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日本ユニセフ協会とは?仕事内容や課題について簡単解説

投稿日2021.3.21
最終更新日2021.03.21

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日本ユニセフ協会とは、国連児童基金(UNICEF)と協力関係を結ぶ団体のことで、33の国と地域に設置されているユニセフ協会の中のひとつです。

1965年にノーベル平和賞を受賞し、途上国の子どもを支援するイメージのある「ユニセフ」ですが、日本ユニセフ協会はどのような活動を行っているのでしょうか?

今回は

  • 日本ユニセフ協会の概要と活動
  • 近年子どもの被害が深刻化しているサイバーポルノへの対策

についてご紹介したいと思います。

1、日本ユニセフ協会とは


日本ユニセフ協会は東京に本部を置き、公益財団法人として活動を行っています。

“ユニセフ=途上国の子ども支援”のイメージが強いものの、ユニセフと日本ユニセフ協会は子どもの保護やジェンダーの問題など、貧困以外の分野でも幅広く活動しています。

まずは、日本ユニセフ協会の母体であるユニセフ(国連児童基金)の歴史と活動を紹介し、日本ユニセフ協会の目的についても解説していきたいと思います。

(1)ユニセフとは

ユニセフの正式名は「United Nations Children’s Fund(国連児童基金)」ですが、これらの頭文字を取ってもUNICEFにはなりません。

これはユニセフが戦後1946年に設置された国連国際児童緊急基金の後継組織として設立された名残であり、国連国際児童緊急基金(United Nations International Children’s Emergency Fund)の頭文字が現在も使用されているのです。

国連児童基金として名称を変更したのは1953年で、戦災児から途上国の子どもたち、そして世界中の子どもたちへ支援対象を広げています。

参考:日本ユニセフ協会

(2)ユニセフの活動分野

ユニセフの活動対象は世界中の子どもたちであり、先進国と途上国を問わず、約190の国と地域で活動し、ユニセフの活動分野は大きく以下の9つに分けられます。

  • 保健:乳幼児の予防接種の普及、栄養改善、衛生的環境の確保
  • HIV、エイズ:母子感染の予防、青少年に対する治療と予防
  • 水と衛生:給水設備の整備、トイレの設置、衛生習慣の普及
  • 栄養:栄養不良の子どものケア
  • 教育:質の高い教育の提供、通学支援
  • 子どもの保護:児童労働、人身売買、孤児院支援、虐待の防止
  • インクルージョン(誰もが受け入れられる社会):障がい児への支援、差別の撤廃
  • ジェンダーの平等:女性と女児の不平等の撤廃
  • 緊急支援、人道支援:紛争地帯、被災地の子どもへの緊急的な支援

(3)日本ユニセフ協会の概要と目的

日本ユニセフ協会はユニセフ本部と承認協定、協力協定を結び、ユニセフの事業に必要な資金と支援者を、

  • 募金
  • 広報
  • アドボカシー活動

を通じて集めています。

日本にはユニセフ東京事務所と日本ユニセフ協会の2つの団体がありますが、ユニセフ東京事務所は政府機関の窓口を、日本ユニセフ協会は民間(個人、団体、企業等)の窓口を担っています。

ユニセフ本部が現場実務だとすると、ユニセフ東京事務所は国からの連携や支援を獲得する部署であり、日本ユニセフ協会は運営に必要な資金を集めるための広報や、募金を管理する経理のような役割を持っています。

(4)変遷

日本に初めてユニセフ支部ができたのは戦後1949年でした。
ユニセフ駐日支部は占領軍司令部内に設置されました。

その後、駐日支部の活動が多忙を極め、1950年に任意団体として日本ユニセフ協会が設立されます。

同協会は1995年に財団法人に、2011年に公益社団法人へ移行しました。

この歴史の歩みは、現在の日本ユニセフ協会とユニセフ東京事務所の関係にも表れていて、日本ユニセフ協会で働くスタッフは団体職員になりますが、ユニセフ東京事務所で働くスタッフは国際公務員となります。

(5)活動資金

ユニセフの活動は募金と各国の拠出金によって運営され、国連からの財政的な支援はないため、民間からの募金が重要な財源となります。

民間からの募金を集めるために作られた団体がユニセフ協会であり、ユニセフ協会に募金した75%以上が本部に拠出され、残りの25%はユニセフ協会の支援者拡大事業に使われています。

この25%は許容される最大値であって、各国のユニセフ協会の運営によって変動するため、2019年度の日本ユニセフ協会の事業費を見ると募金の81%が本部に拠出されていることがわかります。

