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国際法とは?世界のルールと日本の関係について簡単解説

投稿日2021.2.5
最終更新日2023.12.05

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日本に法律があるように世界にも法律があるのを知っていますか?
これは「国際法」と呼ばれ、ルールがないように見える戦争も戦時国際法という法律を守らなければいけません。

今回は

  • 国際法の歴史
  • 国際法と日本の関係
  • 日本が国際法違反で訴えられた南極の捕鯨事件

まで分かりやすく解説したいと思います。

1、国際法とは

国際法とは
世界には196カ国ありますが、国際法とはそれらの「国と国の関係を維持する」ための法律です。日本とアメリカの常識が違うようにそれぞれの国の常識は異なります。その違いによって思わぬ衝突やトラブルがないように世界の共通ルールを定めたのが国際法です。

国際法には

  • 国際人権法のような倫理的なもの
  • どこからどこまでがA国なのかという国家領域に関するもの

などその幅は広く、領土を国際法で決めておけばA国がB国にうっかり侵入してしまったというトラブルも未然に防ぐことができます。

では、国際法を守らなかった場合はどうなるのでしょうか?
国内法では法律を守らなければ逮捕されたり罰金を払うことになりますが、国際法では厳密な罰則は存在しません。

日本でスピード違反をすれば罰金を払いますが、それは国民の集合体である「国」が決めたルールを破り、「国」が罰則を与える権利を持っているからです。

しかし、国際法の場合は「国」よりも大きな権力を持つ者は存在しません。なので、罰を与える立場の人もいません。

「だったら、国際法の意味がないじゃん!」と思う人もいるかもしれませんが、国際法は世界の共通ルールです。ルールを守らなければ国際社会から批判を集めます。

グローバリゼーションが進む中で、自国だけで生きていける国はほとんどありません。

国際法を破って直接的な罰はありませんが、各国から制裁を受けたり、孤立することで苦しむことになります。具体的には経済的制裁など。

また、各国の集合体である国連の注意を無視しつづければ、武力行使で強制的に行動を停止させられる可能性もあります。

2、国際法の成立背景|変遷

ここでは国際法の発展過程を見ていきましょう。

(1)成立

国際法の起源は16~17世紀。「国際法の父」と呼ばれるオランダ人のフーゴー・グローティウスが1625年に『戦争と平和の法』という本の中で国家間、戦争にもルールが必要であると考えたのが国際法のはじまりです。

当時の戦争には明確なルールがなく、フーゴー・グローティウスが経験した三十年戦争では傭兵による民家の襲撃や残忍な略奪行為などが多発。

当時のヨーロッパは国境、国同士の線引きがかなり曖昧で、その背景が国を背負わない傭兵暴走のきっかけでもありました。

その後、ヨーロッパ全土の宗教戦争は激化、ボーダレスな思想の対立が起こります。この戦争を終結させるために誕生したのが1648年のウェストファリア条約です。

この条約によって神聖ローマ帝国は崩壊し、君主制からそれぞれの地域が主権を持てるようになりました。

ウェストファリア条約が国際法の基礎と言われる理由は、小さな国々が帝国から主権国家に独立し、領土と国民の境界線や内政不干渉の考え方が条約に反映されたことにあります。

実際にウェストファリア条約では神聖ローマ帝国から独立した国に対して立法権、外交権、課税権が認められました。

国同士の線引きがはっきりすれば宗教戦争のように争いが飛び火して地域全体が戦争状態になることを未然に防ぐこともできますよね。

(2)近代(戦争や冷戦を経て)

近代以前の「国際法」は国と国の線引きの役割を果たし、衝突が起きた場合には当事者同士(二国間)の和解を決めるマニュアルにもなっていました。

しかし、第一次世界大戦、第二次世界大戦の発生により、国際法は当事者同士のルールから世界のルールへと変化します。第一世界大戦中、アメリカ大統領のウッドロウ・ウィルソンは『14カ条の平和原則』を発表。

この原則に基づき、1920年に国際連盟が発足します。国際連盟は歴史上はじめての世界規模の共同体となり、同年には常設国際司法裁判所も設立されました。

しかし、アメリカやロシアなど大国が不参加により国際連盟は失敗。第二次世界大戦が発生します。その国際連盟の反省によって生まれたのが現在の国際連合です。

1945年、終戦とともに国際連合は国際法のひとつである国連憲章を取り決め、同年に国際司法裁判所を設立。第二次世界大戦前には合法だった戦争を違法化し、国連が必要と判断した場合のみ平和的解決の手段として経済制裁や武力行使ができるようになりました。

