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障害者総合支援法とは?目的や自立支援サービスについて簡単解説

投稿日2021.4.23
最終更新日2021.04.23

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障害者総合支援法とは、障害福祉法の1つで、障害者の自立に対する行政支援について定めたものです。
今日、提供されている多くの支援サービスは、障害者総合支援法に基づいています。

今回の記事では

  • 障害者総合支援法の概要
  • 障害者の定義
  • 障害者総合支援法によるサービス
  • 障害者総合支援法の改正点

について、分かりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、障害者総合支援法とは

障害者総合支援法
「障害者総合支援法」は、正式には「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」と言います。

その名の通り、障害のある人がより快適に過ごせるよう、総合的な支援について定めた法律です。
今までの障害者自立支援法の問題点を見直す形で、2013年4月に施行されました。

 参考:障害者総合支援法が施行されました|厚生労働省

(1)障害者総合支援法の基本理念

障害者総合支援法の基本的な理念は以下の通りです。

  • 障害の有無関係なく全ての国民が個人としての尊厳を尊重される社会を実現すること
  • 障害のある人が慣れ親しんだ土地でできるだけ支援を受けられること
  • 障壁となる制度や観念などあらゆるものの除去に努めること

障害者総合支援法によるサービスは、こうした考え方に基づき実施されています。

(2)障害者総合支援法の成立背景

障害者に関する施策は、2003年に導入された「支援費制度」がきっかけであると言われています。 

行政側の指示で利用するサービスが決まる「措置制度」から、サービス選択時の費用を支援する「支援費制度」に変更されたことで方針の転換が進んだのです。

支援費制度の導入により、障害者本人が自身の意思でサービスを選べるようになったことから、利用者が急増しました。

しかし国と地方自治体の財源確保が困難となり、障害の種類ごとのサービス格差や地域格差などの問題が生じました。

こうした課題を解決し、障害者が地域で安心して暮らせる社会を実現するため、2006年に施行されたのが「障害者自立支援法」です。

「障害者自立支援法」により、支援サービスの質が上がった一方、

  • サービスを受けられる基準が不十分である
  • 重い障害ほど利用者に負担がかかる(応益負担)

などの問題点が指摘され、2010年に同法は改正されました。

そして、2013年4月

  • 法の基本理念
  • 利用対象となる障害者の範囲見直し

などにより、施行されたのが、現在の「障害者総合支援法」なのです。 

参考:障害福祉サービス等|厚生労働省

2、そもそも障害者とは

障害者とは、一般的に

  • 身体障害
  • 的障害
  • 精神障害

などによって、生活や仕事に制限を受けている人を指します。

このような障害者は、行政が提供するさまざまな支援を受けることが可能です。
ただ、行政の支援を利用するには、規定の「障害者」の定義を満たす必要があります。

ここでは、日本における

  • 障害者の定義
  • 障害者の総数

について確認しておきましょう。

(1)障害者の定義

日本では障害のある人に対する様々な法律があり、その法律ごとに「障害者」の定義が異なっています。
たとえば、上記で紹介した「障害者総合支援法」の支援対象となる「障害者」には、以下の基準があります。

  • 身体障害者(身体障害者福祉法に基づく)のうち18歳以上の人
  • 知的障害者(知的障害者福祉法に基づく)のうち18歳以上の人
  • 精神障害者(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づく)のうち18歳以上の人
  • 難病(厚生労働省が定める程度)のある18歳以上の人

対象となる難病としては、2019年時点で

  • クッシング病
  • パーキンソン病

など361疾患が指定されています。 

また「障害者差別解消法」における「障害者」の定義は、障害者手帳を所持している人以外にも

  • 身体障害
  • 知的障害
  • 精神障害
  • そのほか心身機能の障害

があり、社会生活に大きな制限を受けている人すべてとしています。
なお、18歳未満の場合は、児童福祉法に基づき

  • 身体障害
  • 知的障害
  • 発達障害
  • 難病

がある児童を、「障害児」としています。

参考:障害者総合支援法の対象疾病(難病等)厚生労働省
参考:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律

(2)障害者の総数

内閣府の調査によると、2020年の障害者の総数(推計)は約964万人で、その数は人口の約7.6%に相当するほどでした。

また、2020年時点での障害者の割合は、

  • 身体障害者は約436万人
  • 知的障害者は約108.2万人
  • 精神障害者は約419.3万人

です。

2016年時の統計と比べると約105万人増えていて、何らかの障害をもつ人は年々増加傾向にあるようです。

この主な理由として、

  • 日本の全人口における少子高齢化の進行
  • 障害者制度の浸透による障害認定を受ける人の増加

などが考えられます。

 少子高齢化によって、日本の全人口における高齢者の数は増加傾向にあります。
年齢を重ねるにつれ、身体機能の衰えから不自由さを訴える人が多くなっている傾向にあります。

