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安全保障とは?日本の安全保障政策及び課題について簡単解説    

投稿日2021.2.17
最終更新日2024.06.17

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安全保障とは非常に多義的な概念ですが、一般的に国家の安全と平和を維持する為の取り組みを指す言葉です。

日本では安全保障のためにどのような政策を行っているのか、といった疑問を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで本記事では、

  • 安全保障の意味
  • 日本の安全保障政策

などに関して分かりやすく説明していきます。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、安全保障とは


安全保障とは、ある集団の生存や独立、財産などの価値に対し、脅威が及ばないよう何らかの手段を講じることで安全な状態を保障することとされています。

ある集団とは、国家を指すことが一般的です。
従来は、国家の軍事的な脅威に関する事柄が、安全保障に関する中心的な問題でした。

国家の領土を保全し、他国の侵略から国を守ることが国家の生存のための最重要課題とされていたのです。
しかし脅威の種類は多様化していき、今日では軍事的なものに限らず、

  • 経済
  • 外交
  • エネルギー
  • 文化

等まで安全保障の範囲に含まれるようになりました。

2、日本の安全保障政策

我が国の外務省によると、日本の安全保障について、

「日本の平和と安全を維持し、その存立を全うすることは、政府の最も重要な責務です。また、日本の安全保障政策を高い透明性をもって示すことも政府が果たすべき役割です。」

引用:日本の安全保障と国際社会の平和と安定

と説明しています。

日本は、米国を始めとする関係国と緊密に連携し、国際的協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から、安全及び地域の平和と安定を実現することを基本方針として掲げています。

「積極的平和主義」について、政府は以下のように説明しています。

「国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していくこと」

引用:防衛装備移転三原則

湾岸戦争時に軍隊の派遣などの人的貢献を日本ができず、国際的な批判を受けたことを背景に、それ以後日本は国連PKOへの参加など、国際社会の平和・安全に対する政策を進めて来ました。

特に「積極的平和主義」の言葉が日本の安全保障政策として積極的に使用されるようになったのは、第二次安倍政権(2012年12月~2014年9月)以降です。

では、「積極的平和主義」のための安全保障政策とは具体的にどのような政策なのでしょうか。
主要な4つの取り組みについて以下でご紹介します。

(1)国家安全保障会議

我が国の安全保障に関する重要事項の審議及び、外交・安全保障の司令塔となる機関として、内閣に国家安全保障会議(NSC: National Security Council)が2013年12月に設置されました。

内閣総理大臣のリーダーシップの下、外交・安全保障に関する様々な課題について、 平素から迅速に対応できる実質的・戦略的な議論を行っています。

主に以下のような事項について審議が行われています。(国家安全保障会議設置法2条)

  • 国防の基本方針
  • 防衛計画の大綱
  • 国際平和協力業務の実施等に関する重要事項

(2)国家安全保障戦略

NSCと同時に、我が国として初めてとなる国家安全保障戦略(NSS: National Security Strategy)が定められました。

NSSは、国家安全保障に関する外交政策及び防衛政策に関する基本方針を定めたものを文書の形にしたもので、積極的平和主義の具体的内容を国内外に示すものとなっています。

日本の安全保障の為にとるべき戦略的アプローチとして、以下の6つを定めています。

  1. 日本の能力・役割の強化・拡大
  2. 日米同盟の強化
  3. 国際社会の平和と安定のためのパートナーとの外交・安全保障協力の強化
  4. 国際社会の平和と安定のための国際的努力への積極的寄与
  5. 地球規模課題解決のための普遍的価値を通じた協力の強化
  6. 国家安全保障を支える国内基盤の強化と内外における理解促進

NSSにおいても日本のためだけの安全保障ではなく、他国との連携や国際的な課題への取り組みを主軸としているのが分かります。

アメリカでは大統領が変わる毎に議会に提出することが義務付けられており、各政権の信念や価値観が反映され、興味深いものとなっています。

2017年12月にトランプ政権が発表したNSSにおいては、「アメリカファースト」などの米国第一主義を重視する姿勢が示されていました。

参考:トランプ大統領、「国家安全戦略(NSS)」文書を公表。気候変動を「グローバル脅威」から除外。「アメリカ・ファースト」を強調(RIEF)・一般社団法人環境金融研究機構

(3)防衛装備移転3原則

2014年4月、国家安全保障戦略に基づき、防衛装備の海外移転に関して、武器輸出三原則等に代わる新たな原則として、「防衛装備移転三原則」が策定されました。

従来の原則である武器輸出三原則とは、1967年に佐藤栄作内閣によって示された武器の輸出規制のことです。

簡単に言うと以下の国に当てはまる場合には武器の輸出を認めないという原則になります。

  • 共産圏諸国
  • 国連決議による武器禁輸国
  • 国際紛争当事国又はそのおそれのある国

更に、三木内閣の時に、これらの国に当てはまらない場合にも輸出を慎む見解が示され、全面的な禁輸が原則となりました。

対して、新しく定められた防衛装備移転三原則とは、以下の三原則を指します。

(1)移転を禁止する場合の明確化(第一原則)

