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自由権とは?自由権の基本や2つの訴訟事例などを簡単解説

投稿日2022.10.31
最終更新日2024.02.29

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自由権とは、私たちの行動が国や他の者から理不尽に束縛や介入されないよう守ってくれる権利のことです。

つまり、国に対して「私たちの邪魔はしないで欲しい」というようなことを言えるわけです。しかしこれだけでは、具体的にどのような自由が権利として守られているのか見当がつきませんよね。

そこで今回は、

  • 自由権の概要
  • 具体的な自由
  • 判例

などを取り上げながら、自由権について丁寧に解説します。

本記事がお役に立てば幸いです。

1、自由権とは

自由権とは
自由権とは、国による理不尽な介入や干渉、弾圧もなく、個人が自由に生活できる権利です。

国の強い弾圧に対して起こした18~19世紀のヨーロッパの市民革命によって、この権利が獲得されました。

日本における基本的人権は「自由権」「社会権」「平等権」「参政権」「請求権」に大きく分類でき、どれも国による理不尽な侵害は許されません。なかでも重要なのが「自由権」と「社会権」です。

2つの権利の大きな特徴は、国への求め方が異なっているという点。つまり、積極的に国に保障などを求めるのが社会権で、国から距離を置くやり方が自由権なのです。

社会権とは?4つの権利を判例・学説と共にわかりやすく解説

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さらに自由権は「精神」「人身」「経済活動」の3つの自由に分かれ、とくに「精神の自由」が優位的な権利と言われています。

3つの自由について詳しく見ていきましょう。

2、精神的自由権

自由に物事を考えたり表現したり、活動したりできる権利のことを「精神的自由権」と呼びます。日本では、他人に害を与えないのであれば、基本的にどのような考え方をしていても国が介入して罰する事はできません。

自由が認められるものは、以下のように大きく5つに分類されます。

  • 思想・良心の自由
  • 信教の自由
  • 学問の自由
  • 表現の自由
  • 集会・結社の自由

それでは、条文とともに権利内容を見ていきましょう。

(1)思想・良心の自由

まずは条文からみておきましょう。「思想・良心の自由」は、憲法第19条で守られています。

第十九条

思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

(出典 日本国憲法

19条には、心の中でいかなる思想や人生観をもっていても法律では処罰されないとあります。物事の善悪は自分で判断することができ、その心の中に国家は介入してはならないのです。

たとえば、「いつか世界を俺のモノにしてやる!」など自分勝手なことでも、心の中で考えているだけなら警察に捕まりません。

また、思想の違う政治団体が別の政治団体の思想を批判しても捕まりません。このように、不謹慎なことを考えたり相手を批判したりしても処罰されないのは、19条の存在のおかげなのです。

(2)信教の自由

「信教の自由」は、憲法第20条で守られています。

第二十条
第1項 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
第2項 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
第3項 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
(出典 日本国憲法

第1項では、特定の宗教を信じる、信じないは自分で好きにして良いという内容です。

そして、どの宗教団体も国から特権の享受および政治権力の行使は禁じられています。つまり、日本では政府と宗教は密接に関わってはいけないのです。

このことを「政教分離の原則」と言います。

第2項ではお祈りや儀式など宗教以上の行為に対する強制を、第3項では国の宗教教育や宗教的な活動を禁止しています。

たとえば、公立中学校で祈りの儀式の時間を設けて強制的に参加させた場合は違反行為になります。これも「政教分離の原則」に則っているといえるでしょう。

このように、国と宗教は密な関係性を持たないことが原則ですが、関わりを断つのが難しい場面も少なくありません。そのため実際に裁判例も多く、なかでも有名な判例は「津地鎮祭事件」や「愛媛玉串料訴訟」です。

ちなみに、首相が靖国神社など特定の宗教施設に参拝する行為は、個人的な立場からの参拝ということになっています。

(3)学問の自由

「学問の自由」については、憲法第23条で守られています。

第二十三条

学問の自由は、これを保障する。

(出典 日本国憲法

23条は、国からの干渉を受けずに自由に学問や研究をしてかまわないという内容です。ここには、学問研究や研究発表、教授の自由も含まれています。

イメージ的には、19条「思想・良心の自由」や21条「表現の自由」の学問バージョンですね。

実は世界を見ても、個人の学問の研究や発表、教授に対する自由の保障を憲法で認めている国はそう多くありません。

では、なぜ日本は学問について明文化しているのでしょうか。それは、大日本帝国憲法下の戦前で政府は個人の学問を強く弾圧していたからです。戦前は、学問さえも取り締まりの対象だったのです。

