用した学習

など、デジタル技術を活用した教育の充実を図ります。

2021年時点で既にデジタル学習を取り入れている、東京都千代田区立麹町中学校では、iPad220台が導入されました。

また中間・期末テストを廃止することで、生徒1人ひとりの特性に合った学習への取り組みも行われています。

参考:参考資料2 千代田区立麹町中学校の視察の概要|首相官邸

③指導体制

GIGAスクール構想の指導体制の改革は、ICT人材に対するサポートです。

具体的には

  • 各地域による指導者養成のための研修実施
  • ICT活用教育アドバイザーによる、説明会やワークショップの開催
  • 民間企業の外部人材の活用

などがあります。

2023年度までには、ICT支援員は4校に1人程度配置する予定です。

ハード面・ソフト面の整備だけでなく、指導体制を含めた三位一体の改革を推進することで ICT教育への取り組みを加速できると考えられています。

2、GIGAスクールが必要とされる背景

令和のスタンダード教育とも名高い「GIGAスクール構想」ですが、この構想が必要とされる背景には、これからの子供たちに求められる能力の変化が大きく関係しています。

主な背景である

  • Society 5.0時代の到来
  • 日本の学校教育におけるICT化の遅れ

について見ていきましょう。

(1)Society 5.0時代の到来

GIGAスクール構想の必要性を語る上で欠かせないのが、狩猟社会から農耕社会、工業社会や情報社会を経て生まれた新しい社会「Society5.0」時代の到来です。

Society5.0時代では

  • IoT
  • ビッグデータ
  • 人工知能(AI)

などの最先端技術がより幅広く社会で活用されていきます。
AIによる単純労働のスリム化など、私たちの働き方やライフスタイルが大きく変わることが予想されています。

文部科学省は、このSociety5.0時代に対応できる人材を育成することを目的として、

  • プログラミング教育
  • Steam学習

といった新しい教育手法を取り入れようとしているのです。

ICTの整備やGIGAスクール構想の推進はそれらを実現するための基盤と言えるでしょう。 

参考:「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」について|文部科学省

Society5.0とは?概要や課題、教育への影響などを簡単に解説

「Society 5.0」とは、政府や経団連が提唱している、日本が目指す新しい未来社会の姿を表す言葉です。 Society 5.0を理解するためには、この言葉の背景となる科学技術基本計画の5期目と、それが目指す具体的なビジョンを把握することが必要です。 本記事では以下の視点から「Society 5.0」を詳しく解説します。 Society 5.0とは何か 目的・事例 ...

(2)日本の学校教育におけるICT化の遅れ

もう1つの背景としては、諸外国と比べた日本の学校教育におけるICT活用の遅れです。

2018年の「生徒の学習到達度調査(PISA)」によると、日本の学校授業におけるデジタル機器の使用時間は OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最下位の35位でした。

また、学校外での教育に関連するデジタル機器の利用状況も、OECDの中で平均を下回るものが多いという結果になりました。

こうした現状を解消しつつ、Society5.0時代に必要な人材の教育計画が「GIGAスクール構想」なのです。

参考:「OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」|文部科学省

3、GIGAスクール構想の課題

GIGAスクール構想
「GIGAスクール構想」には、まだ課題や問題点が多くあるのが現状です。

 なかでも、代表的な課題としては

  • 教師や保護者のITのスキル・リテラシー
  • 通信ネットワーク整備の地域格差
  • セキュリティ面でのリスク

などがあります。

(1)教師や保護者のITのスキル・リテラシー

教育におけるデジタル端末の導入によって、家庭学習やオンラインでのリモート授業などが増加することから、教師や保護者におけるITのスキルやリテラシーが必要になります。

特に教師は、通常業務に加えてICTを活用した授業の研修や準備をする必要があるため、こうした面で教師を支援する取り組みも必要になるでしょう。

(2)通信ネットワーク整備の地域格差

ICT教育に伴う端末の導入コストにより、各地域における通信ネットワーク環境に差が出てしまうという問題があります。

ネットワーク環境の整備に対する補助金はある程度出ますが、消耗品やソフトウェアなど補助金対象外のコストは各地域で負担する必要があるのです。

実際に通信環境の地域格差は深刻で、文部科学省の調査によると、2020年3月の時点での普通教室の無線LAN整備率の1位は徳島県(75.9%)、最下位が新潟県(19.5%)でした。

