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為替介入(外国為替平衡操作)とは?仕組みと効果、日銀の役割を解説

投稿日2023.4.8
最終更新日2023.04.27

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2022年10月21日のニューヨーク外国為替市場では、1ドル=151円90銭台まで下落しましたが、同日1ドル=146円台まで5円以上の急速な円高ドル安が進みました。

このような急激な為替の値動きは、為替介入による影響が大きいと考えられます。

為替の値動きは石油の値段や株価にも関わるため、結果的に私たちの生活にも影響します。

そこで今回は、為替の値動きに大きな影響を与える為替介入について、以下の内容を解説します。

  • 為替介入の目的・仕組み・日銀の役割
  • 為替介入の効果
  • 為替介入はいつ起きやすいか
  • 過去の為替介入の事例

本記事がお役に立てば幸いです。

1、為替介入とは?目的、仕組みと日銀の役割

(1)為替介入(外国為替平衡操作)の概要と行う目的

為替介入とは、為替の値動きを調整するために、通貨当局が人為的に通貨間の売買を行う一連の流れを指します。

為替介入を行う主な目的は、為替相場の急激な変動を抑え、その安定化を図ることです。

為替変動により、通貨の価値は変化します。
通貨の価値が短期間に大きく変化すると、経済活動が不安定になる可能性があります。

日本のように、貿易が盛んな国の場合、為替変動の影響が経済状況に表れやすいです。

円安ドル高が強まると輸入品の物価は上昇し、個人の負担は増え、人々の消費活動が抑えられます。

収入の底上げがない状態での急激な円安は、個人をひっ迫し、個人消費の停滞につながります。
消費活動の停滞に伴い、企業の利益は減り、結果的に景気が悪くなる恐れがあるため、通貨の価値を安定させることを目的とした為替介入は重要です。

(2)為替介入(外国為替平衡操作)の仕組み

為替介入は買われている通貨を売り、売られている通貨を買うという仕組みで行われています。
通貨の売買は双方向で行われています。

  • 円を売ってドルを買う流れ
  • ドルを売って円を買う流れ

売買が双方向にバランスよく行われている時は、大きな為替変動は起きにくいです。

しかし、バランスが崩れて一方の通貨は売られ、もう一方は買われるだけの状況になると様子が一変します。
売られている通貨の価値は大きく下がり、買われている通貨の価値は大きく上がります。

為替介入の目的は為替相場の急激な変動を抑え、その安定化を図ることです。
円高・円安という為替相場の変動を抑えるには、市場の動きと逆の売買を行うことが必要です。

円高の場合
→円を売ってドルを買う

円安の場合
→ドルを売って円を買う

(3)為替介入(外国為替平衡操作)は日銀が行う

日本で為替介入を実施しているのは、通貨当局である日銀(日本銀行)です。

ただし、日銀が単独の判断で為替介入を行なっているわけではなく、財務省による指示を基に為替介入を実施しています。

また、介入に必要な資金は財務省所管の「外国為替資金特別会計」(外為特会)からすべて拠出されます。

(4)為替介入(外国為替平衡操作)のメリット・デメリット

為替介入のメリットとしては、急激な円安・円高を抑制する効果が期待できます。これにより、企業の海外取引や海外投資家の投資判断に影響を与える外国為替市場の不安定要因を取り除くことができます。

デメリットとしては、一時的に急激な円安・円高が是正されても、為替介入の効果は長続きしない可能性があるということです。また、為替介入には財務省の資金が必要で、何度も行うことが難しいということが挙げられます。

2、為替介入の効果

為替介入の効果は、それまでの為替変動の傾向が一時的に抑えられることです。

円安時、円高時の2つのケースに分けて、為替介入の効果を確認しましょう。

(1)円安が続く場合に為替介入を行った時の効果

円安が続くタイミングで為替介入を行った場合、円安の値動きは抑制され、一時的に円高の値動きになります。

円安が続く状況で行う為替介入では、日銀が所持しているドルを売り、円を買います。

(2)円高が続く場合に為替介入を行った時の効果

円高が続くタイミングで為替介入を行った場合、円高の値動きは抑制され、一時的に円安の値動きになります。

円高が続く状況で行う為替介入では、日銀が所持している円を売り、ドルを買います。

3、為替介入はいつ起きやすい?

