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北神圭朗議員に聞く!これからの、日本の土地をどのように守っていくか

投稿日2024.5.9
最終更新日2024.05.09

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近年外国資本による土地・不動産購入について、多数のメディアで取り上げられるようになったことにより、ようやくその危険性に関心が集まるようになりました。岸田首相も2024年3月25日の参議院予算委員会にて外国人の土地取得規制について検討を進めることを明言しました。

北神圭朗議員は早くからこのことについて国会などで問題提起しており、実効性のある法整備を求めて活動を続けてきました。今回のインタビューでは外国資本による土地・不動産の購入実態と現行の外国人土地法などの問題点を中心に北神議員の政治・政策への思いをお伺いしました。

(聞き手・文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)
(取材日:2024年3月13日)

北神圭朗議員インタビュー

北神 圭朗(きたがみ けいろう)氏
1967年生まれ。18年間米国ロサンゼルスで暮らす。
当時の大蔵省入省後、主税局や内閣総理大臣秘書官補、金融庁などを歴任。
衆議院議員(4期)で、民主党政権下では内閣総理大臣補佐官
などを担当
特技は剣道(三段)。

(1)政治家になるきっかけと政策づくりへの挑戦

―政治家を目指すことになったきっかけを教えてください

私は父親の仕事の関係で、生後9ヶ月でアメリカのロサンゼルスに移住し、18年間を過ごしました。幼少期や学生時代をアメリカの中で過ごした経験から、祖国やその文化に対する意識が高まったのだと、今では思います。

日本に戻ってきたのは高校卒業後。大学は京都大学法学部に進学しました。日本で過ごす中で、日本人が自国の文化に関心を持たないことに悲しさを感じました。

20代の頃、特に強く印象に残っている出来事があります。それは1991年の湾岸戦争に対する日本の有識者の態度でした。イラクがクウェートを侵略したことを受けて、米国は期限内にイラクが撤退しなければ、アメリカのブッシュ(父)大統領はイラクを攻撃することを明言していました。

それに対し、日本の有識者は「冷戦も終わったこの時代に、実際には攻撃しないだろう」と、のんきな反応を示したのです。大統領の言葉がいかに重いのか、アメリカで育った私としては不思議に思いました。

実際、その後、アメリカがイラクに対してミサイルを発射する光景が世界中に生中継されました。

しかし、今度は、我が国の有識者たちから「侵略するイラクも悪いが、それを武力で対応するアメリカも悪い」といった「ことなかれ」主義的な発言が発信されました。世界的にはこうした発言は、傍観者の無責任な言葉として聞こえるだけです。我が国における防衛に対する無理解に疑問を感じました。

こうした体験もあり、政治家になって日本の外交・安全保障に対する根本的な認識を転換しなくてはならないという思いを強くしました。

―最初のステップは大蔵省の入省だったと思います。それから10年間、官僚として国を支えてきました。

政治家を志す上では、まず社会を経験しなければならないと思っていたため、大蔵省に入省しました。総理大臣秘書官補や金融企画局など、さまざまな立場で合計10年間、政策立案に取り組みました。

志高い先輩や同僚が周りに多く、官僚としての充実感も味わうことができました。一時期は、このまま官僚で働こうと考えたこともありました。

ただそれと同時に国際環境が大きく変わる中で、世界2位の経済大国・日本も世界の中でより現実的な外交を展開しなければいけない、といった問題意識も強く持ち続けていました。

最後は、「国家の大きな指針を決めるのはやはり政治だ」と自分の中で結論を得ました。35歳の時に財務省を辞め、政治家としての道を歩むことを決意しました。

―私たちのイメージとして、「政党で政治を行う」「政党で政策を作る」があります。政党に所属しない、無所属の国会議員として政策づくりするとはどういうことなのでしょう?

当初は、戦後のほとんどの政権を担ってきた自民党の外交・防衛政策を変えるために、野党・民主党(当時)に所属していました。保守主義的な国家づくりを目指す私としては、党内で悩ましい局面もありましたが、内閣総理大臣補佐官などの役割を果たし、党内からの変革を試みました。

その後、希望の党に合流した後の落選を最後に、自分としては、「これまでの政党組織には義理を果たした。最後の戦いになるかもしれない次の選挙では、自分の思いを率直に有権者にぶつけたい」と考え、以降、無所属として活動を続けています。その中で志を同じくする仲間と院内会派の「有志の会」を結成しました。

たしかに政党に所属しないデメリットはあります。やはり民主主義は数がものを言う側面がどうしてもあるからです。

しかし、それなりに大きな影響力を持つことができることも分かってきました。政府や与党が示す政策の問題点を指摘しつつ、こちらの提案をすれば、政策を動かすこともできます。

たとえば、外国人の土地取得問題に関して、2023年1月末の予算委員会の質問を受けて、政府は「農地の届け出をするときに国籍を記入しなければならない」といった制度改正を同年9月に行いました。

また、無所属であれば、党の意向を気にせず、直接、自分が良かれと思う政策提言ができます。国会での質疑についても党内の順番を待つ必要もなく、多くの機会を得ることができます。

今後も、政策実現のために今の立場で何をなすべきかを模索しながら、もっとも効果的な方法で国民国家に貢献したいと思っています。

北神圭朗議員インタビュー

(2)「保守主義」とは、どのような考えか

―政治方針について、北神議員は「保守政治」という言葉を掲げられています。

私が掲げる「保守」は、政治学における保守主義の思想を指しています。もともとはアイルランドの政治家兼思想家・エドマンド=バークの考えに基づく国家や社会への姿勢です。