参考:国連憲章テキスト 国際連合広報センター

その後、1991年までロシアとアメリカによる冷戦が発生。冷戦時にどちらにも属さない第三世界の国々が誕生し、国際社会は新たなグループとの関係を模索しはじめます。

(3)現代

今までの「国際法」といえば戦争防止や国同士の関係構築がメインの役割でしたが、現代になって国際法は人権や環境など世界共通の問題に取り組む役割も持つようになりました。

国連は加盟国によって作られる共同体である一方で、国連が促さなくても世界全体で共通問題への取り組みができるようになってきています。

たとえば、誰かがエコバッグを使っているのは環境に配慮するためですが、国連を気にしているわけではないですよね。

ひとりひとりがこうして世界の共通問題を認識できるようになった理由にはグローバリゼーションの浸透で国境を超えた繋がりが増えたためといえます。

現代の国際法は世界全体の問題を解決するためのツールとなり、ボーダレスに繋がる国際共同体を団結させる法律として進化を続けています。

3、日本における国際法|国際連合について


本項目では日本と国際法の関係を見ていきましょう。また国際連合と国際法の関係性についてもご紹介します。

(1)日本での国際法の位置付け

冒頭で説明した通り、国際法には「国」より立場が上の権力が存在しません。とはいえ、世界のルールである「国際法」と国の最高法規である「憲法」のどちらが上かという議論は続いています。

国際法のはじまりにあったように、国際法はそれぞれの国の主権を守る法律でもあります。

そのため日本では国際法よりも憲法の方が優先されるべきという考えもあります。しかし、国際社会の一員として国際法が優先されるべきという考えもあり、どちらが上かという議論はまとまっていません。

他国はどのように国際法を守っているかというと、イギリスやカナダが実践している国際法を自己流に解釈して国内法に落とし込む「変形方式」と、アメリカ、ドイツ、フランスなどが実践する国際法をそのまま国内法に落とし込む「一般的受容方式」に分かれて遵守しています。

ちなみに日本は後者の「一般的受容方式」の方法で国際法を守っています。

(2)国際連合について

「国際法は国際連合(通称 国連)が決めているもの」と思っている人もいるかもしれませんが、国際法を決めているのは国連ではありません。じゃあ、誰が作っているの?というと、誰でもありません。

国際法は世界で決められた条約や法律の集合体なので、国際法を作っているのは世界のすべての国々の共通認識です。これは国連についても同じことが言えます。

1945年に終結した第二次世界大戦の反省をきっかけに生まれたのが国際連合ですが、特定の国が作ったのではなく戦争参加国のみんなで作った国連であり、国連憲章です。

国連憲章では紛争の平和的解決や平和に対する脅威への対処方法など、国際社会でトラブルがあった時もこうやって平和的に解決してね、という世界共通の判断基準がまとめられています。

4、日本が関わった判例について

「結局、国際法は守る必要がないの?」と感じた人もいるかもしれませんが、過去にはオーストラリアから日本が国際法違反として国際司法裁判所で訴えられたケースがあります。

その事件は2010年に起きた「南極海捕鯨事件」。捕鯨とはクジラを捕獲することを意味します。

各国の捕鯨により鯨の数は減少、1982年に国際捕鯨委員会で商業的な鯨の捕獲が禁止されました。その後、日本は商業ではなく調査目的で鯨の捕獲を続行。2010年にオーストラリアから日本の調査捕鯨は条約に違反するとして訴えられました。

裁判は日本が敗訴し、2019年国際捕鯨委員会から日本は脱退。その後、捕鯨活動を再開しました。

捕鯨を再開していいの?という意見についてはさまざまな議論がなされていますが、委員会から脱退したことで「必ず守らなければいけない」から「努力義務」の立場になったと考えると理解しやすいかもしれません。

まとめ

今回は「国際法」について解説しました。国際法は拘束力がないものの、優先度の高い不思議な法律です。

国際法の歴史を見ればわかるように、それぞれの国の主権を尊重して生まれたものが国際法です。強制力のある法律を作ればすべての国の主権が失われ、世界政府のような大きな権力が生まれてしまう可能性も否めません。

「国際社会の一員として国際法は守るけど、同時に日本の譲れないものも尊重していく」という考え方が国際法の適切な捉え方といるでしょう。

 

 

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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