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副業300万円問題とは?帳簿書類の保存があれば原則事業所得扱いに

投稿日2023.4.7
最終更新日2023.04.27

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ここ最近、「副業300万円問題」について耳にする人が多いのではないでしょうか?

2022年10月に国税庁は「副業300万円問題」の改正案を提出しました。

「確定申告前に、副業300万円問題をおさらいしておきたい」「最近変更があったみたいだけど、最新の正しい情報がわからない」「現在有効な法律が何かわからない」とお悩みの方もいるかと思います。

今回の記事では以下について解説します。

  • 副業300万円問題修正後の法律の内容
  • 副業300万円問題修正に至った理由
  • 帳簿書類の保存をしないことによる4つのデメリット

本記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。

1、帳簿書類の保存で事業所得扱いに|2つの修正内容

国税庁は2022年8月1日、所得税基本通達の改正案を公表しました。

「年収300万円以下の副業は、事業所得ではなく雑所得とする」という内容で、国民から多くの意見が届きました。

事業所得とは、個人事業主やフリーランスが事業を営むことによって得られた所得のことを指します。一方、雑所得とは、公的年金やハンドメイド品の販売などで得た所得のことです。

事業所得は、事業に必要な経費を全て認めることができます。また、事業において損失が発生した場合には、その損失を次の年以降に繰り越すことができます。一方、雑所得においては、経費の認定が限定的であり、税負担が重くなる可能性があります。

そして国民からの意見を受けて2022年10月に「300万円以下の場合は、原則雑所得扱いだった副収入が記帳・帳簿書類の保存があれば、原則事業所得扱いにする」と変更されました。

大きく変更されたのが、事業所得か雑所得かの判定基準です。

判定基準は以下のように変更されました。

  • 「主たる所得」を削除し「社会通念上」で判定
  • 「収入金額300万円」を削除し「帳簿書類の保存」の有無で判定

それぞれ詳しく解説します。

(1)「主たる所得」を削除し「社会通念上」で判定

「社会通念上」の事業かどうかは、下記の3つの特性を持った事業による所得か否かで判断されます。

  • 利益目的であるか
  • 対価を得ているか
  • 継続しているか

それに加えて、下記の4つの条件を総合的に判断して、事業所得か否かを判定します。

  • 企画遂行性はあるか
  • 活動にどれくらい時間や精神を費やしているか
  • 人的、物的設備はあるか
  • 職歴、社会的地位、生活状況

もちろん、社会一般として「この活動は事業である」と考えられる場合は、条件を満たしていなくても事業所得として判定される可能性があります。

(2)「収入金額300万円」を削除し「帳簿書類の保存」の有無で判定

修正後は、帳簿書類の保存があれば副収入が300万円を超えていなくても概ね事業所得と判定されます。

逆に、副収入が300万円を超えていても帳簿書類の保存がなければ、雑所得扱いになる可能性があることに注意が必要です。

収入金額 記帳・帳簿書類の保存あり 記帳・帳簿書類の保存なし
300万円超 概ね事業所得
概ね事業所得
概ね業務にかかる雑所得
300万円以下 業務に係る雑所得

参照:国税庁

なお、帳簿書類の記帳の仕方に関しては、国税庁が以下のページで詳しく解説しています。

帳簿の記帳のしかた|国税庁

2、「副業300万円問題」の修正に至った2つの理由

副業300万円問題の修正に至った理由として、国税庁へ国民から7059件もの意見が寄せられたことが挙げられます。

引用:国税庁

副業300万円問題の修正理由は、主に以下の2つです。

  • 副収入300万円という基準が高い
  • 副業に対する過度の萎縮効果を生じさせる

それぞれ詳しく解説します。

(1)理由1|副収入300万円という基準が高い

そもそも今回の改正目的は、事業所得という所得類型を利用して強引な節税を防ぐことにあります。
副収入300万円の基準を重視することは、強引な節税目的ではない人たちにまで影響を与えてしまいます。

