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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー自由民主党・平将明議員に聞く! ~デジタル政策の未来と日本の成長戦略~【後編】

自由民主党・平将明議員に聞く! ~デジタル政策の未来と日本の成長戦略~【後編】

投稿日2024.7.16
最終更新日2024.07.18

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バブル崩壊後、経済の低成長が続き「失われた30年」を過ごした日本。今後、少子高齢化に伴う生産年齢人口の急激な減少が予想される中、デジタル化による生産性向上が不可欠です。

今回のインタビューでは、自由民主党・デジタル社会推進本部での活動をはじめ、テクノロジー政策に関する多数の提言を中心的にとりまとめている平将明議員に、これからのデジタル政策と、人口減少に直面するなかでの日本の成長戦略、また政治家を志したきっかけなどについてお伺いしました。

(文責:株式会社PoliPoli 中井澤卓哉)(取材日:2024年6月17日)

<インタビュー前編はこちら

平将明議員インタビュー

デジタル政策の司令塔への道のり

ー平議員は「デジタル政策の司令塔」としての評価が高いです。そもそもデジタル政策に取り組んでいこうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

振り返ってみると、政治家になりたてのころからデジタルのことを意識していたように思います。東京青年会議所で活動していた時は、2000年当時からみんなノートPCをもち、ペーパーレスでやってました。自民党の公募に応募した時も、ワープロで書こうと思って申込書をダウンロードしたら、ボールペンで手書きしかできないということで、「なるほど政治の世界はまだまだアナログなんだな」と思いました。一番アナログな世界で、いろいろなデジタル化にチャレンジしたらできることがたくさんあるんじゃないかと、そんな問題意識をその当時から持っていました。

ーその後、国会議員としてデジタル政策に本格的に携わったのはいつ頃からでしょうか?

デジタルの取組みを加速させたのは、2019年からで、特に防災関係とコロナ関連の取り組みでした。コロナ禍の直前、2019年9月の組閣でデジタル担当(当時は“IT担当”と呼称)の副大臣と防災担当の副大臣を兼務していました。その年は台風15号、19号が来て、千葉で電気が何週間も復旧しないなどの被害がありました。そこで、デジタル化を進めている中で、例えば停電などが起こった場合にどうするのか、を考えないといけないことに気がつきました。停電すると携帯電話の基地局が半日後に停止して、そうするとその地域の通信が途絶するんです。そこで、電力の強靱化と通信の強靱化に取り組むべきだという話がでてきます。

もう1つ災害時に重要なのは、情報収集と集約を災害支援につなげることです。基盤的防災情報流通ネットワーク(Shared Information Platform for Disaster Management:通称「SIP4D」)という、地図上に通信や電気、水道などの被害に関する情報を重ねて表示させ、意思決定に活用する災害対応システムの充実に取り組みました。このシステムを使えば、どこが孤立しているかなどがわかるので、その情報を活用して自衛隊のヘリをどこに下ろすかなどの意思決定に活用できます。私は防災担当、そしてデジタル担当の副大臣として、国土交通省とデジタル関係の人の橋渡し役も担いました。

ー災害時やコロナ禍では、デジタル活用が非常に重要と見受けます。

その通りです。COVID-19(コロナ)は感染症なので、従来の発想だと厚労省の仕事だとなりますが、昔の感染症と比較して特徴的なのは、現代ではみんながスマホを持っているという点です。コロナ対策の特命担当大臣だった西村大臣と私で、デジタルを活用して何かコロナ対策ができないか議論するワーキングチームを作りました。その際に、さまざまな課題を目の当たりにしました。

まずはマイナンバーカードです。台湾では、オードリー・タンさんが主導して、各薬局のマスクの在庫数と自分が受給可能なマスク数を国民に知らせるアプリを作りました。これは、台湾の保険証にICチップが入っているから可能であったことで、当時マイナンバーカードの普及率が10%台だった日本ではできなかったのです。これがきっかけで、緊急時の対応や危機管理という観点で、マイナンバーカードの普及が必要だと感じました。

2つ目は、多重行政の弊害です。コロナの流行初期、陽性患者の数を厚労省がリアルタイムに把握できない問題がありました。この問題を紐解いていくと、病院で陽性者が確認されると、まずその情報は保健所(市、区、都道府県支所)に行きます。保健所で各病院からの情報を集約しFAXで都道府県に送ります。そしてさらに都道府県で各保健所からの情報を集約しFAXで厚労省に送る、という3層構造だったわけです。

このやり方だと、リアルタイムに情報収集ができないどころか、ミスが増えます。そこで、政府は「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」というクラウドを導入し、各保健所がクラウドに陽性者の情報を上げてくれれば、リアルタイムに陽性者の情報が把握できる仕組みを構築しました。

ー危機対応という側面以外で見えていた課題はありましたか?