為替介入は、急激な為替変動が発生し、経済が不安定になる恐れがあると判断されたタイミングに実施される可能性が高いと言えます。

急激な円安や円高は、個人消費の抑制や企業の業績悪化などにつながります。
そのような経済の不安定化を避けることが為替介入の目的です。

私たちの実生活に関わる例を挙げて説明します。

日本では、牧場で用いる牛の餌の多くを輸入に頼っていますが、昨今のウクライナ情勢や円安の影響により、牛の餌にかかる費用が高騰しました。

その結果、2022年11月には明治や森永乳業などの乳製品メーカーが販売する牛乳やヨーグルトの値上げが行われ、個人の消費の停滞や企業の収益減少が危惧されています。

このように、為替の値動きによる影響は、企業の経営だけでなく、一般消費者の生活にも及ぶと考えられます。

似たような事態が続き、経済の不安定化につながる恐れがある場合、為替介入が実施されます。

4、過去の為替介入の事例

為替介入は過去に何度も行われています。

また、ユーロに対しても為替介入を行っており、為替介入は円・米ドル間に限って行われる措置ではありません。

特に規模の大きかった為替介入を3つ紹介します。

(1)2003年〜2004年の為替介入ー長期的な為替介入

2003年1月から始まったドル買い・円売りの為替介入は2004年3月まで続き、1年以上の長期的な為替介入が行われました。

この時、為替介入を実施した理由として考えられている要素は以下の2つです。

①アメリカの政策金利引き下げに伴う円高の値動き
②長期的な株価低迷(日経平均株価が2003年3月から4月にかけて8000円を割り込む)

2つの状況を踏まえ、日銀は2003年初めから日銀は頻繁に円を売り、ドルを買いました。

結果的に、為替相場は2005年に1ドル120円まで円安になりました。
また、日経平均株価は2004年3月に11,500円まで上昇し、為替介入による一定の効果が見られたと言えます。

(2)2010年〜2011年の為替介入ー東日本大震災も関連

2010年から2011年に行われたドル買い・円売りの為替介入は日銀による介入だけではなく、G7による協調介入が行われました。

協調介入とは、為替相場の急激な変動を抑えるために、2カ国以上の通貨当局が合意のうえ、それぞれの市場で為替介入を行うことを指します。
通貨当局とは、通貨政策を担当する政府部局あるいは中央銀行を指し、日本では財務省、金融庁、日銀(日本銀行)が該当します。

この時、為替介入を実施した理由として考えられている背景は以下の3つです。

①アメリカの金融緩和による円高の動き
②東日本大震災の被災者に支払う保険金を準備するために保険会社が行なったドル売り円買いの動き
③ギリシャの財政赤字悪化と南欧諸国の国債利回り上昇による円買いの動き

G7による協調介入の影響もあり、1ドル79円前半で取引されていた為替相場は、1ドル81円にまで上昇しました。

しかし、その後再び円高が強まり、2011年10月31日には1ドル75円台を記録します。
この時、日本は単独での為替介入を実施し、当時の1日の介入額としては過去最大の8兆円を投じました。

(3)2022年10月の為替介入ー過去最大規模の為替介入

財務省は2022年9月29日~10月27日の1ヶ月で、円安抑制のために総額6兆3499億円の為替介入を実施したと公表しました。この金額は、記録を開示する1991年度以降で、1ヶ月の円買い介入としては過去最大規模となります。

また2023年2月に介入実績が公表され、10月21日と10月​​24日に覆面介入が行われたことがわかりました。10月21日に介入した5兆6202億円は、1日あたりの円買い介入で過去最大です。

引用:朝日新聞
引用:日本経済新聞

5、まとめ

今回は「為替介入」について解説しました。

為替介入とは、通貨当局が外国為替市場で通貨間の売買を行うことを指します。
為替介入の目的は、為替相場の急激な変動を抑え、その安定化を図ることです。

円安や円高と言った為替変動は、私たちの実生活に大きく関わります。
今後の為替の変動についても注目です。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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