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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー日本維新の会 総務会長、柳ヶ瀬裕文議員に聞く!全国政党を目指す維新の広報戦略

日本維新の会 総務会長、柳ヶ瀬裕文議員に聞く!全国政党を目指す維新の広報戦略

投稿日2023.12.5
最終更新日2023.12.22

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日本維新の会は「身を切る改革」を掲げ、企業団体献金の禁止や調査研究広報滞在費の公開を行うほか、「政策提案型政党」として「日本大改革プラン」や「維新八策2022」を発表し、さまざまな政策や法案を是々非々で実現しています。2022年参議院選挙では改選議席倍増、2023年統一地方選挙では目標としていた議席1.5倍増を大幅に上回る結果を残すなど、維新の躍進が続いています。

今回は、党の総務会長を務める柳ヶ瀬裕文議員に、永田町の常識にとらわれない広報戦略や、日本維新の会の今後の展望などについてお伺いしました。

(聞き手:株式会社PoliPoli 山田 仁太、文責:株式会社PoliPoli 中井澤卓哉)

柳ヶ瀬裕文議員インタビュー

柳ヶ瀬 裕文(やながせ ひろふみ)氏 
1974年生まれ、日本維新の会総務会長。
広告代理店、議員秘書を経て、2007年大田区議会議員に。
2009年から東京都議会議員を3期務め、
2019年に参議院議員選挙初当選(1期)。
趣味は山登りと茶道。

(1)法律の不備に気づき、政治家の道へ

ーまずはじめに、政治家を志したきっかけについて教えてください。

弁護士を目指す中で法律の不備は政治家にしか正せない、と感じたからです。

多くの議員とは違って、私は元々政治に興味があるわけではありませんでした。大学卒業後は広告代理店に入り、「ポケットモンスター」のキャラクタービジネスを手がけていました。本当に忙しい日々でしたが、次々に成果をあげることができ、とても充実していました。ある時、大きなコンペティションで勝ったことがきっかけで社長賞や営業本部長賞などを受賞し、ふと「もうこの会社でこれ以上やりたいことはないな」と思いました。

そこで、弁護士を目指そうと思い立ちました。弁護士は困っている人を助ける仕事で、これまでの仕事とは違うやりがいを感じられるだろうという考えからでした。弁護士を目指すにあたって、司法試験に合格しなければならないので、広告代理店に勤務しながら予備校で法律の勉強を始めました。

勉強をしていく中で感じたのは、法律って意外と不備があるということです。法律を運用するのは弁護士、検事、裁判官ですが、そもそもその法律に不備がある場合は、政治家になってルール自体を変えるしかないんだと思いました。これが政治家を志したきっかけです。

ーそこから立候補するまでにどのような経緯があったのでしょうか?

政治家になろうと思ったものの、政策や選挙についてよくわかっていなかったため、まずは下積みとして公設秘書になりました。3年半秘書を務め、2007年に地元の大田区議会選挙に出馬しました。

当時、自民党に対峙できる政党は民主党しかないだろうということで、民主党から出馬したのですが、初めての選挙は大変でした。ただ、私は商店街のカメラ屋の息子だったので、商店街の人たちから応援していただけたのはありがたかったです。

柳ヶ瀬裕文議員インタビュー

ー元々は民主党から出馬されていたんですね。その後日本維新の会に入党した理由は何だったのでしょうか?

2009年に自民党から民主党に政権交代したあと、改革を止めてしまったことに疑問を感じていたからです。

政権交代時の民主党のスローガンは「コンクリートから人へ」でした。当時の民主党の方針は、予算を公共事業から教育や福祉に回して経済成長を促進し、足りない財源は歳出改革で賄うこととしていました。今の日本維新の会にも通じるような改革路線だったのです。

しかし、政権を奪取してからは、掲げていた政策はことごとく修正されました。その背景に、日本医師会などの業界団体からの働きかけがあったと感じています。政権交代後、業界団体からの献金が増え、改革がどんどん骨抜きにされていってしまいました。

私がそんな無力感を感じていたところに、大阪では大阪維新の会・橋下徹代表がどんどん改革を進めており、衝撃を受けました。これまで誰もできなかった議員定数の削減、議員報酬の削減を行い、「何なんだ、この変な人たちは」と思う反面、改革を実行できない自分をとても恥ずかしく感じていました。

ーその後、すぐに日本維新の会に入党したのでしょうか?

2012年、国政政党「日本維新の会」立ち上げのタイミングで民主党を離党し、日本維新の会に合流しました。当時、私は都議会議員3年目でした。東京都議会に「東京維新の会」という新しい会派を作り、東京都政の改革を訴えました。

(2)つまらないポスターは作りたくないー維新の会総務会長としての取り組み

ー日本維新の会は2021年に執行部が刷新され、柳ヶ瀬議員は総務会長に就任しました。総務会長としてどのようなことに取り組まれましたか。

総務会長になる際「かっこよくないものは作らない」と決めました。

まずはじめに取り組んだのはポロシャツとジャンパーの刷新です。それまでみんなバラバラのジャンパーを作っていて、維新のイメージカラーの緑ではありつつも、くすんだ緑色だったりして色が統一されておらず、あまりおしゃれとは言えませんでした。まずは自分達の見た目から変えていきました。

ー新しい執行部は広報戦略にも力を入れている印象です。

従来の政党プロモーションははっきり言ってつまらないです。なにか良いことを言っているように見えるけれど、あとで揚げ足を取られたくないから突っ込んだことは言わない、みたいなものが多く、誰にも刺さらないものになってしまっています。

与党であればそういう無難なポスターでもいいかもしれませんが、日本維新の会のポスターは、私の判断で、意図的に尖ったものを作っています。我々はチャレンジャーなので、尖ったものを作る必要があると考えています。

ー広報において大切にしていることは何ですか?