そのため、反省の意を込めて戦後の日本国憲法にあえて明文化されました。

(4)表現の自由

「表現の自由」は、憲法第21条で守られています。

第二十一条

第1項 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

第2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

(出典 日本国憲法

21条では、国に制約や侵害されずに自分の意見や主張を表現できる自由について述べていいます。

この権利のポイントは、個人のみではなく団体にも当てはまるということ。つまり、集会や結社、出版や報道、映画なども表現の自由に含まれます。

「私は、今の日本は○○するべきだと思う!」と自分の考えをブログや本などで公開しても良いわけです。いくら国に都合が悪くても、警察による強制的な取り調べや出版禁止などの検閲措置は認められていません。

表現の自由は、いかなる民主主義にとっても原動力であるといわれるほど重要な権利です。そのため、自由権のなかでもとくに大切であり、手厚く憲法で保護されています。

ですが、いくら自由だからといっても周りの迷惑になる行為は制約されるので注意しましょう。

(5)集会・結社の自由

「集会。結社の自由」も、上記の憲法第21条で守られています。国民がさまざまな意見に接したり交換したりする集会や結社は、大切な場ですよね。

そのため、集会の自由は、民主主義における重要視すべき権利のひとつと考えられています。ちなみに、どちらも集団で活動するものですが、集会は一時的、結社は継続的な団体を指します。

ただし、集会や結社の自由があるからといって、制限が無いというわけではありません。集会することで他の人の人権を害するおそれがあるときには、一定の制約を受けることになります。

例えばデモを行う際には事前に許可を取らなくてはいけません。

3、身体的自由権

「人身の自由」ともいわれる身体的自由権は、「奴隷的拘束の禁止」と「法の適正な手続き」の2つから成り立っています。

それでは条文からみていきましょう。

「身体的自由権」は、憲法第18条と第31条で守られています。

憲法十八条

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

憲法三十一条

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

(出典 日本国憲法

身体的自由権は、正当な理由もなしに逮捕や刑罰などはされないとする権利です。特に31条は刑罰を科す場面を想定したもので、「法の適正な手続き」に則らなければ国民の人身の自由を奪ってはならない、と身体的自由権の基本原則を定めています。

たとえば、現行犯以外では、裁判所の令状がなければ逮捕や家宅捜索はされません。ほかにも、取り調べ中の黙秘権や刑事裁判での被告人の権利である国選弁護人制度。自白の強要、残虐な刑罰の禁止などもこの権利を根拠にしています。

4、経済的自由権

「職業選択」や「住む場所」、金銭や土地などの「財産」への権利のことをまとめて、「経済的自由権」といいます。

住環境の悪化や格差の拡大などの影響から、ほかの自由と比較すると法律で制約される度合いが大きい点が特徴です。

それでは、ひとつずつ確認していきましょう。

(1)職業選択の自由

「職業選択の自由」は、憲法第22条1項が根拠となっています。

第二十二条

第1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

(出典 日本国憲法

22条1項は、国民はどのような職業を選んでいいという「選択の自由」と、実際にその職業で「営業する自由」についての内容です。

このとき注意すべきは「この自由は公共の福祉に服する」という部分です。つまり、経済的自由権はケースによっては規制されうる権利であるというわけです。

ここでいう規制の種類は、大きく分けて2種類あります。

①消極的目的規制

「消極的規制」とは、国民の安全を守るために最小限のことだけを規制するものです。たとえば、弁護士として働きたいなら、司法試験に合格する必要があります。

試験が不合格になることはあっても、国が「あなたは弁護士になってはだめです」と理不尽に介入してくることはありません。この場合、試験が規制にあたります。

このように何の知識もない人が弁護士になることで国民の安全や秩序を脅かされないようにする規制を、消極的規制といいます。

②積極的目的規制

「積極的規制」とは、経済的バランスを確保し、社会的弱者を保護するための規制です。たとえば、電気やガス、鉄道やバス事業の許可制がこれに当たります。

これらの供給は誰がおこなっても構いませんが、価格が高騰すると経済的弱者が困窮してしまいます。国民の利益に関わるため、国が積極的に介入して一定の規制をおこなっているのです。