デジタル化を推進していく上では、政府のリソースのみでは対応できないことがほとんどです。その点で官民連携が非常に重要ですが、当時は個人情報保護条例が各地方自治体でバラバラでした。例えば、避難所に民間のIT事業者がシステムを入れようとしても、その自治体の人だけが使うサービスであれば問題ありませんが、他の自治体の人が1人でも入ってしまうと、微妙に規則が違うのでそのシステムを使えない、といったことが生じてきます。これらの個人情報保護条例の国内標準化を推進しました。

最後に、マイナンバーカードやクラウドなど、先ほど言った課題を受けて、デジタル政策の司令塔になるデジタル・ガバメント庁が必要だろうということでデジタルの副大臣の時に、当時の菅官房長官に提案を持っていきました。

今後、首都直下型地震や南海トラフ、富士山の噴火、また気候変動、巨大化する台風などさまざまな危機が想定される中、デジタルでできることはデジタルで推進していく必要があると思っています。

平将明議員インタビュー

日本のデジタル政策の未来と成長戦略

ーデジタル政策はコロナ禍が1つ大きな転換点だったように思います。コロナ禍前後でデジタル政策を取り巻く環境の変化はどのようなものがあったのでしょうか?

1つは、政策立案のDXが進んだことです。対面で会って話ができない時間が続いた中で、ネット上で議論することが当たり前になりました。何か課題があれば、その分野の最前線を走っている人等がサイバー空間に集まって議論する、このような習慣が当たり前になったことで、政策立案のスピードが非常に上がりました。

もう1つは、ちょうどコロナ禍前後でAIやブロックチェーン、web3.0などが急速に発展し、社会実装されて行ったタイミングと重なったことです。そういった流れを受けて、自民党のデジタル社会推進本部に、「web3 PT」を2022年に、「AIの進化と実装に関するPT」を2023年に立ち上げ、議論の受け皿となる場を作ってきました。これにより、日本のみならず世界中から、この分野の専門家が対面-オンライン問わず集い議論するようになり、世界を先取りするような提言や政策実現をすることができています。

ー平議員が日本のデジタル政策において今後重要と考えることはなんでしょうか?

各個別の分野でいうと、生成AI、web3.0は今後も非常に重要です。生成AIやLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)については、2つの視点が重要と考えています。1つは分野特化型生成AIで勝ち筋を見つけることで、いま世の中で使われているようなChat-GPTなどの汎用的なものではなく、医療など特定の分野に特化した生成AIで勝っていくこと。もう1つは、ロボティクス・メカトロニクスなど従来から日本が強い分野で生成AIを活用していくことです。センサーやIoT端末から上がってくるデータをもとに、基盤モデルを構築する方向性に可能性があると考えています。そのためには、企業からのデータ提供など官民で推進していかないといけない「協調領域」はしっかりと戦略として連携しつつ、然るべき「競争領域」も残していくことが必要です。

生成AIの領域は、すでにOpenAIとGoogleが頭抜けており、これから日本企業が追いつくことはほぼ難しいと思っています。かといって何でもかんでも外資系企業のAIにデータを読ませればいいという話でもない。例えば分野特化型のAIは国産を育てようなどといった話もありうるかもしれません。いずれにせよ、国・産業界・アカデミアがしっかり連携することが重要です。

web3については、「日本のアナログの価値をグローバル価格に引き直す」ことが重要だと考えています。web3というと、ビットコインをはじめとした暗号資産など、マネーゲームの要素が強かったですが、NFTが出てきたことでゲームチェンジになったと考えています。例えば、北海道・ニセコのスキーのリフト券に15分だけ早く乗れるチケットをNFTで5,000円で出し、最終価格が9万円になりました、のようなことが可能になるわけです。これはリフトに乗る権利をただ85,000円多く払っているということではなく、朝真っ先にゲレンデに出て、誰も後をつけてないパウダースノーを滑るという体験に約10万円の値段がついているということです。これはニセコのパウダースノーのみならず、桜の時期に特等席で桜見ながらご飯を食べる体験、祇園祭を特等席で涼しいとこで並ばずに見れる体験、また伝統文化など、日本には価値をあげられるものがいくらでもあります。そういうものをNFT化して、付加価値を爆発させると、中小企業、地域経済にもチャンスがあると考えています。

