皇室典範とは、皇室に関することを定めた日本の法律です。
今回は皇室典範について、以下の3点からわかりやすく解説していこうと思います。
- 皇室典範とは
- 皇室典範の具体的な内容
- 旧皇室典範との違い
本記事がお役に立てば幸いです。
1、皇室典範とは
皇室典範とは、日本国憲法第二条及び第五条に基づき、
- 皇位継承
- 摂政の設置
- 皇室会議
- 天皇・皇族の身分
など皇室に関することを定めた日本の法律です。
簡単に言えば、皇室について以下のような内容が定められています。
- 天皇や皇族はどのような人か
- 天皇が国事行為が行えなかったりした場合はどうするのか
- 皇室の儀式や敬称はどのように決められるのか
所管官庁は宮内庁で、現行法は1972年1月16日に公布され、同年5月3日に日本国憲法と同時に施行されました。
また、2017年6月16日には「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」という名目で改正法令が公布されました。
この改正法令は、平成天皇が生前に天皇を退位することを認めるために制定された法律です。
詳しくは次の項目で解説しますが、現行の皇室典範では基本的に生前退位は認められていないため、法の改正が必要になりました。
参考:e-Gov 法令検索
参考:宮内庁ホームページ
2、皇室典範の具体的な内容
続いては、皇室典範の詳しい内容について章ごとに解説していきます。
皇室典範は
- 第一章:皇位継承
- 第二章:皇族
- 第三章:摂政
- 第四章:成年、敬称、即位の礼、大喪の礼、皇統譜及び陵墓
- 第五章:皇室会議
の全五章37カ条から成り立っています。
(1)第一章:皇位継承
第一章「皇位継承」では、
- 皇位継承が可能な人物
- 皇位継承の順位
- 皇位継承する時期
について定められています。
皇位継承が可能なのは「皇統に属する男系の男子」のみです。
たとえ天皇直系の子孫であっても、女性もしくは女系である場合は、天皇になることはできません。
天皇に関する議論は以下の関連記事でご紹介しています。
天皇とは?仕事内容や皇位継承及び女系天皇などの課題について
皇位継承の順位については以下のように記されています。
-
皇長子
-
皇長孫
-
その他の皇長子の子孫
-
皇次子及びその子孫
-
その他の皇子孫
-
皇兄弟及びその子孫
-
皇伯叔父及びその子孫
引用:皇室典範
そして2021年1月時点で、この規則にしたがって皇位継承の順位を考えると、
- 第一位:秋篠宮文仁親王
- 第二位:悠仁親王
- 第三位:常陸宮正仁親王
このようになることがわかります。
また皇位継承の時期については、第四条で「天皇が崩じたとき」と定められており、基本的に天皇の退位は認められていません。
平成天皇の退位は、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」という改正法令によって決められた特殊ケースとなります。
(2)第二章:皇族
第二章「皇族」では、皇族の定義が定められており、皇室典範第五条では以下のように記されています。
「皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃および女王を皇族とする」
また、皇室典範第6条より
「嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の皇孫は、男を親王、女を内親王とし、三世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を王、女を女王とする。」
引用:皇室典範
とされており、親王・内親王は第二世までということになっているのです。
旧皇室典範では
- 四世までを親王・内親王
- 五世以降を王・女王
と定めていたことから、範囲がかなり狭められました。
また皇族について、以下のようなことも定めれています。
- 天皇及び皇族は養子を持てない
- 15歳以上の内親王・王・女王はその意思に基づき、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる
- 親王(皇太子及び皇太孫を除く。)、内親王、王及び女王は、前項の場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる
- 皇族女子は天皇や皇族以外と婚姻したときは自動的に皇族の身分を離れる
