ASEANとはどのような機関なのでしょうか?
また、どのような目的・経緯で設立され、どのような国が加盟しているのでしょうか
本記事では、ASEANについて以下の4点を解説します。
- ASEANの概要と設立の目的、経緯
- ASEANに加盟している国
- ASEAN共同体の役割
- ASEANと他組織の違い
1、ASEANとは
ASEANとは、Association of South East Asian Nationsの略称です。
日本語では「東南アジア諸国連合」と呼び、東南アジアの10ヵ国(2023年2月現在)が所属する国際機関を指します。
なお、ASEAN事務局はインドネシアのジャカルタに設置されています。
(1)ASEAN設立の目的
1967年に設立されたASEANですが、設立に至った当初の目的は以下の3つです。
- ASEAN加盟国地域内における経済成長、社会・文化的発展の促進
- ASEAN加盟国地域内における政治・経済的安定の確保
- ASEAN加盟国地域内諸問題の解決
一方で、ASEANに加盟する国の視点では「大国の介入を回避すること」や「自国の利害や主張を実現する」ことを目的としています。
(2)ASEAN設立の経緯
ASEAN(東南アジア諸国連合)は、1967年の「バンコク宣言」によって設立されました。
バンコク宣言とは、組織(ASEAN)に加盟している国同士で経済や社会、文化、技術などの分野における課題解決と発展を目指し、協力しようという内容をまとめた宣言です。
この会議にはインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの各国の官僚が出席しました。
なお、会議が行われたのがバンコクだったため、「バンコク宣言」という名称がついています。
ASEAN発足以前は、タイとフィリピンとマラヤ連邦(後のマレーシア)によって結成された「東南アジア連合(ASA)」という組織が1961年から存在していましたが、加盟国間での政治的問題などが原因で、実質的な機能は停止していました。
ところが1966年の第1回南東アジア開発閣僚会議、アジア太平洋協議会等を通じてアジア地域での国家間協力の動きが再び活発化し、東南アジア連合(ASA)所属の3ヵ国(タイ・フィリピン・マラヤ連邦)と、インドネシアとシンガポールを加えた新たな機構設立の気運が高まりバンコク宣言が1967年に宣言されました。
2、ASEANに加盟している国
(1)ASEAN加盟している10カ国
2023年2月現在、ASEANに加盟しているのは以下の10ヵ国です。
- インドネシア(1967年加盟)
- マレーシア(1967年加盟)
- フィリピン(1967年加盟)
- シンガポール(1967年加盟)
- タイ(1967年加盟)
- ブルネイ(1984年加盟)
- ベトナム(1995年加盟)
- ラオス(1997年加盟)
- ミャンマー(1997年加盟)
- カンボジア(1999年加盟)
設立当初から加盟しているのは、インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイの5カ国で、残りの5カ国はそれぞれ順次加盟しました。
(2)日本はASEANに加盟していない
2023年2月現在、日本はASEANに加盟していません。
しかし、1997年からASEAN加盟国に加えて、日本・中国・韓国が参加したASEAN+3首脳会議が毎年行われており、日本も参加しています。
ASEAN+3首脳会議のきっかけは1997年のアジア通貨・経済危機です。
また、日本とASEAN諸国はお互いにとって重要なビジネス・パートナーとも言えます。
日本のASEAN諸国との貿易額は、2021年で24兆円以上にものぼり、日本の貿易総額の約15%を占めています。
3、ASEAN共同体とは
ASEAN共同体は、「ルールに基づく、人間志向で、人間中心の」共同体を目指し、以下の三つの共同体から構成されます。
- 政治安全保障共同体(APSC)
- 経済共同体(AEC)
- 社会文化共同体(ASCC)
ASEAN共同体設立の背景は、ASEAN加盟国内で強固な共同体構築の動きが高まっていったことにあります。
ASEAN設立当初は、強固な結びつきは見受けられませんでした。
しかし、次第に同じアジア圏の中国やインドの成長、WTO体制の停滞、アジア通貨危機などに伴い、強固な結びつきを構築する動きが高まっていきました。
(1)ASEAN経済共同体(AEC)
AECとは、ASEAN Economic Communityの略称です。
東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10カ国をひとつの経済圏とみなし、物品やサービス、投資、熟練労働者、資本の移動などを自由化することで域内の経済発展を目指し、2015年12月31日に発足しました。
域内人口が6億人を抱えるASEAN各国は高い経済成長率を示しており、経済面でも注目されています。
(2)ASEAN政治・安全保障共同体(APSC)
APSCとは、ASEAN Political Security Communityの略称です。
包括的な政治・安全保障協力を強化することにより、紛争予防および紛争の平和的解決、平和構築等を促進し、地域の平和、安定、民主主義及び繁栄を強化することを目的に設立されました。
(3)ASEAN社会・文化共同体(ASCC)
ASCCとは、Asia Smart City Conferenceの略称です。
ASEAN社会・文化共同体(ASCC)は、アジア諸都市、政府機関、国際機関、学術機関及び民間企業等の代表者が一堂に集まり、経済成長と良好な都市環境が両立する持続可能な都市づくりの実現に向けた議論を行う国際会議です。
調和のある人間中心のASEANにおける持続可能な開発のための人、文化、自然資源を育てることを目的に活動を開始しました。
4、ASEANと他組織の違い
(1)ASEANとAPECの違い
ASEANとAPECの主な違いは参加国です。
ASEANへの参加国は発展途上国のみでしたが、APECにはASEAN諸国のような発展途上国だけではなく、アメリカや日本、中国などの先進国、香港のような一地域も加わっています。
貿易自由化を効果あるものにするためには、政治体制の違いや経済格差を越え、密接な経済関係を持つ国々の協力が不可欠だったためだと考えられます。
(2)ASEANとEUの違い
ASEANとEUの主な違いは組織が持つ権利です。
ASEANは国際組織であり、それぞれの国家が独立しており、協力することはあってもお互いの国家に干渉する権利は持ちません。
一方でEUは加盟国が主権の一部をゆだねる超国家的組織です。
超国家的組織は、国家よりも上位に位置づけられます。
ASEANのような国際組織と異なり、超国家的組織であるEUでは、加盟国だけではなく、私人をも直接的に拘束する法令を制定することができます。
5、まとめ
今回は「ASEAN」について解説しました。
ASEANは、域内における経済成長、社会・文化的発展の促進や地域における政治・経済的安定の確保を目的に1967年に発足しました。
日本はASEANに加盟はしていませんが、ASEAN+3首脳会談への参加や貿易の観点でASEAN加盟国とは強い結びつきがあります。
ASEANでは近年、高い経済成長を見せており、世界各国から期待されています。
今後もASEAN加盟国の成長に注目です。