「政治をもっと身近に。」
政治に関する情報をわかりやすくお届けします。

政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー日本維新の会・池畑こうたろう議員に聞く! 農業が持つ課題とこれからの方向について

日本維新の会・池畑こうたろう議員に聞く! 農業が持つ課題とこれからの方向について

投稿日2024.7.5
最終更新日2024.07.05

Warning: Undefined variable $pots_id in /home/learise/stg-ymzk.com/public_html/pxtnuzmy/wp-content/themes/myTheme2/single.php on line 48

日本のカロリーベースの食料自給率は先進国の中でも非常に低く、同時に農業従事者の高齢化や新規就労者減少が課題として叫ばれています。その背景には農業従事者の生活の厳しさも大きな一因と指摘する声もあります。今回のインタビューでは、農業高校での指導経験を持つ日本維新の会・池畑こうたろう議員に、今年の通常国会で成立した「食料・農業・農村基本法」に取り組んだ姿勢や思い、また池畑議員が政治家を志したきっかけなどについてお伺いしました。

(聞き手・文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)(取材日:2024年6月4日)

池畑こうたろう議員インタビュー

池畑 こうたろう(いけはた こうたろう)議員
1974年生まれ。サウジアラビア王国で小学校生活を送る。
農業高校・農業大学校卒業後は、農業高校で約9年間、実習助手として勤務。
2009年兵庫県議会議員で当選(2期)、2021年衆議院議員選挙で初当選(1期)。
祖父は、元衆議院議員5期の大上 司 氏。

(1)高校生の時から農業一筋。9年の教員生活から政治の道へ

ー農業高校を卒業されていますが、そもそもなぜ農業に興味を持ったのでしょうか?

東京に生まれ、幼少期は横浜、小学生のときはサウジアラビア王国で過ごしました。そのため、小さなころは農業に触れる機会が豊富にあったわけではありません。ただ父方の祖父が農学博士で、母方の祖父も農業高校出身の国会議員だったため、身近な存在であったことは確かです。そのような中で中学生のころ、進路に悩んでいた時にある方から農業高校に行ってみてはどうかと提案を受けたこともあり、農業の道に進むことを意識し始めたように思います。

岡山県の農業高校にいざ入学してみると、とにかく水が合いました。農業実習が本当に楽しくて、夏休みも関係なく校内の農園に通い続けました。

そのため高校卒業後の進路としてより専門的に農業を学ぶことができる農業大学校を選択したことは自分にとって自然なことでした。先進的な農業を実践する農家のご子息も多く、彼らの視点や経験に驚くこともしばしばでしたが、朝から晩まで実習を行い、本当に充実した生活を送ることができました。そのままトマト農家になりたいと真剣に悩んだほどです。

その時、母校の農場長から連絡があり、ウチで働かないかとお誘いを受けました。とてもお世話になった先生からのお誘いですし、母校でしたから、ご縁を感じ、戻ることにしました。教員免許を持っていなかったので、作業員として勤務しつつ、近隣の国立大学に通い、教員免許を取得しようと必死に勉強しました。数学などの一般科目はとても苦戦しましたが、校長先生をはじめ、先生方の協力を受けて、無事に教員免許を取得できたことは非常に感謝しています。

池畑こうたろう議員インタビュー

ー農業の道を歩んでいた池畑議員が、政治の道へ進むきっかけはなんだったのでしょう?

政治への関心は小さなころからありました。学生のころ田中角栄さんのドキュメンタリーを見て、政治家という職業に憧れを持っていました。農業大学校に通っていたころにはすでに政治家になることも将来の一つの選択肢として考えていましたね。農業に携わる中で多くの農家の思いや悩みに触れることも多く、それが日本の農政が抱える課題であることにも気づき、私の中で農業と政治がだんだんと交わってきたのです。

20歳を過ぎたころ、初めて祖父が国会議員だったことを知りました。興味を持っていた職業に就いていた身近な家族がいることに衝撃を受け、これは実際に政治家になる決断に至らしめた大きな出来事だったと思います。

農業高校に入学して以来、一貫して農業の道を歩んでいましたが、30歳を前にして、挑戦するなら今だと決意し、衆議院議員の公設秘書に。それに伴い、議員の選挙区でもある宝塚市へ拠点を移すことにしました。両親からは反対されましたが、妻が「よし、行こう!」と応援してくれたことはとても大きな心の支えになりました。勤務していた高校の先生や生徒たちが盛大に送り出してくれたので、しっかり頑張ろうと心が奮い立ったのをよく覚えています。