(ア)当該移転が我が国の締結した条約その他の国際約束に基づく義務に違反する場合,(イ)当該移転が国連安保理の決議に基づく義務に違反する場合,又は(ウ)紛争当事国(武力攻撃が発生し,国際の平和及び安全を維持し又は回復するため,国連安保理がとっている措置の対象国をいう。)への移転となる場合は,防衛装備の海外移転を認めないこととしました。

(2)移転を認め得る場合の限定並びに厳格審査及び情報公開(第二原則)

上記(1)以外の場合は,移転を認め得る場合を,(ア)平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合,又は(イ)我が国の安全保障に資する場合等に限定し,透明性を確保しつつ,厳格審査を行うこととしました。

また,我が国の安全保障の観点から,特に慎重な検討を要する重要な案件については,国家安全保障会議において審議するものとしました。国家安全保障会議で審議された案件については,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)を踏まえ,政府として情報の公開を図ることとしました。

(3)目的外使用及び第三国移転に係る適正管理の確保(第三原則)

上記(2)を満たす防衛装備の海外移転に際しては,適正管理が確保される場合に限定しました。具体的には,原則として目的外使用及び第三国移転について我が国の事前同意を相手国政府に義務付けることとしました。

引用:防衛移転三原則

これをまとめると以下のようになります。

  • 移転を禁止する場合の明確化(国際的な平和と安全の維持を妨げる場合は輸出しない)
  • 移転を認め得る場合を限定し、厳格審査及び情報公開を行う
  • 目的外使用及び第三国移転に係る適正管理の確保

この三原則を満たした場合、武器・技術等の防衛装備の移転を認めることにしているのです。

改正の理由としては、

  1. 原則禁止とされてきた武器の移転について、20件を越える例外的な措置がとられてきた
  2. 個別的に判断するのではなく、改めて移転を認める際の要件を定める必要性が生じたこと
  3. 国際共同開発などが促進されている状況において、全面的な禁輸は現実的でない

以上のように考えられた為です。

(4)法整備

安全保障に関する法制度の整備も進められています。

2014年7月には、「国の存立を全うし,国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」閣議決定がなされ、2015年5月には、平和安全法制関連2法(平和安全法制整備法および国際平和支援法)が成立しました。

この法整備によって、国連PKO及びその他の国際的な平和協力活動へのより幅広い参加が可能になり、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態や、国際社会の平和及び安全を脅かす事態において、他国の軍隊に対する支援活動が可能になります。

また、特に重要なポイントとして、我が国による武力行使が容認される条件として、「新三要件」が定められ、集団的自衛権の行使が場合により認められるようになりました。

集団的自衛権とは、同盟国などが攻撃された際に、自国が直接攻撃をされていなくとも、協同で防衛のために必要な措置を取ることができる権利です。

憲法9条の解釈上、行使が認められていなかった集団的自衛権の行使が場合によっては可能になったことで、とても話題になりました。

武力行使の要件となる旧三要件と新三要件を見比べてみましょう。

旧三要件

  1. 我が国に対する急迫不正の侵害があること
  2. これを排除するために他の適当な手段がないこと
  3. 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

新三要件

  • 我が国に対する武力攻撃が発生したこと,又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること

  • これを排除し,我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がないこと
  • 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

引用:防衛省

最も変化したのは第一要件で、「我が国」に対する侵害に加え、「密接な関係にある他国」への武力攻撃が発生した場合にも武力行使が認められることが明確になっています。

集団的自衛権とは?なぜ必要なのか、日本に関わる2つの自衛権について簡単解説

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3、日本の抱える課題|背景


我が国を取り巻く安全保障環境に関して、大きく分けて、

  • グローバルな問題
  • アジア太平洋地域

における問題があります。
特に、アジア情勢は近年緊張が増している傾向にあります。

そこで、

  • 中国、韓国との領土問題
  • 北朝鮮の核開発問題

の観点から簡単に説明します。

(1)領土問題

中国・韓国と日本の間には現在、外交政策上の課題として領土問題がそれぞれ存在しています。
中国との間では「尖閣諸島」、韓国との間では「竹島」の領有権が争われています。

日本と相手国の双方が自国の領土であると主張し、実効的支配を強めようとしている為、中々解決の糸口がみられません。

日本政府は領土問題に関して、以下の見解を示しています。

「尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかであり,現に我が国はこれを有効に支配しています。尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題はそもそも存在しません。」

「竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに日本固有の領土です。韓国による竹島の占拠は、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠であり、韓国がこのような不法占拠に基づいて竹島に対して行ういかなる措置も法的な正当性を有するものではありません。日本は竹島の領有権をめぐる問題について、国際法にのっとり、冷静かつ平和的に紛争を解決する考えです。」

引用:領土主権対策企画調整室

領土問題に関しては平和的解決が求められる為、日本政府は、国際社会に説明を尽くし理解を得ること、国際法裁判所による第三者機関を通じた解決等を目指しています。

以下の記事では日本及び世界の抱える領土問題について更に詳しくご紹介しています。

領土問題とは?日本及び世界の抱える領土問題について

「領土問題」とは、特定地域の領有権をめぐって複数の国が争う国際問題です。 世界を舞台にした陣取りゲームをイメージするとわかりやすいかもしれません。 最近では、南シナ海における中国の領有権の主張をめぐって、アメリカと中国の緊張が高まっていますよね。 そこで今回は 日本が抱える領土問題 世界の領土問題 領土問題を解決する国際司法裁判所 などに焦点を当て、「領土問題...

(2)北朝鮮の核開発

北朝鮮による核兵器の開発・保有や核実験によって、北朝鮮と日本を含む周辺国及びアメリカとの間で問題が生じています。

ミサイル発射が度々報じられ、日本海に落下することもあります。
なぜ北朝鮮は、国際社会に非難され、厳しい経済制裁を加えられながらも核開発を継続しているのでしょうか。

第一の理由として、冷戦を背景に北朝鮮と韓国との間に生じた朝鮮戦争があります。

朝鮮戦争は1953年に休戦協定が結ばれたものの未だ正式に終結はしておらず、北朝鮮側としては自国を防衛し、独自の政治体制を維持する手段として核開発を継続しています。

日本はアメリカなどと連携を強め、北朝鮮の完全かつ検証可能な非核化へ向けて交渉を行っていく必要があります。

4、日米安全保障条約

日米安全保障条約(安保条約)は、条約の是非が度々論じられることもあり、関心のある方も多いのではないでしょうか。

日本は、安全保障政策として、日米関係を主軸にした外交政策を基本方針としている為、戦後からアメリカとの関係が非常に重視されてきました。

第二次世界大戦の講和条約である「サンフランシスコ平和条約」と同時に、吉田茂内閣がアメリカと結んだ「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」は旧安保条約と呼ばれています。

サンフランシスコ平和条約で日本は独立を回復し、駐留していた軍は撤退することになりましたが、米軍に関しては旧安保条約によって引き続き日本に駐留することが可能になりました。

しかしこの条約では、日本がアメリカに基地を提供する義務を負うのに対し、アメリカの日本への防衛義務はありませんでした。

双務的な防衛条約の締結を求める声が上がり、1960年、岸信介内閣が安保条約を改定し、「日本と米国との間の相互協力及び安全保障条約」を締結しました。

これを旧安保条約と対比して新安保条約と呼びます。
新安保条約では、アメリカは日本に防衛義務を負うことになりました。

(1)メリット

安保条約を締結するメリットは、世界トップレベルのアメリカの軍事力によって日本の平和と安全を守ることができることです。

他国が日本に攻撃を行った場合、アメリカも敵に回すことになる為、他国に対する抑止力として働いています。

また、この条約のおかげで戦後の日本は防衛政策に重きを置かず、経済の復興に専念することができました。

(2)デメリット

デメリットとしては、日本の米軍基地の周辺住民との間の騒音・治安問題や、アメリカと日本の共同防衛が明記されたことで、アメリカの軍事戦略に巻き込まれるのではないかという懸念があります。

実際に、新安保条約が締結される際には、「安保闘争」という大規模なデモが生じました。
以下で安保闘争について見ていきましょう。

(3)安保闘争

安保闘争とは、新安保条約の制定に対する反対運動のことで、1960年5月20日に国会で与党のみの強行採決が行われて以降、連日国会に抗議デモが押し寄せました。

特徴的なのは、労働組合・学生・市民が多く参加した政治運動であったことです。

特に、警察官と全学連(全日本学生自治会総連合)などの学生の衝突が度々起こり、多数の重傷者を出しましたが、最終的には本条約が自然承認されました。

参考:日米安全保障条約

まとめ

本記事では、日本の安全保障に関して解説しました。
日本の安全保障政策は私たち国民の安全を左右するとても重要な政策です。近年の安全保障政策では特に、「積極的平和主義」に基づく国際的な安全への貢献がポイントとなっています。

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この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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