伝統文化とは、世代を超えて受け継がれてきた芸能や技術などの文化を指します。
今回の記事では
- 伝統文化の概要
- 文化庁の概要
- 伝統文化が衰退する理由
- 伝統文化への取り組み
などについて解説したいと思います。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、伝統文化とは
伝統文化とは、世代を超えて受け継がれてきた、その国や地域を特徴づける文化を指します。
たとえば、お正月に行われる初詣や書き初めなども日本の伝統文化の1つです。
(1)伝統文化の例
日本の伝統文化には、さまざまなものがあります。
たとえば、
- 伝統工芸(染物や着物など)
- 伝統芸能(落語や歌舞伎など)
- 諸芸(茶道や書道など)
- 日本の行事(盆踊りなど)
- 短歌・俳句
- 日本庭園
などです。
また、歌舞伎や能楽、和食などのように、「無形文化遺産」に登録されているものも存在します。
2、文化庁について
文化庁とは、文部科学省の外局として、日本の文化芸術を世界や次の世代に伝えることを目的とした省庁です。
1968年に発足されました。
前身は「文部省文化局」、「文化財保護委員会」です。
文化庁は、各省庁にまたがる文化関連施策について、総合的に推進する役割を担っています。
参考:文化庁
(1)文化庁の担当範囲
文化庁が扱う範囲は大きく分けて2つあります。
- 日本の伝統文化財の保存や継承(文化財保護)
- 西洋芸術を含む芸術文化振興
文化財保護では、
- 文化財指定
- 修復などへの助成
- 歴史的な価値のあるもの買い上げ
などを含みます。
芸術文化振興では、
- 演劇公演への助成
- 芸術家への支援
などが含まれます。
このほか、
- 国語教育
- 日本語教育施策の推進
- 宗教に関する事務
といった、日本の伝統文化に関する行政事務を担っています。
また、博物館の支援も役割の1つです。
全国の博物館と連携し、展覧会やシンポジウムの開催も担当しています。
(2)文化庁の組織図
文化庁の組織は、
- 政策課
- 文化資源活用課
- 文化財課
- 宗務課
- 文化経済・国際課
- 著作権課
といった担当部署に分かれています。
画像出典:文化庁の組織図
文化庁の組織のうち、
- 「政策課」
- 「文化資源活用課」
- 「文化財第一課」
- 「文化財第二課」
については2021年までに京都へ移転される予定です。
(3)世界と比べて文化予算が低い
日本では、世界各国と比べて、文化予算の額が少ないのが現状です。
2019年の文化庁が公表した調査研究結果によると、世界各国の文化予算は以下になります。
- イギリス:2522億円
- アメリカ:1806億円
- ドイツ:2267億円
- フランス:4394億円
- 韓国:3015億円
- 日本:1167億円
調査結果から分かるように、他の5ヶ国と比べて、日本の文化予算は最も低い金額でした。
画像出典:諸外国の文化政策に関する調査研究|文化庁
3、伝統文化が衰退する理由
海外で高い評価を受ける日本の伝統文化ですが、一方で国内での衰退が問題となっています。
その理由には
- 需要の減少
- 高齢化と後継者不足
などの原因が挙げられます。
それぞれについて、以下で確認していきましょう。
(1)需要の減少
技術の発達により、安価で便利な、
- プラスチック製の食器や容器
- テレビなどの家電製品
が広く普及しました。
その結果、価格や生産コストから伝統的工芸品のニーズは少なくなり、漆器や日用品など工芸品を使用する機会が減少していったのです。
経済産業省の資料によると、2010年の伝統工芸品の生産額は、2784億円でした。
そこから生産額は年々減少し、2017年には927億円と半分以下になっています。
画像出典:伝統的工芸品産業への支援|経済産業省
(2)高齢化と後継者の不足
上記の(1)にある図から分かるように、伝統工芸の従事員数は年々減少傾向にあります。
特に伝統工芸士と呼ばれる職人たちは高齢の方が多く、「職人の高齢化」という問題も生じています。
画像出典:伝統的工芸品産業への支援|経済産業省
一方で、女性の伝統工芸士は増加傾向にあります。
また、
- ゲームやアニメとのコラボレーション
- 海外展開の強化
といった、新しいチャレンジを行っている日本の伝統文化には、世界中から注目が集まっている側面もあります。
4、伝統文化への取り組み
衰退しつつある伝統文化を守るため、さまざまな取り組みが各地で行われています。
具体的に、国や自治体はどのような取り組みをしているのでしょうか。
最後に、伝統文化を活かした
- 政府
- 自治体
