洪水対策とは、大雨などによって発生した河川の洪水から、住居や命を守る対策です。
今回の記事では
- 洪水対策の概要
- 水害の種類
- 政府の水害対策
- 個人でできる水害対策
について、わかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、洪水対策とは
洪水対策とは、洪水の被害から人々を守る対策全般を指します。
洪水とは、大雨や雪解け水などによって河川の水量が増加することで、発生する水害の1つです。
堤防を越えた水は、住居や道路に流れ込み、人を溺死させることもあります。
下記は「1時間の降水量が80mm以上の強い雨の年間発生回数」を表したグラフです。
グラフ引用元:[アメダス]1時間降水量80mm以上の年間発生回数 水害被害(風水害・土砂災害) 内閣府
このグラフから、年間の強い雨の発生回数が増加傾向にあることがわかります。
2、洪水以外の水害の種類
洪水は、水害の1つです。
水害には、洪水以外にも
- 外水はん濫
- 内水はん濫
- 高潮
- 波浪
- 津波
の5種類があります。
(1)外水はん濫(がいすいはんらん)
外水はん濫とは、増水した河川の水が堤防を越えて、住居や田畑を浸水する水害です。
画像引用元:外水はん濫 国土交通省中部地方整備局
(2)内水はん濫(ないすいはんらん)
内水はん濫とは、下水道や側溝などのインフラ設備の排水能力を超える雨が降ることで、住居や田畑を浸水する水害です。
マンホールから水が噴き出したり、道路に水が溢れたりする状態は、内水はん濫の影響によるものです。
(3)高潮
高潮とは、台風の通過などによって、強風や気圧の変化が起こり、海面が異常に高くなる現象です。
「暴風津波」、「風津波」と呼ばれることもあります。
高潮による海面上昇の影響で、海水が堤防を越えると、付近の地域(低地)に浸水被害をもたらします。
画像引用元:2. 高潮は恐ろしいの? 国土交通省
(4)波浪
波浪とは、強風によって波が発生する現象です。
危険度の高さに応じて、
- 波浪特別警報
- 波浪警報
- 波浪注意報
が出されます。
波浪と高波の違いは何でしょうか?
気象庁では
-
波浪=「海洋表面の波動のうち、風によって発生した周期が1~30秒程度のもの。風浪とうねりからなるもの」
-
高波=「波浪注意報・警報の対象になる程度の高い波」
引用:気象庁
と定義しています。
(5)津波
津波は、地震や海底火山の噴火によって生じる波のことです。
地震津波とも呼ばれます。
津波は、非常に波長の長い波であり、海岸に近づくと急激に波高を増す特徴があります。
参考:津波について 気象庁
3、水害の被害を最小限に抑えるために政府が関わる水害対策
政府では、
- 治水対策
- 緊急速報メール
- 水防団
- 水害に関する法律
などによって水害対策を行っています。
(1)治水対策
治水対策とは、水害を防ぐために河川の改良や保全を行うことです。
治水対策には、
- 水をはん濫させない対策
- はん濫しても被害を最小限にする対策
の2種類があります。
①水をはん濫させない治水対策
水をはん濫させない治水対策には
- 堤防をつくり、水の流れる断面を大きくする
- 川幅を広げて、河川の水位を下げる(引堤)
- 洪水を貯める遊水地をつくる
- 河川を掘削して、河川の水位を下げる(河道掘削)
などの対策があります。
②はん濫しても被害を最小限にする対策
はん濫しても被害を最小限にする対策には
- 堤防(本堤)と堤内地堤防による2重堤防の設置(二線堤)
- 特定区域を囲む堤防の設置(輪中堤 )
があります。
(2)緊急速報メール
近所の河川に洪水の発生、または危険性がある場合には、「緊急速報メール」によって最新の洪水情報が届けられます。
以下は、緊急速報メールの例です。
画像引用元:早めの防災行動に役立てましょう。緊急速報メールの「洪水情報」 政府広報オンライン
携帯電話の画面にプッシュ型で配信されるため、携帯電話があればすぐに情報を確認できます。
参考:早めの防災行動に役立てましょう。緊急速報メールの「洪水情報」 政府広報オンライン
(3)水防団
水防団とは、地域を水害から守る団体です。
水防団は、地域住民によって構成され、市区町村長など(水防管理者)から指揮を受けます。
水防団に参加すると、
- 土のうの積み方
- 堤防の応急的な補修工法
- 溢れた水の排水方法
などを学ぶことができるので、政府は水防団への参加を推奨しています。
(4)水害に関する法律
水害に関係する法律には、
- 河川法
- 水防法
があります。
① 河川法
河川法は、1964年に制定された、河川の利用と管理を定めた法律です。
1997年改正では、従来の河川法の目的である「治水・利水」に加えて、「河川環境の整備と保全」が定められ、地域住民の意見も計画に反映されるようになりました。
② 水防法
水防法とは、1949年に制定された、水防に関する法律です。
- 水害への行政の責任
- 水防団の組織
- 水防の制度
などについて定めています。
2001年改正によって「浸水想定区域等の指定と公表」が実施されるようになりました。
その後、2005年改正では
- 浸水想定区域の指定対象を主要な中小河川に拡大
- 洪水ハザードマップ公表の義務化
- 水防協力団体制度の創設
などが定められました。
4、水害から身を守るために個人でできる水害対策
個人でできる
- 水害ハザードマップの確認
- 避難場所および経路の確認
- 非常時の持ち出し品の整理
の水害対策について解説していきます。
(1)水害ハザードマップの確認
個人の水害対策の第一歩は、自宅や勤務先の水害リスクを知ることです。
水害リスクを知るためには「水害ハザードマップ」を参考にしましょう。
国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」から、自治体のハザードマップを探すことができます。
(2)避難場所および経路の確認
避難経路には、
- はん濫の危険性がある河川は無いか
- 浸水しやすい陥没した地形(くぼ地)は無いか
などを確認しておきましょう。
避難場所と避難経路を決めたら、実際に歩いてシミュレーションしておくとよいかもしれません。
(3)非常時の持ち出し品の整理
自宅から持ち出せる量で、
- 食料品
- 医薬品
- 貴重品
- 衣類
などをまとめておきましょう。
徒歩で避難することを想定し、無理なく持ち歩ける量が理想です。
乳児がいる場合には、
- 紙おむつ
- 粉ミルク
なども忘れないようにしましょう。
政府が発表している「非常用持ち出し品チェックシート」が参考になります。
洪水対策に関するQ&A
Q1.1日の降水量が何mmを超えると、水害が起こる可能性が出てくるのか?
一般的には、70mmを超えると水害が発生し始めると言われています。さらに、200mmを超えるとかなりの数の土砂災害や水害が発生すると言われています。
Q2.水害が多い月は、何月なのか?
過去30年のデータから見ると、7月から9月に水害が多いです。
Q3.水害対策で、一番最初にするべきことは?
「水害ハザードマップ」を参考に、自宅や勤務先の水害リスクを知ることです。
まとめ
今回は洪水対策及び水害対策について解説しました。
本記事が水害の恐ろしさや、政府・個人での水害対策の理解の助けになれば幸いです。
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