(3)第三章:摂政
「摂政」という言葉自体については、歴史の授業などで聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
現在の摂政とは、以下2つの場合に「天皇の名で国事行為を行う人」のことを指します。
- 天皇本人が18歳未満の未成年であったとき
- 天皇本人が精神・身体の重患や重大な事故によって国事に関する行為を自ら行えないとき
簡単に言えば、「天皇がなんらかの理由で国事行為が十分にできないとき」に、代わりに国事行為を行う人のことです。
また摂政を務める人についても、以下のように順位が定められています。
- 皇太子又は皇太孫
- 親王及び王
- 皇后
- 皇太后
- 太皇太后
- 内親王及び女王
(4)第四章:皇族に関する様々な儀式や取り決め
第四章では「成年、敬称、即位の礼、大喪の礼、皇統譜及び陵墓」ということで皇族に関する様々な儀式や取り決めについて定められています。
その中から主に以下の4点について解説していきます。
- 天皇、皇太子及び皇太孫の成年
- 皇族の敬称
- 皇族の儀式
- 陵墓
①天皇、皇太子及び皇太孫の成年
「天皇、皇太子及び皇太孫の成年」は、私たち一般人や他の皇族が20歳で成人を迎えるのとは異なり、「18歳」となっています。
②皇族の敬称
以下にあたる人物についての敬称は「陛下」と定められています。
- 天皇
- 皇后
- 太皇太后
- 皇太后
それ以外の皇族の敬称は「殿下」と定められています。
③皇族の儀式
儀式については
- 即位の礼
- 大喪の礼
が皇室典範では規定されていて
- 即位の礼は、皇位の継承があったとき
- 大喪の礼は、天皇が崩じたとき
に行われます。
また「大嘗祭」や「立太子の礼」など皇族の儀式は、伝統を守るために、政教分離も考慮し、国の行事としてではなく皇室の行事として行われるものもあります。
④陵墓
陵墓については、皇室典範27条で以下のように定められています。
「天皇、皇后、太皇太后及び皇太后を葬る所を陵、その他の皇族を葬る所を墓とし、陵及び墓に関する事項は、これを陵籍及び墓籍に登録する。」
引用:皇室典範
- 陵は「天皇、皇后、太皇太后及び皇太后を葬る所」
- 墓は「その他の皇族を葬る所」
と区別されています。
(5)第五章:皇室会議
皇室会議とは、皇室に関する重要事項を審議して決定する機関のことです。
議員10人から組織されており、そのメンバーは以下のようになります。
- 皇族2名
- 立法府4名(衆議院と参議院それぞれの議長と副議長)
- 行政府2名(内閣総理大臣、宮内庁の長)
- 司法府2名(最高裁判所の長たる裁判官及びその他の裁判官一人)
皇室会議では、内閣総理大臣が議長となることが定められています。
議決には、出席者の過半数の賛成が必要ですが、皇位継承の順位変更など重要事項の場合には、3分の2以上の賛成が必要となります。
参考:e-Gov 法令検索
参考:首相官邸ホームページ
3、旧皇室典範とは何が違うのか
旧皇室典範とは、1889年(明治22年)から1947年(昭和22年)までの皇室について定められていた法律です。
旧皇室典範は、憲法と同等の効力を持ち、その改正や増補は皇族会議などを経るだけで、議会を通す必要はないとされてきました。
一方で、現行の皇室典範では旧典範とは異なり、新規の法律として制定され、国会の過半数の議決によって改正されうる一般の法律と同等の効力しか持ちません。
内容や構成を見ると
- 旧典範:12章62カ条
- 現典範:5章37カ条
であることから、かなり簡略化されたことがわかります。
また、身分制度についても大きく変更された部分があります。
旧典範では、嫡出子のみならず、正室でない子供である庶出子にも皇位継承権を認めていました。
しかし現典範では、皇位継承ができるのは嫡出子に限られています。
さらに「皇太子・皇太孫を除く皇族がその身分を離れること」も広く認められるようになりました。
このように旧典範と現行の典範ではその時代に合わせた皇室のあり方として、法の中身や位置付けが大きく変わったのです。
参考:e-Gov 法令検索
参考:首相官邸ホームページ
まとめ
今回は「皇室典範」について解説してきました。
皇室典範とは皇族に関する法律です。
皇室典範の知識を持つことで、今後の皇室に関するニュースより深く理解できるかもしれません。
本記事がお役に立ちましたら幸いです。