近年、日本では不妊症が問題となっており、不妊治療を受ける夫婦も増えています。不妊治療は高額な費用がかかるため、経済的な負担も大きいものです。
しかし令和4年(2022年)4月からは、不妊治療の保険適用範囲が拡大されています。それ以前は、体外受精などの不妊治療は保険の適用範囲外でした。現在は、夫婦が出産に向けた治療を前向きに検討できる状況になっていると言えるでしょう。
今回の記事では以下について解説します。
- 健康保険が適用される不妊治療内容
- 健康保険適用後の負担額
- 不妊治療の保険適用条件は?
- 不妊治療の保険適用によるメリット
本記事がお役に立てば幸いです。
1、健康保険が適用される不妊治療内容
不妊治療とは、夫婦が自然妊娠できない場合に、医療的な手段を用いて妊娠を促す治療のことを言います。治療方法は、夫婦の不妊原因や治療の目的によって選択されます。
令和4年(2022年)4月から健康保険が適用されている治療法は以下の通りです。
引用:厚生労働省
上記の治療法は、国の審議会(中央社会保険医療協議会)で審議し、有効性・安全性が確認されています。
(1)一般不妊治療
①タイミング法
基礎体温、超音波による卵胞径の計測、頚管粘液検査、尿中LH値などにより、排卵を予測し、性交のタイミングを指導する方法です。
②人工授精(AIH)
排卵日に合わせ、夫の精子を注入器で子宮内腔に送り込ませる方法です。
(2)生殖補助医療(ART)
①採卵・採精
採卵:卵巣から卵子を取り出します。
採精:精子を採取します。
②体外受精・顕微授精
体外受精:精子と卵子を体外で受精させた後(シャーレ上で受精を促すなど)、子宮に戻して妊娠を図る方法です。
顕微授精:卵子に注射針等で精子を注入し受精させる方法です。
③受精卵・胚培養
受精卵を培養し、細胞分裂を促して胚にすることで、移植に適した胚を選ぶことができます。
④胚凍結保存
余った胚を凍結保存し、後から移植ができる状態にします。
⑤胚移植
体外受精や顕微授精で作った胚を子宮内に戻し、妊娠を目指します。
2、健康保険が適用されない不妊治療内容
第三者の精子・卵子等を用いた以下の生殖補助医療は、保険対象外となります。
- 第三者の精子提供による人工授精(AID)
- 第三者の卵子・胚提供
- 代理懐胎
「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」(令和3年3月11日施行)の附則第3条に基づき、配偶子または胚の提供及びあっせんに関する規制等の在り方等について国会で議論中のため、保険適用の対象外となります。
3、健康保険適用後の負担額
健康保険適用後の負担額は、治療費の3割です。
また、治療費が高額な場合は高額療養費制度を利用できる場合があります。
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合、超過分を国が助成する制度です。利用したい場合は、加入している医療保険者に確認しましょう。
4、不妊治療の保険適用条件は?
ここでは、体外受精・顕微授精の保険適用条件を紹介します。
(1)年齢の条件(体外受精・顕微授精)
年齢は「治療開始時において女性の年齢が43歳未満であること」が条件です。43歳以上の場合は自費診療になります。
(2)回数の条件(体外受精・顕微授精)
回数の条件は以下の通りです。
初めての治療開始時点の女性の年齢 | 回数の上限 |
40歳未満 | 通算6回まで(1子ごとに) |
40歳以上43歳未満 | 通算3回まで(1子ごとに) |
5、不妊治療の保険適用によるメリット
ここでは、不妊治療の保険適用によるメリットを紹介します。
(1)経済面での負担が軽減される
不妊治療は、高額な治療費用がかかります。しかし保険適用により、一定の費用が補助されるため、経済面での負担が軽減されます。
(2)不妊治療を受ける機会が増える
不妊治療は、一度の治療で妊娠するとは限らないため、何度も治療を受ける必要があることがあります。しかし、治療費用が高額であれば、何度も治療を受けることが難しい場合があります。保険適用により、不妊治療を受ける機会が増加します。
(3)精神的な負担が軽減される
不妊治療は、体に負担がかかるだけでなく、精神的な負担も大きいものです。治療費用が高額である場合、何度も治療を受けられないという経済面での不安もあります。保険適用で費用が軽減されることで、経済面の不安が緩和され、精神的な負担も軽減されます。
まとめ
今回の記事では不妊治療の保険適用について解説しました。
不妊治療に関する日本の課題は多く残っているため、今後の動きをぜひチェックしておきましょう。
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