「ありのままを見せる」ことを強く意識しています。政治家は聖人君子で、失敗は許されない、というイメージがありますが、実際はただの人間で、分からないことも間違うこともあるということを知ってほしいと思っています。

私は、Youtubeなどもやっていますが、そこではライブ感や”ざらつき”が大切だと思っています。多少いびつでも、綺麗にラッピングされたものより、遥かに伝わるものがあります。元々、政治家と市民の距離が遠いことに問題意識を持っていたので、ありのままを全部晒すことで、政治家をもっと身近に感じてもらいたいと考えています。

ー中長期計画で日本維新の会は野党第一党を目指すとしていますが、その上で今後の広報戦略について教えてください。

他の野党と比べてどうだったか厳しくチェックしています。YouTubeなら再生回数、テレビ、雑誌でも露出量とクオリティで比較して、勝っているかどうか、全て私が目を通しています。

今後の広報戦略については、これまでの「マスマーケティング」から「ファンマーケティング」に徐々にシフトしていく方針です。マスマーケティングでは、テレビや雑誌などの媒体から支持を集めていましたが、これからはコアな支援者から口コミで支持を集めていくことが大切になると考えています。

柳ヶ瀬裕文議員インタビュー

ー野党第一党を目指すに当たり、総務会長としてどのような課題を感じていますか?

野党第一党、ひいては与党を目指すためには、党内の危機管理が重要だと考えています。所属する議員のスキャンダルや不祥事は、政党の信頼を大きく傷つけます。最近、複数の自民党議員が不祥事によって役職を辞任しましたが、こういう議員個人のトラブルがないよう、また何か起こった時に党としてしっかり対応できるよう、ガバナンスを効かせていくことが重要です。

日本維新の会の支持率が上げ止まっているのは、まだ政党としての信頼を勝ち取っていない面があると思います。認知度が高く、評価されている議員が日本維新の会にはいますが、もっと人材を育成してこういった議員を増やしていきたいと考えています。日本維新の会にはいい人材がたくさんいると思っていただけることが、支持につながると思います。

(3)不安なく新しいことにチャレンジできる社会へ

ー柳ヶ瀬議員の政治家としての目標について教えてください。

不安なく新しいことにチャレンジできる社会を作りたいです。

今、日本全体に漠然とした不安が蔓延しており、特に、若者世代は本当に将来への不安が強いと感じます。私には20歳になる息子がいますが、彼はお金に対してものすごくシビアで驚かされます。私の理想とする社会は、若い人たちが自分のやってみたいこと、起業や結婚・子育てなどに、前向きにチャレンジできる社会です。不安なく新しいことに挑戦できるようにするには、失敗してもやり直せるセーフティーネット、またそのセーフティーネットを支える経済的基盤が必要だと思っています。

日本維新の会は、規制緩和・規制改革を通じて新しいチャレンジを促し、経済成長を実現し、チャレンジを応援するセーフティーネットを構築していく姿勢です。批判が多いベーシックインカム※という政策も、チャレンジを応援するためのセーフティーネットとして考えられる一つの手段だと思っています。

※ベーシックインカム:所得や年齢などによる制限なく、すべの人が国から一定の金額を定期的、継続的に受け取ることができる社会保障制度

ー今のお話を聞くと、維新のさまざまな政策が実は繋がっていると感じます。

そうですね。規制緩和・規制改革も、経済成長のための手段です。日本では、新しいテクノロジーがあっても産業化できないことが課題です。では、なぜ新しいテクノロジーで稼いでいくことができないかというと、それは既存の産業を守るための規制が新しいチャレンジを潰してしまうことが原因です。

最近では、ライドシェアが分かりやすい例だと思いますが、技術があっても既存の業界団体が強い日本ではなかなか普及しません。

他にも、賃上げが話題になった介護も重要な課題です。これから高齢者が増えて介護の需要が高まる中で、「社会で介護することができなくなる」事態を避けなければいけません。「社会で介護できなくなる」というのは、つまり、自分の親は自分でみてください、高齢者の介護は家族の責任でやってくださいという時代に戻るということです。親の介護のために仕事ができなくなると困りますよね。若い人たちが不安なく新しいことにチャレンジできるようにするためにも、介護制度を持続可能な形にする対策が必要です。

柳ヶ瀬裕文議員インタビュー

ー最後に、読者に向けたメッセージをお願いします。

とにかく政治に参加してほしいです。多くの人が政治に関心を持って関わっていけば、もっと政治はよくなると信じています。

政治に参加すると言っても、色々な形があって、今この記事を読んで政治について知ることも一つのあり方です。政党に意見を出したり、選挙で票を投じたり、最終的には自分が選挙に出たりとグラデーションがあっていいと思います。どんな形でもいいので、参画してほしいと思います。

特に若い方は未来への不安が大きいと思います。しかし、そこで諦めてしまうのではなく、政治にどんどん参画して、一緒に未来を明るくしましょう。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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