公設秘書を務めた後に、宝塚市で兵庫県議会議員に選出していただき2期務めたのち、2021年からは国政に舞台を移して活動しています。農業と教育をライフワークに政治に向き合っています。

(2)「食料・農業・農村基本法改正案」が可決。これからの農業政策は

ー本年度の通常国会で「食料・農業・農村基本法改正案」が成立しました。そもそもどのような法律でしょうか。

「食料・農業・農村基本法」は「農政の憲法」とも呼ばれ、日本の農業政策の大きな方向性を示している理念法(ある事柄に関する基本理念を定め、具体的な規制や罰則については特に規定していない法律)です。今回「食料・農業・農村基本法」が改正にかけられた背景には、気候変動や国際情勢の不安定さから食料安全保障が重視されるようになったからです。すべての国民が、将来にわたって良質な食料を合理的な価格で入手できるようにすることは国の責務です。食料安全保障とはこの責務に対して不測の事態が発生した場合の具体的な対応手順の整備などを進めておくことで食料供給の安全を確保することを目指しています。

日本維新の会も政府による改正案に対し、国会にて提案し建設的な議論を行ってきた自負があります。現在の日本は自分たちの食料を自国のみで確保することが難しい状況にあります。農林水産省の調査によると、現在の日本の自給率は38%ですが、輸入に依存する種子や肥料などを考慮すると実際の自給率は約7%と言われています。

私自身も食料安全保障上の危機感を持った象徴的な経験があります。ある時、自衛隊の幹部にお話をお伺いした際、「日本が有事になった場合、全自衛官のお腹を満たすための国内産の食料はどのくらい確保しているかご存知ですか?」と聞かれました。当時の私はその視点を持ち合わせていなかったこともあり、言葉に詰まってしまった。その自衛官の方に「数週間ですよ」と教えていただきました。

日本の安全保障を担う自衛隊向けの食料すら数週間しか準備できていないことに大きな衝撃を受けました。何らかの理由で輸入がストップすれば自衛隊の活動すらままならなくなり、国防上の危機に陥るシナリオもあり得るのです。

農業にまつわる政策は食料自給率に留意しながらも、貿易自由化とも歩調を合わせる必要がある分野です。すべてを両立させることはできませんから、高度な政治判断が必要です。だからこそ国民のみなさんにも自分たちが食べているものがどこから来ているのか関心を持ってほしいです。今回の改正案では、政治・行政・事業者だけではなく、消費者自身も食料に関連する問題を考えていくことを推奨することが明示されました。農業にまつわる政策は私たちの暮らしに密接に関わっているのです。

ー他にはどんな課題がありますか。

農業への就労を推進する上でも大きな課題があります。農業に携わる人が十分な所得を得ることができていない問題です。農家の所得を時給換算したデータの一つには、米農家の時給は約10円で、酪農農家に至ってはマイナス298円と示すものもあります。この状況で農業に新規就労したり、農業を継続したりしたいと思う人がいるでしょうか。

今回の改正案の議論の中心的な論点の一つが農作物の価格転嫁を推進することです。農業従事者の適切な所得を保証できるように、単純なバラマキには反対し別のあり方を模索していきたいです。政治家としては農家に対して現場に対してわかりやすく政策や制度を伝えて、十分な効果を発揮できるように周知することも大切ですね。

池畑こうたろう議員インタビュー

(3)チームとして農林水産業を育てていく

ー政治家としてやり遂げたい、成し遂げたいことはなんですか?

農林水産業における人材育成に力を入れていきたいです。その第一歩として法改正や立法を通じて、農林水産業の従事者が自立できる環境を整えるために努力を重ねたいと思います。従事者の最適な所得を保証する制度を整えることを通じて、農家が適正な収入を得られる環境を整備することは喫緊の課題だと認識しています。日本の農業が世界の好事例から学ぶ姿勢も重要ですね。

農業を学び、農業を教える中で、農業が国民全体を支える重要な営みであることを実感しています。「食料・農業・農村基本法」では、これからの時代に日本の農業が目指す大きな方向性が明示されました。ここからがスタートです。また、食そのものの安全性も大切なことで、子どもたちが安心して食べられるオーガニック給食の普及にも力を入れています。これからも是々非々で政策作りに邁進し、農業を初めとする一次産業に従事する方々や消費者の皆様、また子どもたちに寄り添った政策を作っていきます。

 

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
株式会社PoliPoliが運営する「政治をもっと身近に。」を理念とするWebメディアです。 社内編集チーム・ライター、外部のプロの編集者による豊富な知見や取材に基づき、生活に関わる政策テーマ、政治家や企業の独自インタビューを発信しています。