とくに身体の障害をもつ高齢者の増加は著しく、1970年には30%ほどだったものが、調査当時の2016年の統計データでは約72%という数値が示されました。 

また、ここ数年で社会全体に障害者制度が浸透してきたことで、結果として障害認定を受ける人が増加し、障害者数の増加につながったと推測されています。

参考:令和2年版 障害者白書「障害者の全体的状況」|内閣府
参考:平成28年版 障害者白書「障害者の状況」|内閣府 

3、障害者総合支援法による自立支援サービス

障害者総合支援法
障害者総合支援法では

  • 自立支援給付
  • 地域生活支援事業

の2本柱をもとに、障害者の自立を支援するサービスを提供しています。

ただ、これらのサービスを利用するためには、原則として障害者手帳が必要となります。
身体以外の障害をもつ人は、本人の希望や医師の診断書などがあれば、利用申請をすることも可能です。 

利用の詳細については、現住所の市区町村の「障害福祉課担当窓口」に問い合わせることができます。

(1)自立支援給付

「自立支援給付」とは、サービス費用の一部を行政が負担するものです。
基本的には、国が主体となってサービスの類型や運用について定めます。

具体的には

  • 医療や福祉サービス
  • 就労訓練
  • 自立支援医療
  • 相談支援事業
  • 福祉用具(補装具)

などの費用が個別に給付されます。

 法律上、サービスを利用した時は原則として、利用者量の1割を利用者が負担しますが、住民税が非課税の世帯であれば全額給付となります。

負担額は以下のように、所帯の前年の収入に応じて決まっており、多くの人が低料金で利用できるように設定されています。

  • 生活保護受給世帯…0円
  • 市町村民税非課税世帯…0円
  • 前年の収入約300万円以上~約600万円以下…9,300円
  • 上記以外…37,200円

参考:障害者の利用者負担|厚生労働省

(2)地域生活支援事業

「地域生活支援事業」は、障害のある人が自立した生活を送るために、地域の実情に応じたサービスを利用できる事業です。

具体的には

  • 相談支援
  • 日常生活で用いる福祉用具の給付
  • 手話通訳などの意思疎通に対する支援
  • 成年後見制度への支援
  • 一人では外出が難しい人へ付き添う移動支援
  • 障害のある人への住まいを提供する福祉ホーム

などのサービスがあります。

ただ、都道府県や市町村などの自治体が主体となって運用しているため、住んでいる地域によってサービス内容や負担が異なります。

参考:障害福祉サービスについて|厚生労働省
参考:地域生活支援事業について|厚生労働省

4、障害者総合支援法の改正点

障害者総合支援法は、さまざまなケースに対応するため、3年を目安に既存サービスの検討・措置を行うことが決められています。

直近の障害者総合支援法の一部改正は、2016年に法案が成立し、2018年に施行されました。

 その主な改正点は

  • 新しいサービスの創設
  • 重度訪問介護の対象の拡充

の2点です。

それぞれについてみていきましょう。

 (1)新しいサービスの創設

改正によって、以下の3つのサービスが新設されました。

  • 自立生活援助
  • 就労定着支援
  • 居宅訪問型児童発達支援

それぞれについて内容を確認していきましょう。

①自立生活援助

これは、施設やグループホームでの生活から抜け、地域で自立して一人暮らしを希望する障害者を支援するサービスです。 

定期的に利用者の家を訪問し

  • 現状の把握
  • 家事の援助
  • 医療機関などとの連絡調整

などの必要な支援を行い、必要に応じて電話やメールでも対応します。

②就労定着支援

就労による環境の変化で、生活面に問題が生じていないかを、相談を通じて把握し、継続して仕事ができるよう支援するものです。

支援の対象となるのは、就労移行支援などを受け、一般就労した障害者になります。

 ③居宅訪問型児童発達支援

居宅訪問によって、児童発達支援を提供するサービスです。

支援の対象となるのは、重症心身障害など重度の障害や免疫力の低下から、重篤な感染にかかりやすいため、外出が著しく難しい障害児になります。 

(2) 重度訪問介護の対象の拡充

重度訪問介護とは、一人で行動することがほとんどできない重度の障害者に対して、訪問介護をするものです。

この重度訪問介護の対象が、改正により広がりました。
従来では障害の程度にかかわらず、対象となるのは基本的に「自宅」にいる障害者でした。

しかし2018年の改正によって、利用者の混乱防止や医療従事者に正しい情報を伝達するなどを目的に、対象の拡大が行われたのです。

具体的には、重度の障害者が医療機関に入院しても、利用者の事情をよく知っているヘルパーによる継続的な支援が可能となりました。

参考:平成30年度障害福祉サービス等報酬改定について|厚生労働省

まとめ

今回は、障害者総合支援法について紹介しました。

障害者総合支援法では、障害者の自立や社会生活を支援することを目的に、個々人の事情や環境などを踏まえて本人に合ったサービスを提供しています。

また、他の自立支援サービスを利用することで、障害がある人やその家族の負担をさらに減すことも期待できるでしょう。

既存の政策に加えて、今後さらに拡充される社会保障や障害福祉サービスについても注目していきたいですね。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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