事業立ち上げを行おうとする人たちにとって副収入300万円はハードルが高い基準であるため、修正へ至りました。

(2)理由2|副業を始めづらい環境になってしまう

副収入300万円以下の場合に雑所得扱いになることは、結果的に負担する税金が増えることを意味します。
負担する税金が増えると、企業務めのビジネスパーソンを中心に副業しづらい環境になります。

国として副業を推進しているにもかかわらず、副業による税負担が増すことは整合性が取れません。

副業により所得を増やそうとする人をより後押しできる制度設計にするべく修正することになりました。

3、帳簿書類の保存をしないことによる4つのデメリット

帳簿書類を保存しないことによる、4つのデメリットを解説します。

  • 青色申告
  • 損益通算
  • 損失の繰越控除
  • 少額減価償却資産の特例

(1)青色申告

青色申告とは、確定申告の種類のうちの1つで、事業所得から最大65万円を控除することができる納税制度です。

下記条件でのAさんの所得税額を計算していきましょう。

利益 所得控除額 所得税率
500万円 50万円 20%

以下の3つのパターンでAさんの所得税額を計算します。

①白色申告の場合(青色申告ができない場合)

所得税額=(500ー50)×20%
90万円

②青色申告特別控除額10万円の場合

所得税額=(500-50ー10)×20%
88万円

③青色申告特別控除額最大65万円の場合

所得税額=(500-50-65)×20%
77万円

①と③を比べると、青色申告ができない場合、納税額が13万円多くなることがわかります。

確定申告について知りたい方は以下の記事もご覧ください。

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(2)損益通算

損益通算とは、同じ一年で発生した利益と損失を相殺できる制度です。

下記条件でのAさんの所得税額を計算していきましょう。

給与所得 副業所得 所得控除額 所得税率
600万円 赤字200万円 50万円 20%

損益通算ができる場合とできない場合で所得税額を計算していきます。

①損益通算ができる場合

所得税額=(600ー200-50)×20%
70万円

②損益通算ができない場合

所得税額=(600-50)×20%
110万円

損益通算ができない場合、できる場合に比べて、所得税額が40万円多くなることがわかります。

(3)損失の繰越控除

損失の繰越控除とは、損益通算後に赤字が残る場合は、その赤字分を3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺できる制度です。

下記条件でのAさんの翌年の所得税額を計算していきましょう。

昨年の
給与所得
昨年の
副業所得
今年の
給与所得
今年の
副業所得
所得控除額 所得税率
400万円 赤字500万円 500万円 0万円 50万円 20%

損失の繰越控除ができる場合とできない場合で翌年の所得税額を計算していきます。

昨年の所得総額=400ー500
=ー100万円

①損失の繰越控除ができる場合

今年の所得税額=(500ー50ー昨年所得総額100)×20%
70万円

②損失の繰越控除ができない場合

今年の所得税額=(500ー50)×20%
90万円

損失の繰越控除ができない場合、できる場合に比べて所得税額が20万円多くなることがわかります。

(4)少額減価償却資産の特例

少額減価償却資産の特例とは、30万円未満の固定資産であれば一括で経費計上することができる制度です。

少額減価償却資産の特例が使えない場合は、通常の減価償却方法が取られます。

下記条件のパソコンを購入した場合の経費を以下の2パターンで計算していきましょう。

金額 耐用年数
15万円 5

①少額減価償却資産の特例が使える場合

今年の経費は、一括で経費計上できるため15万円

②少額減価償却資産の特例が使えない場合

今年の経費=15÷
3万円

少額減価償却資産の特例を使えない場合、使える場合に比べて12万円が経費として計上できません。
12万円という金額も課税所得の対象となるため、所得税が多くなることがわかります。

まとめ

今回は「副業300万円問題」について解説しました。

2022年10月に公表された所得税基本通達の改正案では、副収入による所得であっても記帳・帳簿書類の保存があれば、原則事業所得扱いになるよう変更されました。

事業所得として認められる基準として定められたのは以下の2点です。もう一度おさらいしておきましょう。

  • 「主たる所得」を削除し「社会通念上」で判定
  • 「収入金額300万円」を削除し「帳簿書類の保存」の有無で判定
この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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