少年法の改正とは、少年法における18・19歳に関する規定の一部を変更する旨を示した改正案を指します(2021年4月時点)。
成人年齢の引き下げに合わせて検討されてきた少年法の改正ですが、2021年、国会によって改正案が提出されました。
今回は少年法の改正について、以下のとおりご紹介します。
- 少年法の概要
- 少年法の改正について
- 2021年の少年法改正の流れ、大きな変更点、意見
本記事がお役に立てば幸いです。
少年法について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
少年法とは?改正少年法との違い・背景・対象範囲について簡単解説
1、そもそも少年法とは|少年法の改正について知る前に
少年法とは、非行少年に対して性格や環境の調整を行う、特別な刑事司法に関する法律のことです。
ここでの少年とは、20歳未満の者を指しており、性別は関係ありません。
罪を犯した際に通常であれば刑法や刑事訴訟法によって刑事裁判を行うところを、少年に関しては「少年法」という特別な法律を優先して適用することにしています。
成人による事件は、刑法や刑事訴訟法によって、刑事事件として扱われます。
一方少年による事件は、刑法や刑事訴訟法の特別法である「少年法」が適用され、家庭裁判として扱われるのです。
また少年法により、少年による事件は刑務所ではなく
- 児童相談所
- 児童自立支援施設少年院
- 少年院
などの別の場所で更生の機会を設けています。
かつては少年も成人と同じ手続きで罪を償っていました。
しかし少年犯罪の増加に伴い、罰だけではなく「教育的機会」を通して再発を防ぐ必要があると考えられ、少年法が定められたのです。
2、少年法の改正について|改正の変遷
少年事件に対する処罰は多くの場合、成人が起こす刑事事件よりも軽い傾向にありますが、少年による凄惨な殺人事件など、重大事件が起きていることもまた事実です。
このような事件が起きるたびに「少年法は甘いのではないか」という世論が巻き起こります。
時代に即した内容が求められる中で、少年法についての継続的な議論が行われ、度重なる改正が行われてきました。
2000年の改正では、
- 刑事処分の対象が16歳以上から14歳以上に引き下げ
- 少年院における懲役または禁錮の執行を可能とする(16歳未満)
などの厳罰化が進み、少年審判の事実認定手続の適正化や、被害者に配慮した制度が取り入れられました。
その後、2007年、2008年、2014年の改正で変更された項目は以下の通りです。
- 14歳未満の少年院送致
- 国選付添人制度の導入
- 被害者に配慮した制度の範囲拡大(記録の閲覧など)
- 一定の重大事件の被害者などが少年審判を傍聴できる制度の導入
- 少年の刑事事件に関する処分規定の見直し
参考:法制審議会
3、2021年の少年法改正について
続いて、2021年の少年法改正についてご説明します。
18・19歳については引き続き少年法の対象とする一方で、
- 「特定少年」と位置づけ
- 家庭裁判所から検察官に逆送致する事件の対象を拡大
- 起訴された場合には実名報道が可能
という大きな変更が行われる予定です(2021年4月時点)。
(1)2021年の少年法改正の流れ
2021年の少年法改正は、
- 2020年法制審議会にて改正要綱が答申
- 2021年2月19日少年法改正について閣議決定
という流れで行われました。
それぞれについて見ていきましょう。
①2020年法制審議会にて改正要綱が答申
2015年6月の選挙権年齢を20歳から18歳に引き下げる公職選挙法の改正によって、少年法の適用範囲についても、「14歳以上20歳未満」から「14歳以上18歳未満」へ変更すべきではないか、という議論が出ました。
公職選挙法では「民法、少年法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」とされているので、少年法についても見直す必要性が生まれたのです。
その後2020年10月の段階で、法務大臣の諮問機関である法制審議会は、「18・19歳の事件については逆送(成人と同様に刑事事件として扱う)する犯罪の範囲を広げる」という改正要綱を上川陽子法相に答申しました。
具体的には、逆送は重大事件のみ対象としているところを、「懲役や禁錮1年以上の刑罰が定められている罪」も対象とする、という内容になります。
参考:日本経済新聞
②2021年2月19日少年法改正について閣議決定
2021年2月19日、前述の改正要綱に関する「厳罰化する少年法改正案」が閣議決定されました。
この改正案が実現することで、18・19歳については、20歳以上と同じ刑事裁判にかける対象犯罪が拡大されることになります。
また、実名報道も可能になります。
具体的な内容について後段にて、詳しく説明します。
参考:首相官邸
(2)2021年の改正による大きな変更点
少年法での「少年」は以下の3つに分類されています。
- 犯罪少年:14歳以上で犯罪を犯した者
- 触法少年:14歳未満で犯罪となりうる行為を犯した者
- ぐ犯少年:犯罪を犯したわけではないが、本人の性格や環境を考慮すると、将来犯罪を犯す危険があると判断される者
2021年の改正によって、ここに、「特定少年:18・19歳」という分類が加わります。
この新たな分類により、18・19歳は特定少年として刑事裁判にかけられる可能性が高まるので、事実上の厳罰化になります。
厳罰化に付随して、最も大きな変更点と言えるのは「実名報道」です。
現行法で一律禁止されている実名報道ですが、2021年の改正により「18・19歳の場合は、起訴されて刑事裁判の対象となった段階で、実名や本人と推定できる情報の報道が可能」となります。
なお改正案の付則には、社会情勢などの変化を踏まえて、今回の18・19歳に関する制度の在り方を、施行から5年後に見直すことも盛り込まれています。
(3)少年法の改正に対する様々な意見
今回の法改正について、反対意見があるのも事実です。
例えば、広島弁護士会では以下のような理由により、反対の声明を出しています。
- 原則逆送事件の対象拡大によって刑事処罰を受ける可能性が高くなり、未成熟な18・19歳の者の健全育成が図られない
- 一定の場合に推知報道が許されることによって半永久的にインターネット上などで情報が残るおそれがあり、18・19歳の者の更生を大きく妨げる
- 資格制限の排除が及ぶかどうかについて明言していない
- 処分を「犯罪の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内で行わなければならない」とされていること自体が、更生を妨げるおそれがある
参考:広島弁護士会
少年法の改正に関するQ&A
Q1.少年法とは?
少年法とは、非行少年に対して性格や環境の調整を行う、特別な刑事司法に関する法律のことです。
Q2.なぜ少年法改正するのか?
少年による凄惨な殺人事件や重大事件が増加傾向にあり、時代に即した内容への改正が求められたからです。
Q3.2021年の改正では、大きく何が変更される?
2021年の改正により「18、19歳の場合は、起訴されて刑事裁判の対象となった段階で、実名や本人と推定できる情報の報道が可能」となります。
まとめ
今回は少年法の改正について詳しくご紹介しました。
少年法の概要に加えて、改正遍歴や2021年における改正の変更点について、おわかりいただけたのではないでしょうか。
50年前の18歳と、20年前の18歳と、今の18歳の育った環境が大きく違うように、子供に対する認識は、時代背景によっても左右されます。
今後も議論を重ねることで、よりよい法律のかたちが見つかることを願っています。
本記事が少しでもあなたのお役に立てば幸いです。
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