「保守主義」では、個人の自由も重要と考えながらも、それを超える伝統や慣習こそが大切だと考えます。過去から現在、そして将来へと、先人たちが築いてきた文化や慣習を私たちが受け継ぎ、価値を付加して、将来の世代に引き継いでいくという考え方です。

―過去を肯定しながら、未来を作っていく思想という印象があります。

「古典的リベラル」は、個人の自由に最大の価値を置く考えですね。対して「保守主義」は共同体を大事にします。

日本には、日本として育んできた独自の文化や価値があります。先人からの歴史や伝統、共同体を受け継ぎ、未来の世代に継承する政治を実現したいと思っています。

(3)北神議員が指摘する「外国人の土地取得問題」の懸念と解決への道

―外国人の土地取得問題について積極的に取り組まれています。どのような点が問題なのでしょうか?

外国人の土地取得問題について、大きく2つの懸念があります。

まず1つ目は、住宅や土地価格の高騰です。たとえば、私の地元の京都ではすでにこの問題が顕在化しています。その影響で若者が京都の中心部に住むことが難しくなり、周辺地域に人口が流出しています。同じような現象は東京でも見られます。

カナダでも以前、中国資本や中国人による土地や不動産の購入により、地元の人々が住めなくなるといった事態になりました。これに対応して、カナダ政府は昨年から外国人に対する法的規制を導入しました。

私は、他国の事例も参照しながら、日本も同様の規制を推進していく必要があると訴えています。やはり私たちの生活の基盤である「衣・食・住」の「住」を国民のために守る必要があります。

「国土利用計画法」にも「国土の利用は、国土が現在及び将来における国民のための限られた資源である」との認識が示されています。だからこそ「公共の福祉を優先する」という規定もあります。住宅価格の高騰によって本来求める住宅に手が届かないといった事態は深刻な社会問題です。

2つ目の問題は、外国人による農地や森林の購入が進んでいることです。農地や森林は水源や食料など生活の基盤です。だからこそ国家安全保障の観点からも、土地を外国資本や外国人に売り渡すことには慎重でなければなりません。

特に中国資本や中国人が土地を購入していることに懸念を抱いています。彼ら一人ひとりに悪意がないことは、私もよく理解はしています。しかし、残念ながら、彼らは同時に中国共産党の影響下にあることも、よくよく考える必要があります。

強権的な政治体制下にある個人は、政治からの命令や指示に背くことはなかなかできません。いつでも中国共産党から指示があれば、我が国の不利益になるような行動を取る可能性があると考えざるを得ないのです。だからこそ法規制を進める必要があります。

実際、2023年、日本国内で中国政府の拠点が複数見つかりました。それらの拠点となる建物は、中国が国家として購入していたわけではなく、悪意を持っていない中国人が所有する建物の一部を利用していたのです。

無論、中国以外の国も、日本の国家や産業・個人に対するスパイ活動や工作を行っている可能性があるため、別途対策も必要です。

―このような問題を解決するためには何をしなければならないのでしょう?

日本において対策が進まない背景には、外国人が日本の土地を取得することに対する危機感とそれらを規制するという強い決意が足りないことが挙げられます。

まず、やるべきことは、政府として外国資本や外国人が日本の土地やマンションおよび住宅をどの程度購入しているかを正確に把握することです。データや統計がなければ、問題の本質を分析し、効果的な対策をとることが難しいからです。

その上で、規制するにあたっての課題は、日本政府が1994年にWTOで結ばれたGATS(サービスの貿易に関する一般協定)において、土地の取引は原則内外無差別となっていることです。これを理由に、政府は一方的に外国資本の土地を規制することはできないと主張します。

ところが、一方で、2020年にRCEP(地域的な包括的経済連携協定)を中国などと結び、土地取引に関して、「日本国における土地の取得又は賃貸借を禁止し、又は制限することができる」とする留保条項を盛り込んでいます。

このように、一見相互に矛盾しかねない国際条約を締結しています。しかし、国際法上、2つの条約は両方有効だとされます。だから、RCEPでは土地規制ができると合意していても、政府は前者のGATSの内外無差別の原則を気にして、なかなか国内での法規制が前に進まないのです。つまり、RCEPに基づいて日本が規制した場合、中国はGATSの原則に基づいて、WTOで訴訟を起こすことを恐れているのです。

しかし、調べたら、他の国々では日本と同様にGATSで内外無差別を約束していながら、国益などに反する場合、外国資本に対して堂々と規制をかけています。日本だけが法整備を進められない理由にはならない、と私は訴えています。

残念ながら、まだこの問題に対する認識が党派を超えて広まっていない現状がありますが、今後も与野党を問わず、一人ひとりの議員と連携し、取り組んでいきたいと思います。

北神圭朗議員インタビュー

(4)北神議員の今後の展望

―今後の取り組みについて、注力したいことがあれば教えてください。

日本が他国に依存せず自立した国になるために政策づくりに邁進したいです。世界が、ロシアによるウクライナ侵攻などの不安定な状況に直面している中、日米関係も今後の展開が不透明です。日本は国力強化し、外部からの依存を減らすことが必要です。もちろん、自立した国には強力な外交・防衛を整備することが不可欠です。

しかし、そのためには家族政策と教育の充実を通じて「人づくり」に力を入れつつ、技術革新を促進することにより、経済を強化することが重要です。強い防衛は、強い経済の上ではじめて成立します。日本が自力で自らを守り、成長できる国づくりのための政策を実現していきます。

北神圭朗議員インタビュー

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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