ー何でもかんでも「追いつけ追い越せ」ではなく、日本の強みを活かした独自の戦略が必要ということですね。

その通りです。日本にはGAFAMのようなビッグテックがないので、独自の戦略が必要だと常に意識しています。欧米はロボットやAIは『ターミネーター』のイメージがものすごく強いらしいですが、日本の場合はドラえもんなど、AIロボットとの共生のイメージが沸きやすく、文化的にも親和性が高い。その背景もあってか、ヨーロッパは何でも規制を強めようとする傾向が強いですが、私は規制をかけるべきところはかけて、それ以外はできるだけ自由にするという方針が重要だと思っています。

この方針をとっていることで日本に人材や資金、企業が流入しやすくなり、例えば生成AIでは、OpenAIとGoogleが日本語の大規模言語モデルの開発に注力しています。これは英語以外の言語では唯一です。日本はグローバルサウスの結節点という意味でも、ほかの言語に展開するときの役割は大きいと思っています。

平将明議員インタビュー

ー今後、平議員が注力していきたい分野はなんでしょうか?

フュージョンエネルギー(核融合エネルギー)が鍵を握ると考えています。日本はサプライチェーンで重要な部分を担っていますし、フランスでのITER計画(核融合実験炉ITER)という国際プロジェクトにおいてもリーダーシップをとっています。今、中国やアメリカ、イギリスなどでさまざまなスタートアップが出てきたり、国家主導で核融合計画を前倒しするという動きがある中で、日本も遅れをとらずにやるべきです。もしフュージョンエネルギーが実現すれば、日本はエネルギー自給率100%になるどころか、エネルギー輸出国になる可能性も秘めています。

また日本の成長戦略を考える上で、人口減少は避けて通れません。逆にその状況を活かして、今後多数発生するであろう空きビルでフュージョンエネルギーの電力を活用して農産物などを育てることができれば、食料自給率も理論上は100%にすることができます。私たちの孫の時代は、食料自給率100%、エネルギー自給率100%を実現し、祖先が残してくれた伝統文化や観光体験の価値を最大化して儲けることも夢ではありません。私が政治家を引退するまでの間に、これらに何とか目処がついたらいいなと思っています。

国を守る、という観点ではサイバーセキュリティが最重要です。残念ながら現代は戦争もサイバー空間で戦うハイブリッド戦争の時代になってしまったので、サイバー空間で国を守る法律が必要です。2024年の通常国会で、「セキュリティクリアランス制度」(経済安全保障上、重要な情報へのアクセスを国が信頼性を確認した人に限定する制度)の創設に向けた法律が可決されましたが、次の国会では「積極的サイバー防御」(アクティブ・サイバー・ディフェンス:サイバー攻撃を未然に防ぐこと)を可能にする法整備が最も重要と考えています。その上で、サイバーセキュリティに関しては「ファイブ・アイズ(米国・英国・豪州・カナダ・ニュージーランドの5カ国による機密情報共有の枠組みの呼称)」に日本が加盟して「シックス・アイズ」になること、また国連がなかなか機能しないので、アジア版NATOのような枠組みを作り、集団安全保障体制をアジアやインド太平洋エリアにも作っていくことが肝要です。

上記以外に量子コンピュータにも注力していきます。先ほどのフュージョンエネルギーのPTは今年立ち上げましたが、量子コンピュータのPTは自民党内にまだありません。AI、Web3、フュージョンエネルギー、量子コンピュータの4つが、日本の未来の成長戦略の鍵を握ります。フュージョンエネルギーのPTを立ち上げた成果として、改訂された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では、フュージョンエネルギーについて解像度高く網羅的に書きこむことができました。一方で、量子コンピュータは記述が少なく、去年の文章とそこまで変わっていません。

今後は、先ほど言った4分野を中心に、日本のポテンシャルを最大化するための成長戦略、財政政策、規制のあり方、税のデザインをしっかり行い、成功事例をたくさん出していきたい。それを通じて、35年間デフレだった日本の経済を回復させ、もう1回「儲かる日本」を作っていくことが重要です。それが「頑張る人が報われる」ことの環境と考えています。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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