(2)居住移転の自由

憲法第22条1項では、「居住移転の自由」についても述べています。居住移転の自由とは、どのような場所に住んでも引っ越しても構わないというもの。

この権利には、国内旅行の自由も含まれています。近年、居住移転の自由権は経済的自由権の面だけでなく精神的、人身的な要素も併せもっていると考えられています。

(3)海外渡航の自由

第二十二条

第2項 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

(出典 日本国憲法

憲法第22条2項は、海外への移住や外国籍の取得の人権について書かれています。
「公共の福祉に反しない限り、外国に自由に移住できますよ」という権利です。

この自由には、長期だけでなく短期の海外旅行をする自由も含まれていると考えられています。だから、私たちは海外旅行に行けるのですね。

もっとも海外旅行にはパスポートが必要ですが、一定の場合は外務大臣が発給を拒否する場合がある、と旅券法13条に定められています。

国籍離脱に対する自由についても認めています。なので、国民はいつでも日本国籍を抜けてかまいません。

ただし、無国籍になることまでは認めていないため、離脱後はかならずどこかの国籍を取得する必要があります。また、外国人に関しては、日本に在留する外国人には出国の自由がありますが、再入国の自由については争いがあります。

5、自由権の関わる訴訟事例


最後に、自由権の争われた訴訟事例について紹介します。

(1)津地鎮祭事件

「津地鎮祭事件」は、三重県津市が地鎮祭にて神主に支出した公金が発端になっています。この公金の支出が政教分離の原則に反しているのでは、と津市の議員が訴訟を起こしたのです。

この事件の争点ポイントは、以下の2つです。

  • 政教分離の原則はどこまで厳格に要求しているのか?
  • 違憲と判断する基準はなにか?

最高裁判所は、議員の訴えに対して「慣習的」なものとして合憲と認定しました。政教分離の原則は、国と宗教の関わりをゼロにするのではなく、度が過ぎていなければ合憲とする、と判断したのです。

そして、20条3項にある宗教的活動とは、その目的に宗教的意義があり、宗教への援助や干渉、圧迫などにつながる行為を指すとしました。

このように、20条3項にある「宗教的活動」に当たるかどうかを判断するものを目的効果基準といいます。

(2)東大ポポロ事件

憲法が定める学問の自由に関しては、「東大ポポロ事件」がとくに有名です。

この事件は、1952年に東京大学が公認していた学生団体「ポポロ劇団」の演劇公演中に起きました。冤罪事件だった松川事件を題材にした政治色の濃い演劇の公演中に、観客に交じって公安警察4名が潜入しているのを学生が発見。

学生たちは3名の身柄を拘束して警察手帳を取り上げたうえ、暴行を加えたのです。

争点ポイントは、

  • 「大学の学問の自由・自治はどこまで及ぶのか」

という点です。

最高裁判所は、本件演劇は学問研究とはかかわりのなく、政治的活動であったとして、大学の有する学問の自由と自治には当てはまらないと判断。

警察官の立ち入りは大学の学問の自由と自治を侵すものではないという結論を下しました。
このことから、大学の自治は学問の自由の制度的保障であり、学生の政治的活動には認められないと判断されました。

自由権に関するQ&A

Q1.自由権とは?

自由権とは、国による理不尽な介入や干渉、弾圧もなく、個人が自由に生活できる権利です。
国の強い弾圧に対して起きた18~19世紀のヨーロッパの市民革命によって、この権利が獲得されました。

Q2.自由権に関わる訴訟事例は?

自由権に関する訴訟事件の例として以下の2つが挙げられます。

  • 津地鎮祭事件
  • 東大ポポロ事件

Q3.精神的自由権にはどんなものがある?

精神的自由権が認められるものは、大きく5つに分類されます。

  • 思想・良心の自由
  • 信教の自由
  • 学問の自由
  • 表現の自由
  • 集会・結社の自由

まとめ

自由権は国からの理不尽な介入なく、個人が自由に行動できる権利で、基本的人権のひとつです。戦前の反省を生かして、日本では「思想」「信教」「学問」「表現」「集会」など幅広い分野で権利が守られています。

これらの「自由」を守るのは、私たち自身です。

この記事を通して、自由権について改めて考えるきっかけとなれば幸いです。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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