の具体的な取り組みについてご紹介します。
(1)政府による取り組み
文化庁による伝統文化への取り組みの1つとして、「伝統文化親子教室」があります。
伝統文化親子教室では
- 俗芸能
- 工芸技術
- 邦楽
- 日本舞踊
- 茶道
- 華道
などについて、教室を開いています。
全国で毎年3000以上もの教室を開催し、次世代を担う子供たちに伝統芸能の魅力を伝えています。
また2017年には、文化庁が公式YouTubeチャンネルを設立しました。
- 歌舞伎
- 能
- 落語
- 講談
- 曲芸
- 華道
- 和食
- 和太鼓
- 流鏑馬
などの幅広い分野の動画を発信し、文化庁が推進する施策への国民の関心向上を目指しています。
参考:文化庁YouTube
参考:伝統文化親子教室事業について|文化庁
参考:日本文化の海外発信 | 文化庁
(2)地方による取り組み
政府だけでなく、地方自治体でもさまざまな伝統文化を活かした取り組みが進められています。
ここでは、
- 福井県鯖江市河和田
- 秋田県男鹿市
- 徳島県美馬市脇町
などの伝統文化を活かした町おこしについてご紹介します。
①福井県鯖江市河和田「うるしの里」
鯖江市河和田は、約1500年の歴史ある越前漆器の産地です。
鯖江市河和田では、観光客が気軽に漆器に触れる環境が整っています。
たとえば、
- 制作現場を見学できる「軒下工房」
- オリジナルの漆器が作れる「うるしの里会館」
- 越前漆器で料理が提供される食事処
など、町のさまざまなところで鯖江市の伝統文化を体験できます。
ほかにも、町おこしの一環として、国内で最大規模の産業観光イベント「RENEW」を年に1度開催しています。
産地のPRに加えて、
- 移住者の確保
- 雇用拡大
などを目的としています。
参考:うるしの里会館|越前漆器協同組合
参考:RENEW
②秋田県男鹿市「なまはげ文化が残る町」
秋田県男鹿市は、「なまはげ文化」が色濃く残っている地域です。
「なまはげ」は日本の伝統文化として、
- 国の重要無形民俗文化財
- ユネスコ無形文化遺産
に登録されています。
男鹿市内には、なまはげ文化に関する施設や行事が数多くあります。
たとえば、「なまはげ館」では、男鹿のなまはげに関する資料を展示します。
「男鹿真山伝承館」では、本来大晦日の夜でのみ行われる、なまはげ行事を体験できます。
なまはげは、怠け心を戒め、無病息災や五穀豊穣をもたらす、年の節目にやってくる大切な来訪神です。
また、
- 男鹿の漁師の石焼料理
- 地魚のハタハタ
など名物も多くあり、伝統文化を活かした地域活性化の事例としても注目を浴びています。
③徳島県美馬市脇町「うだつ(卯建)の町並みと阿波踊り」
徳島県美馬市脇町は、古くから脇城の城下町として発展してきた地域です。
江戸中期以降の、伝統的建造物による町並み(重要伝統的建造物群保存地区)が残されています。
特徴的なのは、町家の両端に張り出した「うだつ(卯建)」です。
江戸時代を彷彿とさせる、漆喰塗りのうだつを揚げた商家が立ち並んでいるので、「うだつの町並み」とも呼ばれています。
また夏には、400年を超える歴史をもつ徳島の伝統文化「阿波踊り」の大会が開催されます。
参考:美馬市観光案内
伝統文化に関するFAQ
Q1.伝統文化とは?
伝統文化とは、世代を超えて受け継がれてきた、その国や地域を特徴づける文化を指します。
お正月に行われる初詣や書き初めなども日本の伝統文化の1つです。
Q2.日本国内で伝統文化が衰退している理由は?
国内で伝統文化が衰退している理由として、
- 需要の減少
- 高齢化と後継者不足
などの原因が挙げられます。
Q3.文化庁とは?
文化庁とは、文部科学省の外局として、日本の文化芸術を世界や次の世代に伝えることを目的として1968年に発足した省庁です。
まとめ
今回は、伝統文化について解説しました。
日常生活の中で、伝統文化を意識する機会は少ないかもしれません。
伝統文化への需要は年々減少しており、世界に誇る日本の伝統文化の存続が危ぶまれています。
受け継がれてきた伝統文化を次世代へと残すための、最適な対策を見つけていきたいですね。
お知らせ:群馬県から「文化政策」に関する意見募集中!
群馬県は現在、文化政策に関する意見募集中!→ 群馬県の意見募集ページ一覧
ぜひお気軽にコメントをお寄せください!
<募集テーマ>
- あなたにとっての文化とは何ですか?
- 地域の伝統文化の担い手確保のためのアイデア・取り組みは何かありますか?
- 経済を発展させる文化のアイデア・取り組みは何かありますか?
- 地域を盛り上げる文化のアイデア・取り組みは何かありますか?