ちなみに、2020年時点での全国平均値は48.9%です。

参考:令和元年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)【確定値】|文部科学省

このような通信環境の地域格差は、子供たちが受ける教育の質にも大きく影響することが予想されます。
そこで政府は予算の拡大や通信環境の整備支援、ICT活用教育アドバイザーの活用など幅広いサポートを展開しています。

参考:教育の情報化に関する手引 第7章|文部科学省

参考:令和元年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)【確定値】|文部科学省

(3)セキュリティ面でのリスク

インターネットに接続できる端末を生徒に1人1台持たせることは、サイバー攻撃や有害な情報、第三者からの脅威にさらすことにもつながります。

個人情報を保護することはもちろんのこと、子供たちをそうした有害なものから守るという観点からもセキュリティ対策がとても重要になります。

しかし、いきなり教師や親にセキュリティやフィルタリングを完璧に行ってもらうことは難しいでしょう。
セキュリティ面の不安を克服し、ICTを最大限に活用するには課題がまだまだありそうです。

参考:「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」について|文部科学省

4、GIGAスクール構想実現のための施策

「GIGAスクール構想」に対する施策は、文部科学省を筆頭に取り組まれています。
そこで最後に、現在文部科学省が行っている以下の3つの支援サービス

  • 子供の学び応援サイト
  • 補助金制度
  • GIGAスクールサポーター配置支援事業

について紹介します。

(1)子供の学び応援サイト

新型コロナウイルスによる臨時休業期間における学習支援方策として、2020年3月に「子供の学び応援サイト」を開設しました。

ポータルサイトには

  • 小学校
  • 中学校
  • 高等学校
  • 特別支援教育
  • 幼児教育
  • 児童生徒・保護者へのメッセージ

の情報を掲載し、オンラインで活用できる無料の教材や教科ごとの学習用動画などを学校種別に紹介しています。

また、2020年4月にはLINE公式アカウントも開設されました。
これによりスマートフォンからでも手軽にアクセスできるようになりました。

興味のある方は、以下のURLからぜひご覧ください。

参考:子供の学びの応援サイト|文部科学省

(2)補助金制度

GIGAスクール構想には莫大な予算が組まれており、その予算には学校内の環境整備に向けた補助金制度も設けられています。

たとえば学習用コンピュータの購入に関しては、

  • 国公立…1人あたり4.5万円の定額費用
  • 私立…1台の価格に対して1/2(上限4.5万円)の費用

が補助金によって支援されます。

ただし、これはあくまで端末整備のための支援金であり、有償ソフトウェアなどにかかる費用は支援対象外です。

また、学校内の通信ネットワーク整備にも補助金制度が設けられています。
その対象は、公立の小・中・高校および特別支援学校などです。

ケーブルやルーターなど、通信ネットワーク整備にかかる費用の1/2(1校につき上限3,000万円)が補助金として支給されます。

参考:GIGAスクール構想の実現に関する補助事業の概要|文部科学省

(3)GIGA スクールサポーター配置支援事業

GIGAスクールサポーターとは、ICT環境整備の設計などを担うICT技術者のことです。
こうしたGIGAスクールサポーターを学校に配置することで、教育のデジタル化を支援を行うのです。

具体的には、4校に1人の割合でGIGAスクールサポーターを配置し、

  • ICT環境整備の補助
  • 使用マニュアルなどの作成
  • 工事、納品対応

などを行います。

また、

  • メンテナンスなどを担当するICT活用教育アドバイザー
  • 外部からのICT支援員

などの人材派遣も検討されています。

参考:教育の情報化に関する外部人材|文部科学省

まとめ

 今回はGIGAスクール構想について解説しました。

 ICT活用を元にしたGIGAスクール構想は、今後の学校教育の基準になっていくと考えられており、早急に環境を整備していくことが求められています。

取り組むべきことはたくさんありますが、子供たちの新しい学びの環境作るという一大プロジェクトの動向に、今後も注目しておきましょう。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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