セーフティネット保証とは、経営不振にある中小企業が、一般補償とは別に融資をお願いする保証制度です。
2020年からの新型コロナウイルスによって、打撃を受けた中小企業に向けて、経済産業省が打ち出した支援策の1つです。
今回の記事では
- セーフティネット保証の概要
- セーフティネット保証を利用するメリット
- セーフティネット貸付との違い
などについて分かりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、セーフティネット保証とは
「セーフティネット保証」とは、経営困難にある中小企業・小規模事業者を対象に、通常の融資額(一般枠)とは別に、融資を行う制度です。
災害やその他の緊急時における、経営回復を支援する目的で設けられました。
セーフティネット保証を利用することで、中小企業は最大2億8000万円の融資を受けることができます。
ちなみに中小企業者の資金繰りをサポートする融資制度のため、大企業は対象外となります。
ここでは
- セーフティネットという言葉の意味
- 信用保証協会について
- 8つのセーフティネット保証
について、解説していきます。
(1)セーフティネットという言葉の意味
セーフティネットとは「危険を回避するための網」という意味です。
抜けの無い網の目によって、多くの事業者に安全・安心な保証を提供することを目指し、その名がつきました。
セーフティネットの考え方は「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある」という日本国憲法第25条の理念に通じるところもあります。
(2)信用保証協会について
信用保証協会とは、公的な保証人として、中小企業・小規模事業者の資金調達を、スムーズに支援することを目的として設立された協会です。
47都道府県と4市(横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市)を合わせて、約51の協会があります。
中小企業などが金融機関に融資を申し込む際、返済における信用度の低さから、なかなか資金調達が上手くいかないという場合は少なくありません。
しかし、公的な保証人である信用保証協会が債務を保証することで、高額の融資でもスムーズに受けることが可能になるのです。
また、
- 長い返済期間の設定
- 低金利の相談
などもできるため、返済にかかる負担を抑えることもできます。
信用保証協会を利用して融資を受ける特例保証制度が、セーフティネット保証なのです。
参考:全国信用保証協会連合会
(3)8つのセーフティネット保証
セーフティネット保証は、1号から8号までの全部で8つの保証が設けられています。
それぞれ対象となる中小企業の要件は、以下のように定められています。
- 1号 大型倒産の発生によって影響を受けた中小企業
- 2号 取引先企業のリストラ等の事業活動の影響を受けた中小企業
- 3号 事故など突発的災害によって影響を受けた中小企業
- 4号 自然災害などの突発的災害によって影響を受けた中小企業
- 5号 全国的に業況が悪化している業種
- 6号 取引金融機関の破綻によって資金繰りが悪化した中小企業
- 7号 金融機関の合理化によって借り入れが減少した中小企業
- 8号 金融機関の整理回収機構に貸付債権が譲渡された再生可能な中小企業
セーフティネット保証は、基本的に
- 中小企業、小規模事業
- 金融機関
- 信用保証協会
の三者が以下の図のように、相互に関係しています。
画像出典:全国信用保証協会連合会
保証期間は、10年以内となっています。
また信用保証料率は
- 1~4号、6号:1.0%
- 5号、7号、8号:0.85%
です。
2、セーフティネット保証を利用するメリット
セーフティネット保証の利用には、主に以下2つのメリットがあります。
- 代位弁済の保証がある
- 別枠で追加融資を申し込める
それぞれについて見ていきましょう。
(1)代位弁済の保証がある
代位弁済とは、融資の返済が難しい場合、信用保証協会が代わりに残債を返済してくれるシステムのことです。
セーフティネット保証では、この代位弁済が保証されています。
もちろん、「信用保証協会が借金を肩代わりしてくれる」という訳ではありません。
一時的に信用保証協会が代わりに返済をしているという形なので、借りた分は信用保証協会に返済する必要があります。
(2)別枠で追加融資を申し込める
一般的に、1つの融資について返済をしている間は、別の融資審査が通りにくい傾向にあります。
しかし、セーフティネット保証であれば、別枠として融資を受けられるので、返済中でも融資を受けやすいのです。
信用保証協会が公的な立場の保証人となってくれるため、「セーフネット保証枠」として追加融資を受けることができます。
3、セーフティネット保証4号・5号について
セーフティネット保証4号・5号とは、2020年からの新型コロナウイルスの影響で売上が減少した、もしくは減少が予想される事業者を対象としたセーフティネット保証のことです。
保証額は、最大2.8億円まで利用することができます。
ここからは、セーフティネット保証4号・5号についての知っておきたいポイント(2021年3月時点)についてみていきましょう。
(1)セーフティネット保証4号
セーフティネット保証4号とは、突発的な自然災害によって、経営困難な状態にある中小企業を支援するための保証です。
以下の「認定基準」をクリアした中小企業を対象とし、一般枠とは異なる融資を行います。
- 特定の地域で1年間以上継続して事業をしていること
- 原則最近1か月の売上高が、前年同月比20%以上減少していること
- その後2か月間を含む3か月間で同様の売上減が見込まれること
通常は台風や地震などの災害が発生した場合に、被災地域を対象として発動されるものです。
直近では、
- 2016年の熊本地震
- 2017年の大雨災害
- 2018年の霧島山における火山活動
の発生に伴い発動されました。
2020年からの新型コロナウイルスでは、全国的に影響が出ているため、47都道府県すべてが対象地域となりました。
さらに、創業1年未満の事業者も対象となっています。
またセーフティネット保証4号では、通常の保証限度額とは別に、信用保証協会が借入債務を100%保証します。
参考:セーフティネット保証4号の概要|中小企業庁
参考:セーフティネット保証制度(4号:突発的災害(自然災害等))|中小企業庁
(2)セーフティネット保証5号
セーフティネット保証5号とは、様々な事態によって経営状況が悪化している、指定業種の中小企業を支援するための保証です。
以下の「認定基準」をクリアした中小企業を対象とし、本店所在地の市区町村からの認定を受けることで、一般枠とは異なる融資を受けることができます。
- 最近3ヶ月の売上高等が前年同月比5%以上減少していること
- 製品と原価の家20%以上を占める原油等の仕入価格が20%上昇しているが、製品と価格に転嫁できていないこと
セーフティ保証5号では、信用保証協会による保証割合は80%です。
また、指定業種は状況によって、追加されることがあります。
2021年3月時点では、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、以下のような業種が保証対象に追加されました。
- 旅館やホテル
- 食堂やレストラン
- フィットネス
- 理容・美容業
参考:セーフティネット保証制度(5号:業況の悪化している業種)|中小企業庁
参考:新型コロナウイルス感染症に係る中小企業者対策を講じます|中小企業庁
4、セーフティネット貸付との違い
セーフティネット貸付とは、日本政策金融公庫による公的な貸付制度のことです。
正式には「経営環境対応資金」と呼ばれます。
ビジネスプランはあるが、外的要因により経営状況が厳しい中小企業・小規模事業者を対象とし、経営基盤の強化を支援することを目的としています。
具体的な融資制度は以下の3種類です。
- 経営環境変化対応資金
- 金融環境変化対応資金
- 取引企業倒産対応資金
経営環境変化対応資金は、2020年2月14日に、新型コロナウイルスの影響によって利用条件の緩和が行われました。
くわしい情報は、窓口や支店にてお問い合わせください。
参考:経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)|日本政策金融公庫
参考:新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ|経済産業省
まとめ
今回は、セーフティネット保証について解説しました。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、経営が不安定になることは、経営者にとって非常に心苦しい状態です。
特に資金繰りで悩んでいる際には、セーフティネット制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。