(6)組織図

ユニセフの本部はアメリカのニューヨークにありますが、ユニセフの駐日支部である東京事務所と日本ユニセフ協会は日本にあります。

ユニセフとユニセフ協会の組織図を見てみましょう。

ユニセフ協会組織図

画像出典:ユニセフとユニセフ協会 ユニセフ

東京事務所を含めるユニセフとユニセフ協会は協力協定を結び、ユニセフ協会で集められた募金はユニセフ本部に送られます。

本部に送られた募金は現地のユニセフ事務所に送られ、子どものワクチン接種や保護などの支援事業に使われているのです。

2、日本ユニセフ協会の主な活動

日本ユニセフ協会ではユニセフ本部と定期的な会議を通して合同計画書を作成し、その計画書に基づいて活動を行っています。

日本ユニセフ協会の3つの活動を見てみましょう。

(1)募金活動

国連からの財政的な支援がないユニセフの運営に募金は欠かせません。

日本ユニセフ協会は

  • 毎月自動で寄付ができる、ユニセフ・マンスリーサポート・プログラム
  • 緊急募金を募るダイレクトメールの送付
  • インターネット募金
  • 遺産寄付プログラム
  • 外国コイン募金
  • 参加費を募金できる「ユニセフ・ラブウォーク」

などを通して支援者を募っています。

(2)広報活動

より多くの寄付金を集めるためには広報活動も重要です。
日本ユニセフ協会では、より多くの人に子どもたちの現状を知ってもらうために、

  • 報道機関への情報提供
  • 機関誌「ユニセフ・ニュース」の出版
  • SNSの発信
  • 公共CM

などの広報活動を行っています。
また、学校と連携した普及活動にも力を入れ、

  • 学校への講師の派遣
  • 子どもの課題に焦点を絞ったSDGs(持続可能な開発目標)の教材の配布など

子どもたち自身にユニセフが扱っている問題を知ってもらう活動も行います。

(3)アドボカシー活動

アドボカシー活動とは、「弱者の言葉を代弁する」活動を指し、日本ユニセフ協会では「子どもの権利条約」に定められている子どもの権利の実現を目指して、政府、企業、市民に児童問題解決の呼び掛けを行っています。

1990年代には日本ユニセフ協会が「子どもの権利条約」の批准を日本政府に求めるキャンペーンを実施し、1994年に日本は条約に批准することとなりました。

現在は、2030年に向けた持続可能な開発目標(SDGs)のうち、子ども関連の6つの課題に対する日本政府への要望書の提出などのアドボカシー活動を行っています。

「子どもの権利条約」について詳しく知りたい方は以下をご参照ください。

参考:子供の権利条約

(4)復興活動

ユニセフと日本ユニセフ協会の活動対象は途上国だけではなく先進国である日本も含まれます。

2011年の東日本大震災発生時、ユニセフと日本ユニセフ協会は被災地に対して支援活動を実施し飲料水、子ども用衣服や防犯ブザー、レクリエーションキットなどの緊急支援物資の提供をしました。

その後、

  • 復学のための環境整備
  • 母子への子育て支援
  • 被災児への心理的ケア

など、母親と子どもが安全に暮らせる環境の復興にも力を注いでいます。

3、サイバーポルノという課題への取り組み


情報化社会となり、子どもたちへのインターネットの普及とともに「サイバーポルノ」が深刻な問題になっています。

ユニセフでは犯罪の温床となっている児童ポルノサイトの根絶に向けて、各国でポルノを取り締まる法の整備を行ったり、被害を受けた子どもたちの心理ケアを行っています。

(1)世界での対策

サイバーポルノとは「インターネット上に児童の性的虐待の画像を掲載し、ばら撒くこと」で、200万人以上の子どもが買春やポルノの被害に巻き込まれています。

これらの画像を掲載するサイトは年々増加し、2006年までに34万サイトとなっています。

世界では児童ポルノに対する法整備、罰則の規定、発見時の報告を義務付けている国もあり、1980年代後半にはアメリカやイギリスなどの先進諸国で児童ポルノを所持しているだけでも処罰の対象になりました。

市場は30億ドル規模ともいわれ、所持を禁じることで需要を減らしています。

(2)日本での対策

児童ポルノの消費国には日本も含まれており、日本では1999年に児童買春・児童ポルノ禁止法が制定されました。

その後、インターネットを使った悪質なサイバーポルノに対応するために2004年に同法は改正され、罰則が厳しくなりました。

さらにその後2014年に児童ポルノの「単純所持」は法改正によって処罰対象となりました。
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持・保管していた場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があるのです。

単純所持とは、ダウンロードしてパソコン内に保存したり、児童から送られてきたものを保存するなどのことをさし、その場合「所持」に該当するとして処罰される可能性があります。

参考:児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律

このように児童ポルノに関しては罰則や取り締まりが厳しくなってはいますが、まだまだ児童ポルノは減っていません。

以下の資料を見るとわかるように児童ポルノの被害児童数自体は増加しています。

参考:児童ポルノ件数

そこで日本ユニセフ協会は「なくそう!子どもポルノキャンペーン」と称して、日本で単純所持の禁止を含めた法改正を求める署名の提出やアドボカシー活動などを行っています。

まとめ

今回は「日本ユニセフ協会」について解説しました。
ユニセフという名前は聞いたことがあるものの、日本ユニセフ協会の活動は知らなかった人も多かったかもしれません。

サイバーポルノに挙げられるように子どもたちの平和は大人たちのアクションによって守ることができます。

募金だけではなくユニセフ協会を通じて世界の子どもたちの現状を知り、次世代の未来のための行動を実践していきましょう。

 

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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